冬のサイパンは沈船・沈飛行機を狙え! ベストシーズンは11~4月
常夏のサイパン
冬は“光”より“透明度”
「冬のサイパンの楽しみ方を探ってこい」と編集長に言われたものの、常夏のサイパンでそんなにシーズンって関係あるのでしょうか……?
日本の気温が0度前後と聞く中、サイパンはというと、気温30度・水温28度の常夏。
でも、やっぱりそれでも現地の人にとっては、“真冬”なんだとか。
ダイビングガイドの中には、5mmフードベストにとどまらず、ドライで潜っている人もいるらしいのですが、グロットの階段もドライで上り下りしているのだとしたら、ある意味尊敬します。
そうは言っても、私たちにとっては、サイパンは年中気温も水温も高いのですが、夏と違うことと言えば“光”。
有名なグロットや、スポットライト、バンザイクリフなど、地形に差し込む幻想的な光がウリの北側のエリアは、今の時期どうしても光がイマイチです。
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そんな冬のサイパン。
ナビゲートしていただいている、MSCのトシさんこと山口仁さんに、先日の穴場ポイント(エンド・オブ・ラウラウ)に続いて、今度は「冬の今、一番のオススメポイントに連れて行ってください!」とリクエストすると、冬のサイパンなら「沈船・沈飛行機」がオススメという。
冬になるとインリーフの透明度がグンと上がるので、ぼやっとした中に見える夏の沈船とはまったく別物を見ている感じになるとのこと。
確かに、夏に潜った時のことを思い出そうとしても、「サイパンの沈船ってどんなのだっけ?」と記憶もぼんやり――。
水中カメラマン中村卓哉もびっくり
「こんな綺麗な沈船、初めて!」
港からボートで10分、マニャガハ島へ向かう途中に松安丸が沈んでいるポイントがあります。
まず驚いたのは、松安丸の位置。一番浅いところは水深3mです。
そして、見える見える松安丸!
「こんな透明度のいい綺麗なところに沈んでいる沈船は初めて!」と興奮ぎみの中村カメラマンは、なかなか浮上しがたりません。
あっちへこっちへと沈船中を移動し、ストロボがパチパチ光っているのが見えます。
一方、私はというと、撮影の時はモデルとして写ることが多いため、大きな水中用カメラを持ってこないのですが、今回ばかりは持ってこなかったことを悔やんで、「写真撮りたい~~~!」とレギュレーター越しにシャウトしっぱなしでした。
松安丸(しょうあんまる)
1937年に製造された松岡汽船所属の貨物船で、1941年にサイパン東方870kmの沖合で米潜水艦の雷撃を受け、自力航行不能ののち、特設砲艦長運丸に曳航されサイパン港へ入港。
1960年代に、残った船体は爆撃訓練の標的になり爆破され、現在の今の場所へ沈むこととなりました。
沈飛行機ポイント「エミリー(旧名B-29)」を潜る
沈船の次に潜ったのは、太平洋戦争時代に使用されていた、飛行機。
ポイント名は旧名「B-29」の「エミリー」。
現在も全4機のプロペラは残り、また翼、機銃座、ハッチなども確認可能。
海底には、日本語の慰霊碑なども建てられていました。
松安丸の時より透明度は下がってしまったものの、さほど流れもなく、じっくりと見て回ることができました。
戦跡系のダイビングではありますが、日射しが強く明るいこともあり、視界も気持ちもそこまで重苦しくなることもありません。
B-29といえば有名なアメリカの大型爆撃機ですが、このポイントに沈んでいる飛行機がB-29ではないとわかったのはポイント名がすっかり定着してしまった後のことなんだとか……。
現在では、この飛行機は日本の博物館の1機と、サイパンの海底でしかその姿を見ることができないので、そういった意味でもサイパンのこのポイントはとても貴重。
ぜひ透明度の良い冬のサイパンでじっくりと見て欲しいと思います。
これら沈船のポイントは11月~4月頃までがシーズンだとのことです。
エミリー(旧名B-29)
トシさんの話では、B-29というポイントに沈んでいる飛行機は、太平洋戦争時代に旧日本軍が使用していたもので、川西航空機製の二式大艇。当時、日本海軍機にはプロペラの中央部に風の抵抗を無くすための円錐型のカウリングが装備されていたことなどから、B-29ではないことに気づいて調べていると、シリアルナンバーのプレートが発見されたのだろという。当時4つのエンジンを持つものは日本でも最大で、また、航続距離が素晴らしいことから、米軍は喉から手が出るほどこの飛行機の情報は入手したいものだったのだとか。
サイパンから戦後70年に思いを馳せて……
今年は戦後70年という節目の年ということで、今回のサイパンでは、レックダイビングをしたいと思っていました。
戦後60年の時、ちょうど大学入試を迎えた私は、「戦後60年をどう捉えているか」という内容についての小論文のテストがありました。
当時は試験ということもあり、1年を通してよく戦争についての話を調べたり聞いたりしていたなと思い出します。
この10年、私自身、身近な話題でない分考える時間も少なかったですが、考えてみれば、ダイビングの盛んな世界の海は、太平洋戦争の激戦地とも重なります。
この節目の年に戦跡のある海へ潜りに行って、海の中での黙祷。
ダイバーにしかできないことです。
ダイビングサービスMSC
MSCは1972年の設立された、これまで無事故の老舗ダイビングショップ。
トシさんは、NMDOA(北マリアナ諸島ダイビング事業者組合)の代表でもあり、NMDOAを通してサイパンのダイビングの安全や発展に力を注ぐ。
今話題のソフトバンク工藤監督に似ていることは、本人が喜ぶかわからないので言っていない。