リアル・サイドマウント体験ダイビング(第3回)

装備にこだわると、ダイビングは劇的に快適になる!? ~コンフィグレーションとバランス調整~

日本でも注目を浴びつつあるサイドマウント・ダイビング。しかし、「正しく普及されていないのでは?」と危惧する田原浩一さんが言う“本当のサイドマウント・ダイビング”とは? 実際に講習を受けたレポートです。

サイドマウント・ダイビング

自分に最適な装備で潜りやすさは劇的に変わる

いよいよ、実際にプール講習。

さて、まずは、サイドマウント、というより、テクニカルダイビング(以下、テック)とレジャーダイビングで最も異なると感じる部分は、器材のセッティング。

いや、テックではセッティングといは言わず、“コンフィグレーション”(以下、コンフィグ)という考え方で、直訳すれば、“配置、構成、設定”。

つまり、頭を使い、器材を自分に合わせて組み、その機能を徹底的に最適化・最大化するということだ。

どんな遊びでも、つきつめていけば、カスタマイズしたり、オーダーメイドしたりして、道具にこだわるが、同じように、ダイビングでも自分が最も潜りやすい装備に構成しましょう、という考え方。

手取り足取りコンフィグの手助けをしてくれるブチョー。女性だったら……という言葉は飲み込む

手取り足取りコンフィグの手助けをしてくれるオタハラ部長。女性だったら……という言葉は飲み込む

サイドマウントに興味があっても触れる機会の少ないダイバーが多いので、「1日とか半日程度で、体験サイドマウントやったらいいじゃないですか?」と田原さんに言うと、安易に裾野を広げないという哲学もあるが、「講習生が何人かいたら、コンフィグで半日終わってしまうからなぁ」というほど、コンフィグレーションは重要視されている。

ダイビングには競技性がなく、レジャーで潜る分には、そこまで装備の最適化・最大化にこだわる人は少ないかもしれない。
最初にインストラクターにすすめられた器材フルセットをずっと使っているパターンが多いのではないだろうか?

逆に、どんな器材でも対応可能なことがレベルの高い証となっている風潮もあり、かくいう自分も、海外では「荷物重いし、重器材はレンタルでいいや」ってことが多く、多少、BCのサイズが大きくても「まっ、仕方ないか」ってな感じだ。

しかし、きっとスキーやスノボ、サーフィンの上級者、プロスポーツ選手などは、自分にアジャストしたマイギアでないとストレスだろう。

テックの場合は、レック、ケーブ、大深度などなど、究極のダイビングスタイルなので、安全のための“バックアップ”を含めたコンフィグがとても重要となるので、「どんな器材でもいいや」はあり得ない。

レジャーダイビングでも、北の海(相撲取りじゃない)など、より環境が厳しい海で潜るダイバーほど、装備の最適化にはこだっているように感じる。

サイドマウント器材を装着

ということで、まずは、レイザーのバックマウント式のBCを自分の体にフィットさせることに多くの時間を割く……はずが、お借りしたBCが、前回使っていた人と自分のサイズがほとんど同じというミラクルで割とすんなり。

ただ、2つのタンクにそれぞれ装着されているレギュレーターは、片方はホースを首から一周させ、もう片方はネックレスのように首に固定。
長いホースはタンクにゴムで固定し、タンクはすぐに取り外しできるようにフックを使っていて……と、そのひとつひとつの意味は今回説明しませんが、レジャーダイビングとは勝手がかなり違う。

ダイビング歴20年を超える自分でも、「セッティングできな~い」という初心者に逆戻り……。

さらに、水中では水平姿勢が基本なので、バランスを取るための装備が重要。
フィンはある程度浮力のあるもので、BC、タンク、ウエイトの配置を浅瀬で調整する。

最適なバランスになると、水平姿勢でピタッと止まっていられる

最適なバランスになると、水平姿勢でピタッと止まっていられるので、とても楽ちん。

さらに、水平姿勢で中性浮力が取れると、フィンキックをすべて推進力に使えるので、ひとかきで、ツィーーっと滑るよう進む。気持ちいい。

水平姿勢でバランスをとる

ここまでの話は、何もテックだけでなく、レジャーダイビングでも同じ話だろう。

実際、レジャーダイビングのインストラクターやガイドでも、バランスの重要性を説く方も多く、ダイバーからよく「水中であぐらをかいてピタッと止まりたいけど、どうしたらよいですか?」という質問を受けるが、スキルより、まずはあぐらの体勢を保つ装備のバランスが大事だと答えている。

その点を突き詰めて考えると、フィンの浮力やウエイトの配置を少し考えるだけで、本当の意味での正しいバランスが得られ、水中での快適度はかなり変わってくるだろう。

サイドマウントは、さらに、前回説明した抵抗の小ささの効果なのか、フィンキックひとかきで「おお、何これ、何これ~~~」と感動するほど進む感覚。

完璧な水平姿勢でピタッと浮かぶ田原さん。バランスを考えた装備だと、中層でもリラックスモードでいられる

完璧な水平姿勢でピタッと浮かぶ田原さん。バランスを考えた装備だと、中層でもリラックスモードでいられる

自分の場合、水平姿勢に慣れていないので、最初のうちはどうしても足が下がり気味になってしまう。

通常の、シングルタンクを背負ったダイビングでは、やや足が下がり気味なので、癖が出てしまう

通常の、シングルタンクを背負ったダイビングでは、やや足が下がり気味なので、癖が出てしまう

慣れてくると、水平姿勢のまま中層で休憩できるようになってくるが、背中に何もない状態は新鮮で開放感だ。

ただ、水平姿勢がデフォルトのケーブダイビングなどと異なり、360度体勢を変えて動き回って撮影する場合など、水平姿勢を基本としたバランスで意図的な姿勢変化を行うには、それ相応のトレーニングが必要ということだった。

実際、そうしたトレーニングを行っていない段階では水面での立位の維持はむしろ大変なのだ。

ダイビングでは、コンフィグとバランス調整をすればダイビングが楽になる

テックダイビングに限らず、ダイビングでは、コンフィグとバランス調整をすればダイビングが楽になるので、ダイバーの皆さんもぜひ意識してください。

コンフィグとバランス調整が終わったら、いよいよスキル講習。
次回は、テックの世界をのぞき見してみたいと思います。

どうでもいいが、名古屋のダイブプロショップ evisのプール設備はすごい。プールでの練習ってダイビングのスキルを磨くのに最も重要なのに、意外とダイバーが気軽に練習できる環境ってない。
都市型ショップの存在意義はこの辺にありそうだが、東京にももっとあればなぁ……(お前、維持費知っとんのか! というツッコミはなしの方向で)。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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