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リアル・サイドマウント体験ダイビング(第4回)

「水平姿勢が楽、泳ぐ抵抗が少ない」は本当か? ~巷で言われているメリットの真実~閲覧無制限

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現地からレポート

日本でも注目を浴びつつあるサイドマウント・ダイビング。
しかし、「正しく普及されていないのでは?」と危惧する田原浩一さんが言う“本当のサイドマウント・ダイビング”とは?
実際に体験してみたレポートです。

今回は、「巷で言われているメリットの真実」の続きです。

サイドマウントでの潜降

よく言われるメリット
水平姿勢が楽、泳ぐ際の抵抗が少ない、ガスの供給量が増える

寺山

必要性といえば、サイドマウントは水平姿勢が取りやすく、抵抗が少ないので進みやすい、と言いますよね。それだけのメリットがあるなら、運搬の大変さやエントリーエグジットのリスクがあっても、サイドマウントで潜るのはメリットあると思いますがどうでしょうか?

田原

姿勢に関していえば、確かに水平姿勢は取りやすいけど、逆にいえば、正しい器材選択と正しいトレーニングを受けていないと、他の姿勢の維持は大変。むしろ自由度は減る。特に撮影なんかでは、いろいろな態勢を取るよね? 腕の動きの自由度や、いくつかの姿勢に対しては、タンクが邪魔になる可能性があるサイドマウントより、バックマウントの通常のシングルの方がほとんどの場合で快適だと思うよ。

水面でボートを待つのもシングルの方が絶対に楽。頭を水面に出して立ち姿勢で浮いている時のバランスは取りやすくないし、特に浮力が十分でない小ぶりのサイドマウントBCは、頭を完全に水面上に出して浮き続けることが難しい場合が多い。長時間の水面待機や流された時は、相応の付加装備を備えていないと、危険でもある。

何とか反論を考える僕に、鋭い眼光で圧迫をかけるおタハラ部長

何とか反論を考える僕に、鋭い眼光で圧迫をかけるおタハラ部長

田原

それに、水平姿勢が取れるから環境によい、なんていうけど、シングルだってバランスの調整と気遣いだけの話。サイドマウントがどうとか関係ない。

ただ、抵抗が少ないのは本当。ちゃんとしたコンフィグレーション(装備設定)なら抵抗を小さくできるから、水中スクーターを使ってWタンクのダイバーと同じスピードで進む際、スクーターのスクリューの角度を2ノッチ浅くできた経験もある。

寺山

抵抗に関してですが、単純にタンク1本より、2本のほうが、泳ぐ方向に対して表面積が増えて抵抗が増す気がするんですが、物理が苦手な僕にもうちょっと教えてください。

田原

抵抗が増えてしまうのは間違ったコンフィグで、タンクの位置や姿勢がおかしいんだよ。そういうサイドマウンントダイバーも良く見かけるけどね。モータースポーツで言われるスリップストリームみたいに、(注:田原さんは元F3レーサー)、脇の下にバルブがくるようにきちんとタンクを装着すれば、タンクが体の陰に隠れて直接的な抵抗を受けにくくなるから、抵抗はむしろ減る。図で説明するね。

水の抵抗を直接受ける部分と受けにくい部分

脇の下にタンクのヘッドがくれば抵抗が減る

脇の下にタンクのヘッドがくれば抵抗が減る

寺山

すごい! あ、なるほど。それでテックダイバーたちは、脇の下にタンクがこないでぶらぶらしているサイドマントのダイバーのことを指摘していたんですね。腑に落ちました。でも、聞かないとわからないですよ……。まあ、「聞かずにまずは考える」がテックの基本ですもんね……。

ところで、正しいコンフィグであれば、水平姿勢でバランスよく潜れるわけですから、それだけでメリットありますし、抵抗の大きいドリフトダイビングなんかだと、サイドマウントのメリット、必要性があるじゃないですか!

田原

そう? 抵抗一点に注目すれば一利ありだけど、やはり1本が2本になればガスを均等に使うために、強い流れの中でセカンドステージの交換を適切に行わないといけないし、流れの中での船へのエントリー/エグジットはリスク要因の増加。湾内のような穏やかな海況ならいいけど、ドリフトのような海ではボートスタッフやチームメンバーのレベル等、諸々の条件がそろわなければ、自分ならやりたくはないね。

サイドマウントを装着

田原

ガス量に関しても、レジャーダイビングでタンク2本分もいるのかって疑問もある。一般的な日本のレクリエーショナルダイビングに関しては、どう考えても2本より1本で潜った方が楽だし、サイドマウントで潜る絶対的な必要性は感じられない。それに、間違ったコンフィグや正しいとは言えない水中姿勢のせいで、抵抗が少ないというメリットを活かせていないダイバーも多い。中には、ウエイトが分散するから腰への負担が減るなんて珍説も出てきたりしている。

寺山

まあ、ウエイトは通常のバックマウントでも、サイドマウントでも配置の問題なのでおっしゃる通りですが、呼吸の速い自分なんかだと、2本ある安心感は大きいですけどね~。それに、もし、はぐれてしまったらバックアップの呼吸源にもなるのは安心。

田原

通常のダイビングで、1本でそのダイビングをまかなえるだけのボリュームのタンクを2本持っていく必要性は感じないけど、後者のバックアップというのは良い着目点。
独立した呼吸源が2つあるってことは、ソロダイビングなら活かせるね。

「バディがそばにいなかった場合でも2本あれば安心」という人もいて、それはある意味で正解だが、そのために同じ大きさのタンクを2本持っていくことによる弊害とのバランスは考える必要がある。そういう意味では、サイドマウントより、より合理的なポニーボトル(容量の小さいバックアップのタンク)の普及が先決だと思うのだが、なぜそれがフォーカスされないのでしょう? 

いずれにしろ、ポニーボトルが普及していない日本のレジャーダイビングの世界では、サイドマウントの活かし方としてはソロダイビングがひとつのキーワードになるかもね。

寺山

ソロダイビングは僕も注目していて、今年から日本に入って来たSDIでは、エントリーレベルからソロダイビングを教えていますものね。日本では「ソロ(単独)=危ない」という認識が固定化していますが、SDIのプログラムを導入した、代表の加藤大典さんの「もっと安全に潜ってほしいから、ソロを広めたい。ソロを理解する事で、バディダイビングの本当の良さや注意点がよく理解できるようになります」という言葉は印象的でおもしろかったですね(註:詳しくは、後日アップのインタビュー記事を)。

サイドマウントで水中姿勢の練習

田原

いずれせよ、通常のダイビングでサイドマウントじゃなくちゃ、ということってほとんどないのに、いろいろな条件やデメリットを隠して、マーケットを増やすための聞こえのよいセールストークがメインになっちゃうのは危ないよ。

寺山

う~ん、確かに陸と海の接点、つまりエントリー/エグジットが最もリスクが高いと僕も思いますが、水中ではサイドマウントの方が快適そう。デメリットよりメリットが上回る場面がありそうな気もしますけどね~。違う次元の話ですが、マーケットを生みだし、拡大するのは大事ですし。

澤(※)

僕も昔、ダイビングショップのインストラクターをしていましたけど、話を聞いていて、「器材、2回売れる!」って思っちゃいました(笑)。
(※横で聞いていたオーシャナ営業マン)

田原

お金を稼ぐのは大事なことだけど、本質が隠されて、お金儲け優先でマニュアル化していくのはよくないよね。デメリットを知りながら「それでも楽しいからやる」、「やりたいからやる」「いずれサイドマウントが必要なダイビングにトライしたいからそのトレーニングの一環としてやる」ならいいんだけど「マーケット拡大のためにやる、やらせる、やらされる」だと、間違ったメリットを伝えるセールストークがまかり通ってしまう。正しいマーケットの拡大をしないと、ぐちゃぐちゃになってしまったエントリーレベルのCカード講習の二の舞になっちゃうよ。

寺山

う~ん、「器材、2回売れる」という発想はありな気がする僕ですが(笑)、それが目的になっちゃうと、確かにおかしくなりますね。

【まとめ】水平姿勢が楽、泳ぐ際の抵抗が少ない、ガスの供給量が増える

・水平姿勢が取りやすい、抵抗が少ない、ガスが増える、独立した呼吸源が増えるは正しい
・しかし、リスクを超えてまでの絶対的なメリットや必要性は一般的なレジャーダイビングでは感じにくい、シングルでよい。ただし、テクニカルダイビングでの使用や、バックマントのW タンクとの比較になると話は変わる
・ソロダイビングでは有効
・サイドマウントのリスクや負荷を体験していない寺山は、サイドマウントで潜った方がよいケースもあるような気がしなくもない。

よく言われるメリット
器材の扱いやすさ、調整のしやすさ、フィット感

田原

これは、実際にじっくりやってみよう。ちなみに、前回はどう感じたの?

寺山

いつもと違うダイビングスタイルなので、「たったの1日ではメリットがデメリット」って書いていました。ちなみに、前回の体験はきれいさっぱり忘れています! 新しいことをやるのであれば練習が必要で、メリットを感じるまでは時間が必要かと。

田原

それは真実をついているよ。よし、プール行こう。

次回、実際のプール講習のレポートに続きます。

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