パラオにいるダイビングガイド存続の危機?

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膨大な量のテキストブックのコピーを見ながら、少し途方に暮れているガイドたち

膨大な量のテキストブックのコピーを見ながら、少し途方に暮れているガイドたち

ジェリーフィッシュレイクからクラゲが消えたことよりも、いま、パラオのガイドたちの間で、大きな話題となっていることがある。

昨年からパラオの全てのガイド(ネイチャーガイド、ダイビングガイドなど)に課さられることになった、コロール州のガイドサーティフィケーション。何を目的にしているかというと、ガイドたちへのパラオの自然環境保護に対する意識向上を名目としている。

このサーティフィケーションの有効期限は1年。これを取得するためには、200ドル支払って講習を受けて、毎年試験に合格しなければならない。そのための英語のテキストブック「KOROR STATE GOVERNMENT TOUR GUIDETRAINING AND CERTIFICATION PROGRAM」は、総ページ数223ページに及ぶ。「初年度のテキストは、15ページしかなくて、英語が得意じゃないガイドでも、簡単に試験に合格できたんですよ」とガイドたちは話す。

KOROR STATE GOVERNMENT TOUR GUIDETRAINING AND CERTIFICATOIN PROGRAM パラオのガイド

それが2年目の今年から、格段に試験が難しくなった。しかもテストの内容が、ジェリーフィッシュレイクをパラオ語で何と言うか?とか、パラオ語で書かれた16の地名のうち、アクティビティ可能なビーチを10個選べとか、パラオで見られるマンタはナンヨウマンタと何マンタか、とか、パラオで見られる鳥は何種類?などなど。そもそもパラオ語の地名を覚えている外国人ガイドは極端に少ないし、ダイビングガイドにとっては、あまり必要の無い知識も必要になる。

特に問題なのは、「去年の設問は、約30問だったのに対して、今回からは、150問と5倍にも増えているんですよ」とは、昨日試験を受けたばかりのデイドリームガイドの加藤栄一さん。もしこの試験に合格しない場合、ブルーコーナーやジャーマンチャネルなど、人気のポイントでガイドをすることができなくなるのだ。

「合格さえすれば、一人のガイドが8人まで添乗できることになるので、合格したガイド1名と、してないガイド1名で8名をケアするのは、かろうじて可能なんですけどね・・・・」と加藤さん。

そんなことよりも、とにかくしっかり勉強して合格すればいいことなのだけど、もし万が一、落ちてしまった場合、さらに200ドルを州に支払って、講習を受けて、再受験しなければならないのだ。つまり、落ちて再試験するたびに200ドルが必要となる。簡単な試験ならともかく、中には、800ドルくらい支払って合格できず、ガイドを諦めた人もいるのだとか。それだけの難問、もしダイビングサービスの誰一人受からなかったら・・・、そう考えると洒落にならない。もし、サーティフィケーションを取得せずにガイドしていることが発覚した場合には、250ドルからの罰金が課せられるのだそうだ。

2012年には、コロール州のサウスロックアイランドラグーンが世界遺産に指定されたこともあり、自然環境保全に力を入れていきたいというのもあるだろう。しかし、本音を言えば、最近増えてきた、新たなダイビングサービスのマナーの悪さが指摘される。餌付け禁止のパラオで、平気で餌付けしたり、綺麗なサンゴ礁の上を平気で歩き回ったり、中には、コロール州が発行する、有料のダイビングパーミッションを、複数人数で利用するという犯罪まがいの行いを平気でするガイドが増えてきてるのだそうだ。

そういうガイドを一掃することも目的の一つとしているとも噂されている。

そんな輩が増えたことで、今までパラオに根付いていた日本人ダイビングサービスまで危機?に陥ってしまっていることが、今、パラオにいるダイビングガイドたちにっとっての大きな話題になっている。

彼らにとっては、ジェリーフィッシュレイクがいなくなったどころではなく、日本人ガイドがいなくなっちゃう危機かもしれないのだ。

まあ、そうは言っても、しっかり勉強して、頑張って試験に合格してくださいね。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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