台風だって楽しめる!? はじめての八丈島は黒潮ぶちあたり ~人気の「ナズマド」で“マンタアーチ”に感動~
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Oh・・・・NO!!!!!!
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2016年8月14日現在
2016年8月14日から、初めての八丈島に行こうと計画し、うきうきしていた矢先のこの台風の進路。
出鼻をくじかれたというか、まだこの時は家すら出ていませんでしたが、この台風情報を目にした途端、今回お世話になる、ダイビングショップアラベスクの荻野さんに速攻で電話。
こ・・・・これ、大丈夫ですか?
そもそも八丈島にも行ったことなくイメージが湧かなかったし、先日、御蔵島に着岸できずに、通称24時間東海汽船の旅をしてしまった私にとっては、台風はトラウマ状態。
「これだと厳しいですよね。リスケ(延期)だと、10月になるんですけど、それでもいいですか・・・?」
すっかり意気消沈した私でしたが、電話越しの荻野さんは、「え、まあリスケでもいいけど・・・じゃあそうしましょうか~」とちょっと拍子抜けというか、なぜリスケなのかと不思議そうな声。
その場は一度電話を切って、10月のスケジュールを確認したのですが、なんだか荻野さんの拍子抜けな声が気になって再度電話。
「行っても大丈夫なんですか? 海、潜れますか?」
「とりあえず、明日は全然潜れるよ!」と元気いっぱいに返答いただいたので、現地の方がそう言うならと、向かってみることにしました。
台風とは思えない透明度と、台風とは思えないゲストの数
台風も来ていることだし、きっと私と荻野さんのマンツーマンだろうなと思ってショップに入ると・・・、そこにはすでにウエットスーツに着替え、カメラをセッティングし終わった常連のお客さんの姿が。
しかも、5人も。
台風とかいってひよっていたのは、私だけ?(笑)
八丈島は、ひょっこりひょうたん島のモデルにもなった島のひとつと言われていて、上空から見るとひょうたんのような形になっており、台風など風の強い時でも、どこかしらのポイントが島陰になって潜ることができるのだとか。
しかもこの時期、特に取材を行った8月頃は黒潮が当たっていて、透明度も良く、水温も高い。
まさに、ベストシーズン、真っ只中なのだ。
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右側のスロープ状のところがエントリー口。台風が来ているとは思えない天気だった
とはいえ、寒がりの私は、「きっと水は冷たいだろう」となんの疑問もなく5mmのウエットスーツにフードベストを取り出すと、
「なにしてんの? 水温30度だよ?」
さ、30度!?
今年は沖縄のほうでも、サンゴの白化現象が問題視されるほど海水温が高い。
荻野さんによれば、八丈島で水温が30度以上になることは珍しく、ここ5年間で水温が30度を越えたことは1度、約3年前のこと。
その時も今年のように台風が少ない時期だったらしい。
サンゴとか生物には悪いけど、水温が高いとストレスがなくてちょっとほっとするのも事実。
さて、今回楽しむのはビーチポイントの一番人気で、“スーパービーチ”ともいわれる「ナズマド」。
エントリー口は火山の島らしく、玄武岩と固まったマグマで趣きたっぷりです。
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ごつごつとした岩に囲まれている
台風が来ているということで、やはり少しうねりが入っており、時折、東映の三角マークを彷彿させる高波が。
これではきっと中の水はかき回されて、にごにごになっているのだろうな・・・と思い、エントリーすると。
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3mmのウエット持ってないから、ちょっとやってみるー!と海パンにフードベストで潜るガイドの荻野さん。さすがに寒いと思いますよー(笑)
ひょー、あっおー!!!
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台風来ていてこの青さ。
八丈ブルーおそるべし。
さらに、一緒に潜る方たちはマクロが好きな方が多かったので、八丈島はマクロ生物を楽しむ島なのかなと思っていたら、いきなりこの壁!
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伊豆大島の観光大使をしていた時、大島の取材を担当し、その時に、「火山が噴火してマグマが出て、そのマグマが海水に流れ込んで冷やされる時、アコーディオン状に固まり壁になるのだけど、この壁のことを柱状節理の壁というのだよ」と教えてもらったのですが、この八丈島の壁もその時と全く同じ光景。
八丈島も活火山の島、これもきっとマグマが固まってできた柱状節理の壁なのでしょう。
しかも透明度の良い八丈ブルーのおかげで、大迫力!
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柱状節理の壁と思われる、アコーディオン状にそそり立つ壁
柱状節理の壁を通りすぎ、ふと下をのぞくと、ガイドの荻野さんが手招きをしています。
すーっと水深を落として近づくと、八丈島名物のユウゼンがお食事中。
ユウゼンは、八丈島と小笠原諸島近海に生息する日本の固有種。
環境省によると、現在日本の固有種は1,900種といわれています。
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ユウゼン
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オヤビッチャの卵を食べていた
なんとも写真の撮りづらい角度に入り込んでいたユウゼンを撮影し、少し浮上すると、またもや壮大な馬の背のような地形。
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この地形の上では、大きいものから小さいものまで、数匹のアオウミガメに遭遇。
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ウミガメには1ダイブで6匹会うことができました!
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子供のアオウミガメ
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アオウミガメとゲスト
カメのエリアを抜け、根の先端に差し掛かると、潮のかかったコーナーではキンギョハナダイが乱舞。
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続けてツバメウオのお散歩に、
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V字のクレバス!
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モデルを入れたい衝動にかられていました
超ワイドな海じゃん!!
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私がワイドな世界をひとり満喫している中、みなさんは、お目当てのマクロの世界に没頭。
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透明度が良いので、根にへばりついているダイバーも見えて、はぐれる心配なし♪
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少しはマクロ撮影、ヘビギンポの仲間。撮影地:八重根
潜水時間が45分経過。
そろそろエキジットの時間かなと思っていると、オーバーハングに入って行ったみんなが出てこない。
さすがに台風の海に取り残されるのは嫌だったので(笑)、後を追ってみると、オーバーハングではなくアーチになっていて、しかもそこを潜り抜けるとEN/EXポイントへ!
(なんと上手く計算されたコースどり!)
それにしても、このアーチ、なんかの生物に似ていません?
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そう、マンターー!!
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このアーチの名前は特にないと荻野さんが言っていたので、勝手に「マンタアーチ」と命名しました!
これからナズマドを潜られる方、ぜひ“マンタアーチ”も写真スポットとしてお楽しみくださいねー♪
台風の海だって、らくらくエキジット
エントリーとエキジットはエントリーポイントから伸ばしたロープにつかまって一列に並び、荻野さんが一人ずつサポートしてくれます。
波の穏やかな日なら良いのかもしれませんが、この時のように大きな波が時折くるときは、足が波にすくわれて負けてしまいます。
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波が一番強いところで、荻野さんが待機し、手を貸してくれるので安心です
約1時間に及ぶ台風の合間をぬったダイビングでしたが、八丈島は大型客船の着岸率も良く、しかも飛行機なら55分でアクセス可能な島。
かつ多少時化ていても島のどこかしらのポイントで潜れるので、「台風だからってひよることない島」だということがわかりました。
お店に戻ってから、ワイドの画角で撮影した写真を、この度はじめて八丈島を潜ったという女性に見せたら、「えーーこんな海だったんですか!!」と感嘆の声。
こんな海だったんですよ~(笑)
マクロ目当ての人が多いと聞きましたが、ぜひ少し目線をあげて、ワイドの景観も楽しんでほしいです。
おまけ
八丈島の海って、他の海となにが違うの?
オーナーの荻野さんと、スタッフのマユミさんに八丈島の海について聞いてみました。
ーー
ざっくりとした質問なのですが、八丈島の海って、ほかの伊豆七島の海となにが違うのですか?
荻野
八丈島は海洋性気候に属しているので、極端に気温が海水温より高くなることってあまりないんですよね。
なので、このショップもクーラーいらないかなと思ってつけませんでしたが、それでも快適なんです。風が通るし。
ーー
私も普段、家でクーラーつけない人なので問題はありませんけど、クーラー欲しいという意見ありませんでしたか?
荻野
設置するか迷いましたけど、基本的にはあまり言われないですね。
たま~にクーラーないんですね~とは言われますけど(笑)、それも非日常でいいんんじゃないかなと。
それより、暑くなったら一緒にかき氷を食べましょう!(笑)
ーー
八丈島のベストシーズンっていつなのですか?
荻野
ベストシーズンとひとくくりで言うのは難しいですけど、夏は7月末~10月末がベストですね、ナマズドに安定して入れるようになります。
逆に、冬の期間は、時化てしまって、ほとんど入ることはできなくなります。
それでも、八丈と小笠原諸島でしか見られないウミウシやマクロ生物はたくさんいますよ。
冬はウミウシダイビングのリクエストは多くなります。
今年の春先はウミウシリクエストで、4日間で149種類のウミウシを見つけました!
ーー
今流行りのポケモンみたいですね(笑)
マユミ
あと、八丈の魚は色が濃いと思います。
ーー
なにか理由があるのですか?
マユミ
八丈の海の壁は、溶岩の影響で色が濃いので、魚の色も濃くて鮮やかなんですねよね、自分の安全を守るために。淡い色だと目立ってしまうからだと思います。
ーー
色が濃いのはなんとなくわかりますが、色が鮮やかというのは?
マユミ
透明度が良くて青が鮮明なので、その色にカモフラージュするためかなと思っています。
濁った環境だと魚の色は少し混ざったような色になったり、沖縄のような白くて明るい海だと淡い色になったり、同じ魚でも地域差がありますね。
八丈ならではの濃くて鮮やかな色をした魚が多いので、そういうことも一緒に紹介していきたいと思っています!
ーー
ありがとうございました!
また来ますね~~!
2015年に伊豆諸島の八丈島に店舗を構えた、新しくて、白を基調としたオシャレなダイビングショップ。
器材洗い場、干場、シャワーにトイレもきれいに整備され、快適にダイビングを楽しむことができる。
オーナーの荻野さんは、お昼ご飯がかき氷やアイスクリームなどでもイケる!というほどの甘党だが、お気に入りのランチは、「一休庵」のカツカレーうどん。
しかし、このカツカレーうどん、ランチで荻野さんに食べさせると、その量と旨さゆえに集中力が落ちて、次のダイビングでは生物が海から消えて見えなくなるという技を持つ。
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