“死ぬかと思った”アザハタ。ミーバイのみーちゃん、脅威の再生能力

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現在、石垣島ダイビングショップ15選の取材をしている。
6日間で、毎日違うショップにお世話になり(予定)、撮影を行う予定だ。

初日はダイビングショップ・クローバーのオーナーガイド・板橋雅樹さんと、スタッフ・松本梨沙さんのガイドで、黒島方面へ取材に向かった。

船上で、「なんか面白い海ネタないですかね〜」と何気なくたずねたところ、「こんなのあるんですけど」と写真を見せられたのが、左側頭部をざっくりとえぐられてしまった無残なアザハタの写真。
「わ! どうしたんですか? この子……」とたずねると、竹富南の「トンガリ」というポイントのサンゴに住み着いているアザハタとのこと。
取材ではよく行くポイントで、1日前にも潜ったのだけど、まさかこんなになっているとは思っていなかった。

他の大型の魚にやられてしまったと思っているガイドも多いようだけど、板橋さんの話ではどうやら他のダイビング業者が水中銃で突いたらしい。
証拠もないし、ここではその件の追求はしないでおくけど、漁業権のある漁業関係者がやったことならいざ知らず、こんな人気ダイビングポイントが点在するエリアのど真ん中で、しかも、ダイバーの誰もが目にする人気者でもあるアザハタに……。
もしダイビング業者がやったのだとすると、どういう感覚してるのかなと思ってしまう。

その話はともかく、板橋さんが最初にこのアザハタに気がついたのは、今年の8月13日。
「「トンガリ」に潜りに行ったら、砂地に横たわっていてほとんど動かない状態でした。こんな酷い傷があるのでは、もうすぐに死んでしまうだろうな」と思ったのが、最初の写真。
ダイビングが終わってから、他のダイビング仲間との飲み会で「そういえばあのアザハタ見た?」と話を持ちかけると、その中の1人が、上記のような話を教えてくれたのだそう。

アザハタ殺魚未遂? 事件は、最初に撮影した写真の1週間程前に起きたのだという。
つまり、最初の写真は、傷を負ってから約1週間後の写真ということになる。

人間がここまで、皮膚をえぐられてしまったら、生命は取り止めたとしても、どこかから皮膚など移植しないと傷は治らなさそう

人間がここまで、皮膚をえぐられてしまったら、生命は取り止めたとしても、どこかから皮膚など移植しないと傷は治らなさそう

ブログでこの写真をアップしたところ、海洋調査会社の関係者の方からのこんな書き込みが。
「板ちゃん、自然界の傷の治癒状況は学術的にメッチャ貴重やで(^^)v」。

その投稿を見てから、板橋さんと梨沙さんは、このポイントに潜りに行く度に傷を観察し続けた。
特に、以前はクローバーのゲストで、1年前からガイドとして働きだした梨沙さんは、「ミーバイのみーちゃん」と名付けて写真を撮り続けた。
今回使用させてもらっているアザハタの写真は梨沙さん撮影のもの。
では、その後のアザハタはどうなったかを見て行こう。

力なく砂地に横たわっていた、みーちゃん。8月13日撮影。

力なく砂地に横たわっていた、みーちゃん。8月13日撮影。

そこから5日後の8月18日撮影のみーちゃん。思いのほか傷が小さくなり、驚いたことに外皮も復活し始めている。

そこから5日後の8月18日撮影のみーちゃん。思いのほか傷が小さくなり、驚いたことに外皮も復活し始めている。

9月4日に撮影したみーちゃん。最初に「死んでしまうかもしれない」と思っていたあの大きな傷の面影はもうほとんどなくなってきた。

9月4日に撮影したみーちゃん。最初に「死んでしまうかもしれない」と思っていたあの大きな傷の面影はもうほとんどなくなってきた。

9月9日撮影。外皮が完全に復活。えぐれて見えていた傷は完全に塞がれた。

9月9日撮影。外皮が完全に復活。えぐれて見えていた傷は完全に塞がれた。

9月17日撮影

9月17日撮影

なんという再生能力! 魚ってこんなに治癒するものなんですね〜!
その後、しばらくみーちゃんのいるポイントには行っていないのだとか。

それを聞いて、この日、本当は黒島撮影の予定だったのだけど、それなりに水中写真は撮影できたし、個人的にも、今のみーちゃんを見てみたかったこともあり、竹富南に移動してもらい、「トンガリ」の根に潜らせてもらった。

みーちゃんが棲むトンガリサンゴ

みーちゃんが棲むトンガリサンゴ

これが10月25日撮影のみーちゃん。もう黒い影のような窪みしか残っていない。鱗も再生しているようだし、完治と言っていいのではないだろうか。

これが10月25日撮影のみーちゃん。もう黒い影のような窪みしか残っていない。鱗も再生しているようだし、完治と言っていいのではないだろうか。

事件から約2ヶ月半。
魚ってここまで復活する能力があるんですね〜。
初めて知りました。

ちなみに、同じく竹富南の「ビタローの根」に棲むハナヒゲウツボ。
片方のハナヒゲが千切れてしまっているのだけど、それも徐々に復活してきているとのこと。

わかりづらいけど、左のハナヒゲが右のハナヒゲより小さい

わかりづらいけど、左のハナヒゲが右のハナヒゲより小さい

ハナヒゲの棲む、“ビタローの根”は、スカシテンジクダイに覆われている

ハナヒゲの棲む、“ビタローの根”は、スカシテンジクダイに覆われている

また、甲殻類は、ハサミなどを失っても脱皮すると完全復活してるそうです。

ちなみにこんな記事を見つけました。

うーむ、漫画「テラフォーマー」でよく出てくる生物の復活能力って、実際にこんなにすごいんだと実感させられた日でした。

Supported by ダイビングハウス・クローバー

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Just Style , Just Size, Just Advice, Just clover、4つのクローバーのちょうどいい!! をモットーに、完全少人数制、石垣島でのガイド歴21年の板橋さんの的確なガイディング&アドヴァイスと、新人スタッフ梨沙さんの明るさで、アットホームなショップを心がけている。

ボートは18名乗り、トイレ、ホットシャワー完備。
ショップは市街地から少し離れた高台にあり、南国らしいハイビズカス、バナナの木などに囲まれていて、海も一望できる。

マクロや生態に強く、この日も砂地で、めちゃくちゃレアなウミテングの幼魚やカラッパを見つけてくれた。

黄色? 金色? のウミテングの幼魚なんて初めて見ました

黄色? 金色? のウミテングの幼魚なんて初めて見ました

Address:〒907-0024 沖縄県石垣市新川2136-12
TEL:0980-82-8204
FAX:0980-82-8215
E-mail:clover@sweet.ocn.ne.jp
URL:http://www.ishigaki-clover.com

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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