耳抜き不良は治ります!耳抜きに関する都市伝説

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私の専門はケーブダイビングです。
お話をする前に、ケーブのご紹介を少しずつしていくことにします!

今回は、バハマのアバコ島のクリスタルケーブ。

バハマのアバコ島のクリスタルケーブ

鍾乳石が全部クリスタルでできているエリアがたくさんあるのです。
透明感が強く、光を当てると美しく輝き、細長く垂れ落ちる鍾乳石は「フローズンレイン」と呼ばれています。
世界中でも、クリスタルケーブはバハマ以外にはありません。

バハマのアバコ島のクリスタルケーブ バハマのアバコ島のクリスタルケーブ

さて、耳抜き不良についてのお話です。
今回から数回の連載に分けて、耳抜き不良の診断と治療についてお話をしていきましょう。

耳抜き不良の都市伝説

耳抜き不良について、色々な都市伝説があります。
よく聞くものを並べてみましょう。

  • 生まれつき耳管の細い人が、耳抜き不良を起こす。
  • 耳抜きが悪い人はそういう体質なので、ダイビングに向いていない。
  • 耳鼻科へ「耳管通気治療」に通えば、耳抜きが良くなる。
  • 耳抜きが悪くても潜っているうちに慣れるので、慣れるまで多少の我慢は仕方ない。
  • まったく抜けないわけではなく、時間をかければ抜けるので、それで問題ない。
  • 水中で耳が痛い時には、じっと止まっていればだんだん楽になる。
  • 鼻をつまむ耳抜きは耳に負担がかかるので、唾を飲む方が安全な耳抜きだ。
  • ダイビングをするといつも中耳炎になるが、中耳炎が治ればすぐ潜ってよい。

これらはぜ〜んぶ都市伝説です!

私の連載を読み進んで行くうちに、これらの伝説の何が間違っているかが分かるようになります。

まったく抜けない人より危険な、“抜けづらい人”

よく、まったく抜けないのが耳抜き不良であって、まったく抜けていないわけではなく、時間をかければ抜けるので、「自分は耳抜き不良ではない」と思っている方がほとんどです。

耳抜きはスムーズによく抜けるのが当たり前で、実はそれ以外の全部が耳抜き不良なのです。

耳抜き不良によって、「外リンパ瘻」という内耳を壊して一生潜れなくなる病気がありますが、外リンパ瘻になってしまった人たちの共通点は、「耳抜きがしづらくて時間がかかるけれど、まったく抜けないわけではないので何とか潜り続けていた」人たちだけが起きます。

まったく抜けない人は水深2mも潜れないのでダイビングにならず、潜水を中止しますから壊さないのです。
もちろん、よーく抜ける人も壊しません。

その中間の人たちが最も危険なのです。

よって、耳抜き不良の定義は、私の持論ですが「よく抜けている以外の人」というべきなのです。

でも、これまで同じ耳抜きで何百本潜って耳が壊れなかったのに、どうして今回になって壊れたんですか? というダイバーがいます。

飲酒運転でも、毎回必ず交通事故を起こすわけではありませんよね?
ちょっと一杯飲んだだけならば、ほとんどの人は家に運転して帰れますよね?

でも、そんなことをしていたら、いつ事故を起こすか分かりません。
何回目の飲酒運転で事故を起こすかなんて、人によって違うので分かりませんよね。

だから、講習中に耳を壊す人もいれば、100本目、1000本目に壊す人もいるわけです。
今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫は通用しないのです。

飲酒しなければリスクはゼロ、耳抜き不良が起きなければリスクはゼロなのです。
つまり、耳抜きは治せばいいのです!

耳抜き不良は治ります!

耳抜き不良で当院を受診される方は、年間500名程度にのぼります。
これまでに6000人以上の耳抜き不良を治療し、治らなかった方はほんの数名程度です。

現在、鼓膜に異常がなく、耳の病気がない方は、耳抜きは治るものです。

耳抜き不良は耳管が細い人だと思っているダイバー、そしてほとんどの耳鼻科医もそう思っていて、耳管狭窄症と診断されます。

しかしこれはウソで、耳管が太くても細くても関係ないのです。

耳管がそれほど詰まっているのであれば、大人になるまでの間に慢性中耳炎などの耳の病気に陥っています。
現在鼓膜が正常で耳に病気がない人は、それなりの耳管の通りを持っている人であり、耳抜きは治るというのが私の持論です。

次回は、どういう原因で耳抜き不良が起きるのかを解説していきます。

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PROFILE
医大生時代にダイビングと出会いのめり込み、ダイビングのために時間とお金を捻出するために、他の趣味をどんどんやめてしまう。
クリニック開業後、好きが高じてダイビングインストラクターになり、現在は、テクニカルダイバーとして、ケーブダイビング、リブリーザーダイビング(rEvo)、大深度ダイビング(-100m越え)などの潜水を行なっている。
また、全国から潜水医学の講演依頼があり、ダイバーおよび耳鼻咽喉科医へ正しい潜水医学の普及をすべく活動。
その後、58才で耳鼻科開業医を引退し、第2の人生でメキシコ移住。メキシコセノーテを潜り三昧の日々を送る。
 
潜水歴30年、潜水本数約3000本。
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