96%の耳抜き不良は治る ~オトヴェントの正しい使い方~

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耳抜き練習のためのオトヴェント

以前にも、耳抜きの訓練にオトヴェントが良いと言う記事を、ここでもお書きしました。

輸入販売代理店の(株)名優さんと連携して、医療機器であるにもかかわらず、医療関係者ではなくてもオトヴェントが手に入るように、ネット通販の道を開拓しました。

その結果、ダイバー向けの取説を入れて頂いたにもかかわらず、「オトヴェントは購入して持っているけれど、いくら使っても耳抜きが治らない」というダイバーが、当院を受診することがとっても増えてきてしまいました。
そこで、改めてオトヴェントの効果的な使用方法を解説したいと思います。

耳抜き練習のためのオトヴェント

オトヴェントは、滲出性中耳炎の治療を目的として考案された、スウェーデン製の自己通気用の医療器具です。
オトヴェントの圧力は内耳を痛めて外リンパ瘻を起こす危険性がなく、自己通気が可能という理想的な強さです。

バルサルバ法を行う際に、このオトヴェントの強さと同じ圧力で息めるように、強さを憶えることが訓練の主目的であり、「耳抜き不良を治す治療器具ではない」事に注意して下さい。

耳抜き不良の治療器具と誤解し、ただ単にオトヴェントを膨らませているから結果が出ないのです。

耳抜き不良ダイバーに対するオトヴェントの使用方法は、以下の通りです。

1.
オトヴェントをゆっくりと約3秒かけてグレープフルーツ大まで膨らませ、膨らんだらその大きさを1〜2秒間保持する。
この様にして、合計でおおよそ4〜5秒間で一回のバルサルバ法ができるように訓練する。
一気に息むと耳管がブロックされて、抜ける確率が減少してしまいます。

グレープフルーツ大の大きさに膨らまします

グレープフルーツ大の大きさに膨らまします

2.
オトヴェントの強さが習得できたら、オトヴェントを使用しないで、オトヴェントの強さ通りに息むバルサルバ法を練習する。
海の中にオトヴェントを持って行けないからです。

3.
一日に100回程度のバルサルバ法を、同じやり方でできる様に反復練習する。
なぜならば、一回の潜水で平均30回以上の耳抜きが必要で、一日に3ダイブすることもあるからです。

この様にして、中耳および内耳に対しての負担がなく、効率が良いバルサルバ法を習得する事によって、これだけで約96%の耳抜き不良ダイバーは治癒します。
治療期間は1週間から6ヶ月間と個人差が大きく、平均治療期間は2.6ヶ月でした。

オトヴェントの強さより強く息んだり、一気に息めばオトヴェントは簡単に膨らみますが、それでは何の意味も無いのです。
とにかく大切な事は、

「やっとオトヴェントが膨らむ、ぎりぎりの強さで、ゆっくりと膨らませること」

なのです。
そして、それをオトヴェント無しで再現できることがゴールなのです。

女性の場合、非力なために初めのうちはオトヴェントが膨らまない人がいます。
「こんなに強く息んだら危険!」と勝手に解釈して弱く息んだり、訓練をやめてしまう人もいますが、まだ世界で誰も耳を痛めたことがない世界特許商品ですから、世界で一人目の障害を起こす確率はまずないと信じて、頑張って膨らませられるように訓練しましょう。
時間がかかっても、訓練を続けた人は最終的には全員が膨らむようになっています。

バルサルバ法は、唯一訓練が可能な耳抜きといっても過言ではありません。
それでも結果が出ないときには、潜水医学に詳しい耳鼻科医を受診しましょう。

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PROFILE
医大生時代にダイビングと出会いのめり込み、ダイビングのために時間とお金を捻出するために、他の趣味をどんどんやめてしまう。
クリニック開業後、好きが高じてダイビングインストラクターになり、現在は、テクニカルダイバーとして、ケーブダイビング、リブリーザーダイビング(rEvo)、大深度ダイビング(-100m越え)などの潜水を行なっている。
また、全国から潜水医学の講演依頼があり、ダイバーおよび耳鼻咽喉科医へ正しい潜水医学の普及をすべく活動。
その後、58才で耳鼻科開業医を引退し、第2の人生でメキシコ移住。メキシコセノーテを潜り三昧の日々を送る。
 
潜水歴30年、潜水本数約3000本。
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