エジプト人ダイバーが、ダイビング潜水深度332.35mのギネス記録達成!

ダイビング深度ギネス記録(提供:アフメド・ガマル・ガブルさんと彼のチーム)

水深100mの世界へ!テクニカルダイビングとは
深く潜るとなる?減圧症とは

※この記事は2014年12月22日の記事を加筆・訂正しています。

2014年9月、41歳のエジプト人ダイバー、アフメド・ガマル・ガブル(Ahmed Gamal Gabr)さんが、2014年9月18日に紅海(Red Sea)のダイビングスポット、ダハブ(Dahab)という町の沖合で、ダイビング潜水深度のギネス記録(世界記録)を更新しました。

記録は、何と332.35m!
いやぁ、すごいです。

ダイビング深度ギネス記録(提供:アフメド・ガマル・ガブルさんと彼のチーム)

ギネス記録を更新したアフメド・ガマル・ガブル (Ahmed Gamal Gabr)

そんなアフメドさんに、今回の偉業達成までの軌跡をご紹介します。

元特殊部隊・潜水工作員のテックダイバー

アフメドさんは、元武官で中東唯一の特殊部隊の潜水工作員(combat diver)。
奨学金をもらってアメリカで潜水工作員訓練を受けました。

ダイビング深度ギネス記録(提供:アフメド・ガマル・ガブルさんと彼のチーム)

7歳の時、シャルムエルシェイク(Sharm El Sheikh)で初めてスキューバダイバーを目にし、「それは将来の僕だ」と自分に言い続け、今では、実際に20年以上も潜るダイバーになっています。

1996年からTDI(Technical Diving International)のインストラクター、2012年からTDIのインストラクタートレーナーと大活躍のアフメドさんは、中東唯一のERDI(Emergency Response Diving International)インストラクタートレーナーでもあります。

なぜ、深海を目指すのか?

人類は深海でも生きる事ができると証明したかったアフメドさん。
人間はどこまで潜れるかずっと知りたかったけど、その答えは本に載っていなくて、専門家も答えられなかったそうです。

そこで、アフメドさんは自分でその答えを探そうと決め、時間をかけて勉強し、潜水中の一つ一つの動きを細かく計画していくことになります。

また、南アフリカ人のNuno Goezさんという方が、2005年に作った318.25mの潜水深度記録も破りたかったそうです。

屈強な体躯そのままに、チャレンジ精神も旺盛。

6年前に水深350mまで潜る決めたアフメドさんは、4年間訓練を積んで 、水深350mのダイブを計画し始めたのが1年前でした。

ヨガのインストラクターとの瞑想、毎朝のランニング、訓練のための定期的なダイビング、そして健康的な食事をとるなど、さまざまな精神的、肉体的トレーニングを行ってきました。
ちなみに、トレーニング中、最も深いダイブは200mまででした。

サポートダイバー14人、使ったタンクは93本!
350mの深海へ

2014年9月10日、紅海(Red Sea)のダハブ(Dahab)で記録に挑戦。

ダイビング深度ギネス記録(提供:アフメド・ガマル・ガブルさんと彼のチーム) ダイビング深度ギネス記録(提供:アフメド・ガマル・ガブルさんと彼のチーム)

潜水を開始してから水面に浮上するまでの総ダイビング時間は、なんと13時間50分!

潜降が14分、浮上が13時間36分だったそうです。

ダイビング深度ギネス記録(提供:アフメド・ガマル・ガブルさんと彼のチーム)

気が遠くなるというか、普通のレクリエーショナル・ダイバーには考えられないことですね。

当日のサポートチームは、高度な訓練を受けた さまざまな国籍のサポートダイバー14人。
アフメドさんは水深100m時点で彼らと別れ、1人で332.35mまで行ったそうです。
潜降中はロープ以外、何も見えなかったとのこと。

ダイビング深度ギネス記録(提供:アフメド・ガマル・ガブルさんと彼のチーム)

水深が増すにつれて、だんだん光が奪われ、闇の世界へ……

計画350mを目標としていたのですが、高圧神経症候群(HPNS)の症状を感じ始め、その症状は消えることが無かったようです。

あと十数メートルで目標達成というところでしたが、症状がひどかったため335mのタグを手にとって、浮上する決心をしました。

タグは、潜降用に使ったロープに320mの時点から、5mごとに350mまでつけられていました。

浮上を開始してから、最初に会ったサポートダイバーは110m。
その後、水面へ着くまでは、交代で何人かがアフメドさんと一緒についていたそうです。

水面へ上がった時は5人のサポートダイバーが待っていましたが、その前には特別な瞬間が。
水面へ向かっていた最後の6時間に赤ちゃんのヨゴレザメが現れ、まるで一緒に祝っていたようだったと、アフメドさんは話しています。

アフメトさん自身は合計9本のタンクを使用し、(水中でサポートダイバーがタンクや器材を計画に従って回収・交換する)サポートダイバー達は全部で93本使ったそうです。

ダイビング深度ギネス記録(提供:アフメド・ガマル・ガブルさんと彼のチーム)

なぜ記録が332.35mという中途半端な数字なのかというと、流れが強く、ロープが曲がってしまい、アフメドさんが手に持っていた335mのタグをエビデンスとして確認し、ロープのたわみ等を補正した結果、正確には332.35mとギネス側の審査員が認定したそうです。

ダイビング深度ギネス記録(提供:アフメド・ガマル・ガブルさんと彼のチーム)

ギネス記録の認定を受け笑顔のアフメドさん

アフメドさんのチャレンジは続く

ダイブ当日の1週間前は、タグをなくすのではないか? など、いろいろな不安が脳裏をよぎり、悪夢に覆われ、眠れなかったというアフメドさん。

しかし、見事ギネス記録を達成した彼の挑戦はまだ終わりませんでした。

2015年には紅海(Red Sea)で世界最大の 水中清掃イベントを行ったそうです 。

なんでも、文字通り、深く追求して、前へ進めば、新しい世界が広がっていきますね。

アフメドさん、おめでとうございます!

ダイビング深度ギネス記録(提供:アフメド・ガマル・ガブルさんと彼のチーム)

その偉業は記者会見を通じて世界中に発信された

■取材協力/写真提供:アフメド・ガマル・ガブルさんと彼のチームより

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PROFILE
イギリス生まれ、8歳から13歳まで日本で育ったイギリス人と日本人のハーフ。

2006年に再度来日し、ナレーター、翻訳者、ライターとしてNHKテレビ、ラジオ、日本駐在外国人向けのウェブサイトなどで活躍。
2010年ニューカレドニアで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、2011年以降定期的に日本で潜っている。

日本の海の魅力、多様な生物や地形等に感動し、海外であまり知られていない日本のダイビングを紹介する目的で、2011年にブログ(Rising Bubbles)を立ち上げた。

外国人向けのサイトや海外のダイビングサイトで日本のダイビングスポットを定期的に紹介しており、スコットランドのセントアンドリューズ大学で水産養殖も勉強中。

「ダイビングをきっかけに、日本の海がどれだけ魅力的なのかをすごく実感しました。この連載では、たくさんの情報を届けていきながら、海外からのトピックを取り上げ、日本と海外の違いや海外の視点等をシェアするのを楽しみにしております」
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