テクニカルダイビングって何? スキューバダイビングのより深み、見たことのない世界へ

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ダイビングを楽しむ人なら「もっと深いところに行ってみたい」、「洞窟や沈船の中を探索してみたい」といった憧れを一度は抱いたことがあるのではないだろうか。憧れで終わらせたくないダイバーたちは、さらなる知識とスキルを磨きチャレンジしている。それが「テクニカルダイビング」だ。テックダイビングと言われることもあるこのダイビングは一体どんなものなのか、実施するにはどうしたらいいのか、テクニカルダイビングについてご紹介。

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テクニカルダイビング・リブリーザー

テクニカルダイビングとは

まず、一般的に普及しているスキューバダイビングは、レクリエーショナルダイビングのことを指し、空気での潜水を前提とし、緊急浮上ができる範囲で行うことが前提とされている。
レクリエーショナルダイビングとは

一般的なレクリエーショナルダイビングの範囲

・水深40m以浅
・洞窟や沈船などすぐに水面に上がれないオーバーヘッド環境では縦横合計距離40m以内
・無減圧潜水時間内(減圧停止を必要としない=DECOが出ない)

一方テクニカルダイビングは、上記を越えた範囲、つまり緊急浮上ができない範囲でのダイビングのことを指す。テクニカルダイビングでは、緊急時でも簡単に水面に上がることができないため、より安全に関する知識や計画、それを実行するスキルが必要となってくる。例えば、混合ガスリブリーザーといった専用の器材を使用したり、減圧停止を伴う潜水計画を綿密に立てたり。このようなテクニカルダイビングの知識をアップデートし、トレーニングを行うことで、それまでの限界を超えて楽しむことができるようになるのだ。
リブリーザーとは

テクニカルダイビングの始まり

より長く、深く潜るために、ダイビングの技術は研究されてきた。1930年代にはアメリカ海軍が沈没船から船員を救助するために、1960年代には商業ダイバーが油田の開拓のために混合ガスを使用し始めた。その後1980年代に洞窟や沈船を潜るダイバーたちによって、それらの技術がレジャー取り入れられ、体系化されていったのがテクニカルダイビングだ。

ケーブダイビング、ケーブダイブ、TDI

Photo by Kei Tanaka

当時はテクニカルダイビングという言葉はなく認知度も低かったが、1990年代に「aquaCORPS(アクアコープス)」というダイビング誌で「テクニカルダイビング」という言葉が初めて登場し、同年にダイビング指導団体のPADIがテクニカルダイビングの記事を掲載したことでその名前が広く知られるようになった。

テクニカルダイビングの魅力

深場や洞窟、沈船…ダイビングできる範囲が広がり、今まで見たことのない景色を見られるのは大きな魅力ではないだろうか。そうでなくても、減圧不要な範囲を越えて水中に長くいられることはダイバーにとって嬉しいことだろう。その分ダイビング自体を長時間楽しめるし、深場に潜れるようになればそれまでに見たことのなかった海洋生物にも出会えるかもしれない。また、水中撮影をゆっくり楽しむこともできるリブリーザーを使用すれば泡が出ないため、生物により近づくことも可能になる

テクニカルダイビング

また、安全に関する知識やスキルがアップデートされるため、通常のダイビングでもより安全性が向上するというメリットもあるだろう。

テクニカルダイビングの教育機関(指導団体)とコース

レジャーの範囲を広げるために進化していったテクニカルダイビングだが、具体的にはどのようなコースが用意されているのか。海外・国内でテクニカルダイビングの講習を提供し、ライセンスカードを発行している主な教育機関には下記が挙げられる。

CMAS 世界水中連盟
GUE 全世界水中探検会
IANTD 国際ナイトロックステクニカルダイビング協会
IART 国際リブリーザートレーナー協会
TDI 国際テクニカルダイビング

日本国内ではテクニカルダイビング教育機関としては世界最大規模のTDI(Technical Diving International)をはじめ、PADI が提供するTecRecコースなど、いくつかの機関からテクニカルダイビングコースが提供されている。ここではTDIのコースを紹介させていただく。

ディープダイビング

水深40mを越えて潜るために、減圧手順や混合ガス、リブリーザーの使用について学ぶコース。より深く潜るために下記のコースを受けていくことで、最大100mまで潜ることができるようになる。

オープンサーキット(※1)

イントロテック:テクニカルダイビングの入門コース
サイドマウント:シリンダーを体の側面に装着するスタイル
DPVダイバー:水中スクーターの使用
ナイトロックス:酸素濃度40%までのナイトロックスの使用
アドバンスドナイトロックス:酸素濃度40%〜100%までのナイトロックスの使用
減圧手順:減圧停止を使用した水深45mまでの潜水
エクステンディッドレンジ:ボトムガスにエアーを使用し、酸素濃度の違う減圧用ガス2種類以上を使用した水深55Mまでの減圧潜水
トライミックス :ヘリウムガスを窒素と酸素に混合したガスを使用した水深60Mまでの潜水
アドバンスドトライミックス:ヘリウムガスを窒素と酸素に混合したガスを使用した水深100Mまでの潜水

※1:通常のダイビングと同様に、タンクから吸入した空気やナイトロックスを水中に排気するスタイル

リブリーザー(※2)

セミクローズドリブリーザー:排気の一部を再生するセミクローズドリブリーザーを使用
エアデュリエントCCR(クローズドサーキットリブリーザー):空気と酸素を使用するCCRでの水深30Mまでの減圧停止不要潜水
減圧エアデュリエント:空気と酸素を使用するCCRでの水深45Mまでの減圧潜水
ミックスガスCCR :ヘリウムガスを使用するCCRでの水深60Mまでの減圧潜水
アドバンスドミックスガスCCR:ヘリウムガスを使用するCCRでの水深100Mまでの減圧潜水

※2タンクから吸入した空気を水中に排気せずに再生して使用するスタイル

オーバーヘッド環境ダイビング

洞窟や沈船など水面にすぐに上がることができない閉鎖空間でのダイビング。暗い中でも安全に潜るためのスキルやテクニック、手順を学んでいく。

オープンサーキット

カバーン:光が届く洞窟エリアでの潜水
イントロケーブ:洞窟の入り口から200mの範囲内での潜水
フルケーブ:制限なしの洞窟潜水
ケーブ測量ダイバー:洞窟内の測量
DPVケーブダイバー:洞窟内での水中スクーターの使用
ステージケーブダイバー:ステージボトルを使用した洞窟潜水
アドバンスドレック:狭い船内まで侵入する沈船潜水
マインダイバー:浸水した鉱山での潜水
リブリーザー

CCRカバーン:カバーンエリア内でのCCRの使用
CCRイントロケーブ:イントロケーブエリア内でのCCRの使用
CCRフルケーブ:フルケーブでのCCRの使用
TDIコースチャート

テクニカルダイビングができるダイビングショップ

テクニカルダイビングをやってみたい!そう思った方はぜひ近くのダイビングショップに問い合わせてみて欲しい。

テクニカルダイビングインストラクターが在籍している、テクニカルダイビングのライセンスコースやファンダイビングができるTDIの国内or日系ショップ一覧
[山形県]
アーバンスポーツ
[石川県]
シードラゴン
[千葉県]
ASDI
[東京都]
Oceanus 
DiveZone Tokyo 
Dive Networks
[神奈川県]
explorers-nest
Stingray Japan
Technical Diving Center Japan
[岐阜県]
Diving Shop HIRAKI
[静岡県]
JAPAN TECH ACADEMY
Reef Raiders
[愛知県]
TDI JAPAN
evis
[大阪府]
なみよいくじら
FUN マリンステーションFUN
[和歌山県]
ダイブサプライ
[大分県]
TOP SECRET Cave explorers INAZUMI
[島根県]
隠岐国ダイビング
[沖縄県]
ベントスダイバーズ
マリンドリーム[夢塾]
ワールドダイビング
[ミクロネシア チューク]
トレージャーズ
[メキシコ カンクン]
アクアプリ
[メキシコ プラヤデルカルメン]
イグアナダイバーズ

取材協力: TDI
テクニカルダイビングインターナショナル。1994年にレクリエーショナルダイビングの遊びの範囲を安全に拡張するために設立された。ディープダイビングやリブリーザー、ケーブダイビングなどすべてのテクニカルダイビングのコースを扱う世界最大のテクニカルダイビング指導団体。姉妹団体にはSDI、ERDI、PFI、First Response Trainingなどダイビングの各分野の指導団体を有している。日本では1996年から活動をしている。

参考:Revisiting the Technical Diving RevolutionCelebrating Lad Handelman

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