「沖縄伝統工芸×サトウキビの搾りかす」から生まれる循環型アパレルサービス[後編]

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前編に続き、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」に観点を置いた沖縄発のバガス(サトウキビの搾りかす)から作られる“かりゆしウェア”のシェアリングサービスを行なっている「Bagasse UPCYCLE(バガスアップサイクル)」について、共同創業者の小渡氏に話を伺った。

前編では、「Bagasse UPCYCLE(バガスアップサイクル)」が実践している“サーキュラーエコノミー”などの取り組みについて語っていただいた。後編では、かりゆしウェアのシェアリングサービスや商品についてお伺いしていく。

“かりゆしウェア”のシェアリングサービスとは?

かりゆしウェアとは、沖縄県などで主に夏のあいだ着用される半袖のシャツ。シェアリングサービスでは、沖縄県内のホテルとシェアオフィス、SHIMA DENIM WORKSの店舗を拠点に、観光客やワーケーションの方へ1日1,500円〜で貸し出しを行なっている。
公式サイト:https://bagasse-upcycle.com/cms/

コロナ禍による影響と今後の取り組みについて

ーコロナ禍では、ワーケーションやリモートワークなど働き方にも変化がありましたが、かりゆしシェアリングーサービスにはどのような影響がありましたか?

小渡氏

利用件数がまだまだ少ない状況で、新型コロナの第四波がきているのでどうしようかなと…。実証実験は去年の10月頭ぐらいからスタートしましたが、ちょうど沖縄が寒くなってしまうタイミングだったので自分も含めて半袖シャツを着ない気温になり、ほぼ動いていない状況です。
そのため、「まだまだ4月から頑張ろう」という感じです。今はまだ新型コロナと気候によってブロックされている状況なので、今後うまく認知していただいて使ってもらえるといいなと思っています。

夏に向けて新作も展開予定!
日本国内の職人たちの技術から生まれる付加価値に迫る

ー価格帯が安いファストファッションが環境に悪影響を与えている現実もある中で、この価格帯で販売している付加価値はどんなところですか?

小渡氏

ファストファッションは結構複雑なので安易に語ることはできませんが、SHIMA DENIM WORKSの発想としてなるべく製品寿命を延ばす商品を作っていきたいと思っています。これは、無駄なものを減らして行くことでコストダウンをしていくなど、オーバープロダクション(過剰生産)に対して一つの回答になります。また、職人さんを繋げてモノを作って行くことで、もっと商品に愛着が湧くようになり、それが商品の付加価値に繋がります。「買っても一回しか着ない」とか「気づいたらまた同じモノ買っていた」など、そういった消費行動を変えていけるといいなと思います。

他にファストファッションで言えることといえば、サプライチェーン自体がグローバル化されていて、ベトナムやバングラデシュ、エチオピアなど世界中の一番安い工場でモノを大量に作っています。そのため、カーボンフットプリント(素材、製造、流通、販売などの過程で排出されるCO2)が多くなってしまうのも問題です。私たちは素材も含めてサプライチェーンを日本国内に絞って服作りをしているため、カーボンフットプリントの観点から見ても環境に優しいです。

 

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ー多くの職人さんが関わり商品が作られていると思いますが、その出会いや商品ができるまでの流れについてお伺いしたいです。

小渡氏

工業用の産業和紙を作っているのがそもそも国内では二箇所しかなかったのですが、クオリティを突き詰めていくと岐阜県美濃市が一番よく、BAGASSE UPCYCLEの共同創業者であるSHIMA DENIM WORKSの山本氏が口説きにいきました(笑)。和紙を作った後は、テキスタイルの一大産地である広島県福山市で糸や生地を作ります。その後、沖縄に戻り、ダブルボランチというデニムを縫える職人がいるので、その方にお願いしてデニムを縫製してもらっています。

 

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また、琉球びんがたや地元のデザイナーのデザインを商品プリントに活用させていただいているのですが、職人が、配色を決め、デザインプロデュースの段階からかかわってもらっており、その仕上がりについても監修しているので、職人公認のプリントの琉球びんがたかりゆしが完成します。職人も自信を持ってSNSなどでPRしてくれているので、今まで伝えられなかった顧客層に認知を取ることもできています。日本の職人を繋げてモノを作っている形ですね。

今はまだどのデザイナーを起用するか発表していませんが、、夏に向けて5デザインを作っている段階です。サービス提供開始は7月前後ぐらいを予定しています。

 

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かりゆしウェアの形は現在3パターンあり、フォルムやデザインが全て違う。
女性の場合、紅型デザインのかりゆしをボーイッシュに着こなすこともできる。

かりゆしウェアのシェアリングサービスの予約方法

ーシェアリングサービスはどこで受けることができるんですか?

小渡氏

沖縄県内のホテルシェアオフィスSHIMA DENIM WORKSの店舗を拠点にサービスを提供しており、観光客やワーケーションの方を中心に、シンプルなアップサイクルかりゆしを1日1,500円で、琉球びんがたとイチグスクモードとのコラボかりゆしを1日2,000円で貸し出しを行なっています。

4月からは那覇にある「沖縄ハーバービューホテル」という沖縄の老舗ホテルでサービス提供を開始しました。夏までにその他いくつかのホテルでサービスをスタートする予定です。

今後も少しずつ増えていく予定ですが、アパレルの難しいところはサイズを揃えないといけないため、流行ったら流行ったでモノがなくなってしまう。「在庫をどれぐらい持つかのスピード感」と「使ってもらえる場所を増やすスピード感」のバランスがすごく難しくて…。年内は10拠点までを目標に利用できる場所を沖縄本土内に作っていきたいなと思っています。北谷、恩納村、那覇など分散した場所で使っていただけるようにホテルと調整しているところです。

ーホテルに泊まらない方も、貸し出しサービスは利用できますか?

小渡氏

ホテルでは泊まっているお客様向けにサービスを提供しているため、提携ホテルを利用しない方はSHIMA DENIM WORKSの店舗でご利用いただけます。

 

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シェアリングサービス予約はこちらから

ーシェアリング・購入すると、携帯上で商品の情報が見られるようになっているとお聞きしました。

小渡氏

そうですね。かりゆしウェアをスキャンすると、各かりゆしウェアに紐づいているページがサイトに表示されます。そして、「シェアリングした服が何回利用されたか」など、自分自身がシェアリングしている服の状況などをお客様自身でチェックすることができます。また、複数回利用するとマイページに使用履歴が溜まっていき、利用毎に溜まるエコポイントのようなものも今後検討したいと思っています。このポイントにより「環境に対してちょっといいことしたな」と感じていただけたら嬉しいです。

最後にオーシャナ読者へメッセージ

小渡氏

我々は沖縄と繋がっているプロダクトを作っているので、沖縄にきて海を楽しんでもらうと同時にこの土地の文化を知って楽しんでもらえたら嬉しいです。沖縄の海の環境が、ちゃんと次の世代に残していけるようにという思いで商品を作っているので、是非機会があったらかりゆしウェアやSIMA DENIM WORKSのプロダクトを手に取ってきていただけるととても嬉しいなと思います。

ー小渡さんありがとうございました。

沖縄の伝統技術とバガスを組み合わせた「沖縄でしか体験できない、沖縄だからこそ体験できる」モノや人の繋がりが循環したとても素敵な取り組み。
沖縄はダイビングスポットが多く、ダイバーの方もよく行く地として有名である。次回沖縄を訪れる際は、綺麗な海と一緒に伝統工芸やワークショップにも触れてみる時間を作ってみてはいかがだろう。

前編はこちら

小渡 晋治氏
株式会社okicom常務取締役


1982年、沖縄生まれ・沖縄育ちの38歳。大学進学時に東京へ出て、その後は米系投資銀行 で10年間キャリアを積む。2016年にシンガポール経営大学にてMBAを取得したのちに、 2017年から沖縄へ帰郷。父が創業したIT企業であるokicomにて経営及び新規事業の立ち上げを行いつつ、沖縄の地域資源・地元産業のアップデート、DX、商品・サービスプロデュースに取り組む。2021年より、okicomと(株)Rinnovationの合弁会社である(株)BAGASSE UPCYCLEを設立、共同創業者/CEOに着任。その他、琉球びんがた普及伝承コンソーシアム事務局長、琉球びんがた事業協同組合特別顧問、SHIMA DENIM WORKS CSO(Strategy / Sustainability)、中小機構沖縄事務所 国際化支援アドバイザーなど務める。

Bagasse UPCYCLE


かりゆしウェアのシェアリングサービスをメインにサーキュラーエコノミーを生かし、沖縄の伝統工芸などを広めていく取り組みを行なっている。
公式サイト / Instagram / facebook / Twitter

SHIMA DENIM WORKS


沖縄の原風景を残していきたいと思いからスタートし、バガスを活用した商品を生み出している。アパレル製品だけにとどまらず、金平糖やバイオプラスチックを使ったコースターなど、「衣食住」にフォーカスした商品を展開してく予定だ。
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PROFILE
奄美在住。高校生の時にブラジル留学を経験。泳ぐのが苦手で海とは縁がない人生だと思っていたが、オーシャナとの出会いを通じてOWD(BSAC)を取得。オーシャナを通じ、環境問題や海のことについて勉強中。
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