熱中症に気を付けよう!基本編 〜真夏のあるあるトラブル〜

楽しかった南の島のダイビングツアーから帰国。
日本の肌寒さが楽しかった旅の終わりを告げ寂しい気持ちになるものですが、今の日本はとにかく暑い。
先日、成田空港に降り立って思ったものです。「タイより暑っ!」。

そんな暑〜い日本のダイビングにまつわる、こんな駆け込みが来ました。
熱〜くお怒りのご様子です。

――先日、●●に潜りに行ったとき、「あとちょっとで出発ですから準備お願いします」とガイドが言うので、ウエットスーツを着て準備しました。
でも、お店から港まで車で10分以上かかり、港に到着後にセッティング。
船に乗ってみると、ポイントまで20分くらいかかり、結局、スーツを着てから潜るまで1時間弱はかかったと思います。
ゆでダコにする気か!

炎天下でフルスーツはサウナ並みにきつかったです。
脱ぐのが面倒くさがった私も悪いですが、潜るまでにそんなに時間かかるんだったら最初に言ってほしかった。
潜る前にぐったりして、1日中だるかったです……。
■神奈川県/伊豆きち(男性・38本)

ダイビング時の熱中症

伊豆きちさんの言うように、聞いて脱げば良かったし、ガイドさんは流れを説明すべきだったという話ですが、いずれにせよ、炎天下でウエットスーツを着たまま長時間作業するのは自殺行為。
熱中症になりかねません。海に涼みに来ているはずが、熱中症になっては本末転倒。
そこで、安全に夏のダイビングを楽しむために、熱中症のおさらいをしてみましょう。

熱中症とは高温の環境下で体温調整や循環機能などの働きに障害が起こる病気全般を指し、場合によっては死んでしまうこともあるので注意が必要です。

主に以下のような熱けいれん、熱疲労、熱射病の3つのレベルに分類され、それぞれ微妙に対処法が異なりますので、まずはその症状をチェックしてください。
この3つのレベルは、段階的に上がっていくケースだけでなく、いきなり熱射病になることもあります。

ジャングルに匹敵するウエットスーツ!?

通常、体は新陳代謝をして熱を放出しています。

しかし、その熱が放出されなけば、熱は体内にこもり、体温がグングンと上がってしまうのです。
考えられるケースは以下2つ。

1.激しいしい運動で熱を自ら上げてしまったとき。
2.気温が体温と同じかそれ以上になり、空気が湿っていて、無風状態のとき。

前者は部活でよく問題になるケースですが、ダイビングではあまり考えられません。
後者のような状況も熱帯のジャングルでもなければありえ……ます!
まさにウエットスーツの中がそんな状態なのです。 

熱を発散すべき肌はウエットスーツで覆われ、湿り気抜群、空気だってシャットアウト。
さらに、そんな状態で動き回れば、千本ノックされなくてもぶっ倒れてしまいます。

また、熱中症はほとんど脱水に関係していますが、脱水すると血管が収縮して窒素の排出がしにくくなります。
つまり、減圧症を誘発することにもなるのです。

伊豆きちさんもすでに熱中症だったのかもしれません……。
ダイバーなら寒さだけでなく、暑さ対策も忘れずに。

※明日は予防・対処編

熱中症の症状・レベル
①熱痙攣(けいれん)

多量の発汗による塩分が失われるために起こる、筋肉の興奮性が高まった状態。こむら返りなど、部分的に筋肉痙攣が起こる。
もうちょっと教えて!
水分が蒸発するときに気化熱を人体から奪うのと同じように、肌の表面に出る汗は、体温を下げることに役立ちます。
これは庭に打ち水をすると涼しくなるのと同じ原理です。
しかし、汗の成分は水だけではなく塩分が含まれています。
大量に発汗すると、塩分不足のために、筋肉の痙攣が起きるのです。

②熱疲労

水分補給を十分に行なわなかったことによる、いわゆる脱水症状から起こる熱射病の前段階。
もうちょっと教えて!
血液は、熱を作る深部の筋肉や内臓などを走る血管を通るときに熱を吸収し、皮膚を流れる血管(皮膚血管)を通じて熱を放出し、皮膚から熱は体外に放出されます。体温が高く上がると、皮膚血管が拡張し血液が通りやすくなることで、皮膚血管を通る血液の量を増加させて熱の体外への放出を増加し体温を下げようとする身体の仕組みが働くのです。
一方、暑さや運動などのために大量に発汗するような場合には、体内から水分が失われ脱水状態となり、全身を循環する血液量も減少します。
これら皮膚血管の拡張と循環血液量の減少は、血圧の低下を起こし、熱疲労(熱消耗)となり、悪化するとショック状態となり命に関わる場合もある。

③熱射病

体から熱を放出できない状況下で、体温が異常に上昇した状態。背景には脱水があること多く、重症の場合、死に至ることもある。
もうちょっと教えて!
体温を下げようとする身体の仕組みが働かなくなり発熱する場合に起こり、体温は40度を超えます。
暑い環境で熱性発熱を起こし意識障害などが見られるような場合を熱射病と言い、悪化するといろいろな臓器の働きに異常を生じ命に関わる場合もあります。
また、直射日光をあびることによっておこった熱射病を日射病ということも。

【おまけ】
こんなダイバーはいけません!

たま〜に、この方のような投稿をいただきます。

―――太っている私は、運動をしなくてはとダイビングを始めたのですが、思った以上に運動量は少なく、しかも、ダイビング後のメシとビールがうまいのなんの。
痩せる気配はまったくありません。
そこで、せめてもの努力と、皆がまだ下半身しかウエットを着ていない段階で、「準備は早めに……」と言ってウエットスーツを早い段階で全部着て、フードまで被ってしまいます。
もちろん、エントリーするころには汗だく。
しかし、エントリーした瞬間の気持ちよさと言ったら!
気持ちいいし、痩せているような気もしてハマッています。
水中でのどが渇くのがたまに傷ですが……。

こらこら(笑)。
ここまでの記事を読んでいたら、突っ込まざるをえません。

「汗をかいた後に潜るダイビングの快感」、「汗をかいてダイエット」。
この2つのキーワード、たまにダイビングのメリットとして挙げる方がいますが、むしろデメリット。

汗をかいた後の水風呂ならサウナ、汗をかいてダイエットならジョギングやルームランナーにしておきましょうね。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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