インドネシア・バリでダイビング中の日本人女性7人が行方不明。現地からの情報レポート

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2013年2月14日(金)午後、インドネシアのバリ島の沖に浮かぶ、ヌサ・ペニダ、ヌサ・レンボガン(ヌサとは“島”という意味。二つの島は隣り合っている)の海域で、ダイビングをしていた日本人女性7人が行方不明になったとニュースになっています。

総領事館によると、7人は20~50代の日本人女性。うち2人はバリ島在住のインストラクターで、地元のダイビングショップ「イエロースクーバ」の2人とみられる。他の5人は日本からの観光客で、出身地はそれぞれ異なるという。イエロースクーバにインターネットで申し込んできた。

ダイビング中の日本人女性7人不明 インドネシア・バリ:朝日新聞デジタル

セブ島の群れ(撮影;越智隆治)

問い合わせも多くいただいているので、事故の現場となった海域を取材で潜ったことのある立場から、現地の方に聞いた情報を交えて、現時点(2月15日 17:00)でわかっている情報、可能性をご紹介します。

また、報道機関やダイバーでない方から問い合わせのあったご質問にもお答えしておきます。

ただ、前提として強く強調しておきたいのは、現時点で、事故自体の詳細は何もわかっていないということです。

現場となったヌサ・レンボガンという海域

ひと口にバリと言っても広域で、南北東にダイビングポイントが点在し、行方不明となったヌサ・ペニダ、ヌサ・レンボガンの海域は、バリ島から40~50分に位置する、バリを代表するドリフトポイント(潮に流されながら潜り、浮上するとボートがピックアップするスタイル)。

バリ一番人気のマンボウをはじめ、マンタ、回遊魚などを狙える大物ポイントとして知られ、現場となった「サケナン」はサンゴの美しいダイビングポイントです。

「大物が狙える=潮の流れが速い」という側面があり、時に予想外の強烈な潮が流れることも確かです。
僕もいろいろなところで話していますが、強烈なダウンカレント(海底に引き込まれる潮)に遭遇したのはまさにこの海域です。

ただ、「なぜ、そんなダイビングポイントに潜ったのか?」という問いは早計で、もちろん、潮が弱まる時間帯や場所もあり、そんな潮を読みながら潜るのがこのポイントの定番で、毎日のようにほとんどの場合は事故なく楽しんでいます。

大物ポイント、ドリフトダイビングとは、そうしたリスクを認識した上で潜るダイビングで、もちろん、その分、準備が必要となりますが、その点と照らし合わせてどうだったのか、ということは、現時点ではまったくわかっていないのです。

行方不明の原因。その可能性

なぜ行方不明になったのか?
その可能性について、現地の話をもとに、現時点での原因を紹介しておきます。

7人がまとめて行方不明ということを考えれば、ダイビング中の予想外のカレントか、浮上後の漂流の可能性が高いでしょうが、はっきりとした答えは時間を待たねばなりません。

可能性として、ヌサ・レンボガン、ヌサ・ぺニダを専門に潜る老舗ダイビングショップのオーナーによれば、確かにこの海域は、時に潮が強烈なことがあるが、今回に関しては、天気の影響ではないだろうか、という指摘がありました。

雨季とはいえ、今年は例年になく天候が不安定で、今回のケースも想定外の急な悪天候により、視界や海況の問題からボートのピックアップができずに流された可能性が高いのでは?ということでした。

現地のローカルガイドも「大雨により、水面の視界が悪く、たとえフロートを上げてもボートに見えなかった可能性がある」と指摘しています。

もちろん、時に「潮が速いと、あっという間にブルーコーナー(ヌサ・レンボガン最北のダイビングポイント)まで流されてしまう」というポイントなので、ダウンカレントの可能性もあるのでしょう。

以上は可能性に過ぎませんが、まずは、ダウンカレントではなく、水面を流され、無事ピックアップされることを祈るのみです。

また、「どういう状況ですか?」「何が原因でしょうか?」と可能性を推論するのはまだしも、「何が悪かったのか?」という“犯人探し”をする段階ではないでしょう。

明日も捜索が続けられるそうです。

■行方不明者のお名前

ミヤタ・リツコさん▽ヤマモト・エミさん▽トミタ・ナホミさん▽モリゾノ・アヤさん▽ヨシノベ・アツミさん▽タカハシ・ショウコさん▽フルカワ・サオリさん

時事ドットコム:不明邦人7人の氏名判明=強い潮流に流される?-バリ島沖でダイビング中

一般からの問い合わせについて

※報道機関やダイバーでない方からいただいたお問い合わせに対する、ごく一般的な説明です。

■ドリフトダイビングって何ですか?

流れのないボートダイビングポイントでは、ボートをアンカリング(動かないように固定)して、ロープを伝って海へ潜り、周辺を潜ってからボートに戻って来るスタイルでダイビングします。

それに対して、ドリフトダイビングとは、潮に流されて(乗って)潜るスタイルで、ダイビング後は水面に浮上し、船が近づいてきてピックアップしてもらうスタイル。

つまり、前者は固定された船を基点に行って帰って来るスタイルで、ドリフトダイビングは潮に乗っているダイバーを船が追いかけてピックアップするスタイルです。

■1日3本のダイビングは普通ですか?

日帰りダイビングの場合、1日2本がデフォルトですが、オプションで3本目を潜ることもごく一般的です。

■インストラクター2名にゲスト5人は適正ですか?

ライセンス(正式にはCカードという認定証)講習では人数比が決まっていますが、すでにダイバーになっている人をガイドする場合は特に決まっていません。

ゲスト5人に対してガイド1人というのも割と一般的で、ゲスト5人に2人のプロというのは一般的には少なくありません。
※もちろん、潜る環境によります。

■女性だけのパーティーは一般的ですか? ブームですか?

特にブームということはないですが、女性だけで潜ることに違和感はまったくありません。
今回の場合、ダイビングショップを経営なさっている二人が女性ということで、ゲストに女性が多い傾向があったのかもしれません。

■年齢が20~50代というのは一般的ですか?

幅広い年齢層が楽しめるのがダイビングです。
違和感はありません。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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