ダイビングの管理体制にも影響!? シュノーケリング死亡事故3700万支払いを命じる

西表島オガン特集

ダイビングツアー中の死亡事故を巡る裁判で、インストラクターに3700万円の支払いを命じる判決がくだされました。
ダイビングの安全管理を考える上で重要な内容ですので、ご紹介します。

2010年、西表島で観光客の女性がシュノーケリング中に溺れて死亡した事故を巡り、遺族がインストラクターにおよそ5700万円の損害賠償を求めていた民事裁判で、那覇地裁はきょう、インストラクターにおよそ3700万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。この裁判は2010年、西表島で、当時45歳だった東京都の女性がダイビングツアーの最中にボートに残され、一人で「シュノーケリング」をしたところ溺れて死亡したとして、遺族が竹富町の男性インストラクターにおよそ5700万円の損害賠償を求めていたものです。

裁判ではインストラクターが監視義務に違反していなかったかが争点となり、遺族側が「一人で残せば命に危険が生じることを予見できた」と訴えたのに対し、インストラクター側は「現場の危険性を説明していた」などと主張していました。

きょうの判決で鈴木博裁判長は「女性が一人でシュノーケリングをすることは十分に予測できた」とした上で、「スタッフが女性と一緒にボート上に残り、動きを監視するなどの措置を講じなければならなかった」として、5700万円の請求のうち3700万円を支払うよう言い渡しました。

RBCニュース

「インストラクターの監視義務」という争点は、近年、注目されているテーマで、「ボートに残り、動きを監視すべきだった」として、インストラクター側に損害賠償の支払いが命じられたという結果は、受け止めておくべき必要がありそうです。

この判決からの、受け入れ側(ダイビングショップ側)のポイントとなりそうなのは……

■ダイビング中だけでない、ゲストの監視義務がある
■スタッフがボートに残るべきだった

事故発生当時の報道では、女性は「もともとシュノーケリングをする予定だった」とありましたが、今回、裁判官は「女性が一人でシュノーケリングをすることは十分に予測できた」と言っているので、事実関係がよくわかりません。
少なくとも言えることは、船上では、海に入るかどうか自体のことか、入った後のシュノーケリングのことかどうかわかりませんが、リスクの説明だけでなく、監視をしなければいけないということでしょう。

ただ、「一人でシュノーケリングすることは予見できた」とありますので、しっかりリスクを説明した上で、一人ではなく、バディシステムでのシュノーケリングであったら、どうだったのでしょうか。
また、女性はCカードホルダーだったそうですが、その点は考慮されるのでしょうか。

僕が気になったのは、「ボートにスタッフが残るべきだった」という指摘の方です。

厳密には、あくまでゲストを監視するためという前提ですが、そもそも船を無人にしないよう保船要員を配置しておけばよいということで、少々拡大解釈かもしれませんが、「ボートにスタッフが残るべき」という判例の意味は小さくないような気がします。

沖縄などでは、船を無人にしてゲストと潜るというのは、割とよくあります。

現地は、アンカリングに工夫をするなどして対処してきましたが、以前から、海難審判庁や海上保安庁も、義務とまでは言わないまでも、ダイビング中の船上の保船要員の必要性を明記している上、判例ができれば、今後、なかなか理解を得られるのが難しい状況になることが予想されます。

実際、船上を無人にすることによるダイバーの漂流は起きています(というか、経験したことが有りまして……)。

■ダイビング船の海難と再発防止
http://www.mlit.go.jp/jtsb/kai/chihoubunseki/h19/nahabunseki-19.pdf

「錨泊中、周囲の見張りを兼ねて保船要員をおき、船を無人にしないようにしましょう」(海難審判庁)

■危ないぞ! 最近のマリンレジャー!
http://www.kaiho.mlit.go.jp/11kanku/01yasuraka/jiko/diver/diver.htm

「ダイビング船には、必ず保船要員を残しダイバーの動静、周辺海域の安全確認を行い、天候の急変、その他緊急時の場合に備えるとともに、携帯電話などの連絡手段を確保しましょう」(海上保安庁)

ダイバー側からも、「ダイビング中、船に人がいるのか聞いた方がよいのでしょうか?」とか「無人の船の場合、クレームいれるべきでしょうか?」という質問をいただくようになり、バリの事故などの影響もあってか、ダイビング自体だけではなく、受け入れ側の管理体制への安全意識も高まっているのかもしれません。

今回のシュノーケリングでの事故自体は、内容がまったくわからないので何とも言えないのですが、今一度、シュノーケリングに必要なスキルを見直し、相互監視ができる状況で遊びましょうね。

■シュノーケリングをするための必須のスキル
https://oceana.ne.jp/accident/57753

控訴するのかどうかわかりませんし、あくまで一審の判決のみの限られた情報からの考察ですので、今後も注目したいと思います。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
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〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
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