事故から考える。いくつまでダイビングできるの?

ダイビング歴45年・ヤドカリ仙人のぶつぶつ日記

ショックである。

ごく最近、我輩の大先輩のグループの沖縄ツアーで、
ダイビング事故があったと伝えられた。
亡くなられた方は68歳の女性で、
ボートの下でバディのお姉さんと待機しているときに様子がおかしくなって、
ただちにボートに上げて救命措置を施したが結局亡くなられた。

その後の司法解剖で心筋梗塞であったことが分かったそうな。
典型的な水中での病気というわけです。
ダイビングそのものが原因ではなく、ダイビング中の病気です。
どちらにしても、関係者はしばらくはつらい日々を送ることになります。
しかし、あのいい加減なDANJAPANの事故レポートでは
ダイビング事故として記録されるでしょう。

この大先輩は障害者ダイビングプログラムの開発、
高齢者のダイビングプログラムでは、最も豊富な経験と実績がある人なので、
高齢者のダイビングケアでは、第一人者であることは
このヤドカリ爺が保証できる先輩であります。

また、8月の東伊豆でインストラクターコースをしている最中のコースディレクターに、
突然水中で異変が起き、ただちに水面に上げられ、
ドクターヘリで救急病院に搬送され、硬膜下出血と診断され、
緊急手術の結果、一時はかなりの危険な容態だったそうですが、無事回復退院されたとか。
昔インストラクター時代にお世話になったお方なので、ひとまず安堵したしだい。

このケースはインストラクターコースの生徒さんの1人が看護師さんで、
病変に気づくのが早く、対応も早く、ただちにドクターヘリを要請、
高度医療のできる病院にリレーできたという、幸運ともいうべき状況がありました。

どちらの病気も、陸上で起きても、ただちに生命を脅かす病気です。
しかも、一瞬の処置の遅れが生死を分けます。
困ったことに、軽い脳梗塞といった病気でも、
水中で起きれば、結果は溺れる結果につながります。

また、この8月には、西伊豆の黄金崎で85歳のダイバーが、
エントリー直後に、行方が分からなくなって、その後発見されたが、
死亡が確認されたという報道がありました。
一部の新聞では、何らかの発作の疑いとも伝えられていました。

7年前(ということは78歳で)にダイビングを始められて、
350本のダイビング経験というからには、かなり元気なおじいさんだったのでしょう。
わたくしヤドカリ爺からすれば、えらく豪快なこの世とのお別れかとも思いますが、
ご家族や関係者にとっては、それどころかやはり突然の事故であります。
この事故の場合は、ダイビングの事故なのかダイビング中の病気なのか、
原因は分かりませんが、若い人に比べれば、どうしても病気の可能性はあります。

リクリエーションダイビングは、世界的にも、いわゆるベビーブーマー、
日本では団塊の世代が支えてきたといわれております。
そのベビーブーマーたちもすでに60代なかば、ダイバー人口は高齢化しております。
当然、水中で病気になるダイバーも増えると思われます。
となると、心配なのは、ダイビングサービスなどが、
何歳ごろまで受け入れてくれるかであります。

お客さまはありがたいけど、面倒見るのが大変だというのも本音でありましょう。
もとインストラクターであるわたしヤドカリも、
78歳の方がコースにやってきたら、かなり躊躇したに違いありません。

ダイビングっていつまでできる?!

もちろん人さまざま、ご高齢者の体調もさまざま。
ベルリンオリンピックの記録映画を監督した、かのレニ・リーフェンシュタール女史などは、
101歳で”ワンダー・アンダーワールド”の撮影をしたといわれておりますな。
さすが最年長ダイバー記録はその後破られておらないようであります。

世の中ありがたいもので、いったい何歳までダイビングをするかなんてことを
アンケートするイサイトがあちこちございます。
拾い読みですが、「92歳のPADIダイバーを認定」、
「80歳以上のダイバーグループの面倒を見ています。最年長は95歳」なんてのもございます。
少なくとも、70歳代など当たり前のようであります。

とはいうものの、高齢でも元気な人もさまざまでありますし、
若くても元気でない人さまざまであります。
しかし、不幸にも事故が起きれば、年齢が問題になるわけです。

ショップオーナーでコースディレクターにお聞きしたところでは、
何歳までといった業界ルールはないので、
心配なときはご家族の承諾を電話で確認するようにしているとか。

モルジブのツアーボートのホームページでは、
「70歳以上の方は事前にご相談ください」とあります。
無条件にはお受けできませんという意味でしょう。

一生ダイビングをしたいと思っていたし、
ダイビングは一生のスポーツですなんて言っていたヤドカリ爺でありますが、
いざ高齢者のダイビング世界が現実なると、
いろんな問題が起きてくることを痛感しております。

ダイビングという異環境でのスポーツは、”常に自分の限界を知れ、守れ”と
口が酸っぱくなるほどいわれますが、
何歳までダイビングができる、するは、まさに自分じゃなければ決められませんな。
なんとなく自動車の運転と似ています。

70歳を越えてなおダイビングを続けるなら、
週に2回ぐらいはスイミングに通って、心肺能力、体調が十分でいないといかんとも思うのであります。
こんな楽しい遊びを続けるには、それなりの努力がいるということでしょうか?

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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