編集部・セリーナのフリーダイビング挑戦記「経験0から日本代表を目指す!」(第2回)

【フリーダイビング、日本代表目指します!】編集部・セリーナの挑戦レポートvol.2

たった一息でどこまで自分の限界に挑めるかを競う、平穏と静寂のスポーツ「フリーダイビング」。そんな競技に昨年12月から本格的に取り組み始めた私、オーシャナ編集部のセリーナが、1月末に行われた記録会に出場してきた。人生2回目となる本記録会の目標は、ホワイトカードで正式記録を残すこと。果たして結果はいかに…!? 記事最後にはお知らせも。

人生初記録会は2021年12月26日。結果は…、失格だった!

昨年12月の記録会で「ダイナミックアプネア ウィズ バイフィン(以下、DYNB)」という2枚フィンを使ってバタ足で泳ぐ種目に出場した私は、初参加ながら先輩フリーダイバーをお手本にしたり、サポートしてくださる記録会運営スタッフの皆さまに手助けしてもらいながら、なんとか自分の競技をやり遂げた。泳げた距離は100m。しかし、サーフェスプロトコル(ジャッジに向けて行う、浮上後の一連の合図)がうまくできず、結果は残念ながら失格を意味するレッドカード。もちろん悔しかったが、それ以上に楽しい気持ちがそこにはあった。記録会後は自然と記録更新への意欲が湧いてきて、すぐに次の記録会に申し込み、「まずはホワイトカードで正式記録を残すこと」を目標にした。

レッドカードだったが、嬉しそうな競技後。左はサポートをしてくれた同じく編集部のユウダイさん

レッドカードだったが、嬉しそうな競技後。左はサポートをしてくれた同じく編集部のユウダイさん

2022年1月29日、人生2回目の記録会

AM9時35分。受付を済ませ、プールに入場。1ヶ月ぶりのピリッとした記録会の雰囲気は2回目でも、やっぱり緊張する。

本記録会に向けて、仕事の合間に時間を見つけてはプールで泳いだり、家でストレッチをしたり、前回の記録会のサポートで帯同してくださったオーシャナのユウダイさんに練習を見てもらったりしてきた。満足のいく練習量ではないが、自己記録を更新する自信はひっそりと持っていた。一番の課題は、前回の記録会で失格の原因となったサーフェスプロトコルだ。今度こそは絶対に失格しないように、イメトレだけは完璧。あとは本番でできるかどうか。

今回、私が出場するのは、前回の記録会と同様の種目DYNBと、水面に浮き、一呼吸での閉息時間の長さを競う「スタティックアプネア(以下、STA)」の2種目。前回の記録会を一度経験しているので、右往左往することなく、落ち着いて本番前のウォーミングアップには望めた。ただ、STAは記録会初出場だったので、ルールに不安があった。しかし、本記録会の主催団体「トゥルーノース」のスタッフがビギナーメンバーを集め、改めてルール説明をしてくださったので、不安が解消された。

最初はSTAから

そんなこんなで、ついに私の出番が回ってきた。まずはSTA。「うわ〜、やっぱり緊張する〜。けど楽しみ…」。複雑な気持ちが入り混じる。競技スタート時間のオフィシャルトップの2分前を知らせる場内アナウンスが流れる。

目をつぶって、リラックス。呼吸に意識を向けると、心拍数がだんだんと落ち着いていくのを感じる。

目をつぶって、リラックス。呼吸に意識を向けると、心拍数がだんだんと落ち着いていくのを感じる。

「30秒前」、「10秒前」、「5、4、3、2、1、オフィシャルトップ!」

ゆっくりと顔を水につけ、足を浮かせ、最後に壁からそっと手を離す。STAはDYNB以上に静寂な競技かもしれない。

競技中の様子はこんな感じ。ド派手なピンクキャップの私を1人のサポート、2人のセイフティ、2人のジャッジ(写真の外にもう1人)、今回も応援に駆けつけてくださったユウダイさん、合計6名が見守る。

サポートは、選手の体が流されないようにしたり、経過時間を教えるタップをしたりするなどの役割を担う。セイフティは選手に万が一のトラブルが発生した場合にいち早く引き上げ助けてくれる。ジャッジは、審判員のこと。

練習では4分30秒までいけたので、その記録は超えたいところ。「4分〜!」、サポートがタップをして時間の経過を教えてくれる。このあたりから苦しくなってきた。ここからが自分との勝負だ。「4分30秒〜!」。横隔膜がピクピクなり、体が“早く呼吸しろ”と言ってくる。あともう少しいける。ゆっくりと手と足をつき、顔をあげる準備をする。「5分〜!」。この声を聞いて、顔をあげた!「プハッ!!」。

息を整え、サーフェスプロトコルをする。今回は手応えがあった。

マスクを取って、OKサインを出して、「I’m OK!」。

マスクを取って、OKサインを出して、「I’m OK!」。

果たして判定は…。

「ホワイトです!」

「わ〜い!」、初めてのホワイトカードに思わず笑みが溢れる。

「わ〜い!」、初めてのホワイトカードに思わず笑みが溢れる。

記録は5分2秒だった。

次は本命のDYNB!

さぁ、次は前回の記録会で100m泳げたものの、レッドカードとなったDYNBだ。STAの終了後からDYNBまで3時間半ほどあったので、プールサイドでお昼寝もして、体力は完全回復。

水中での抵抗を少しでも減らそうと、シリコン素材の水泳キャップにチェンジ。ド派手ピンクの水泳キャップよりは、ビギナー感が薄まったかな?

水中での抵抗を少しでも減らそうと、シリコン素材の水泳キャップにチェンジ。ド派手ピンクの水泳キャップよりは、ビギナー感が薄まったかな?

前回の記録会では、オフィシャルトップ前に十分な余裕がなく、ウエイトやフィンをつける動作で少し慌ててしまった気がしたので、少し早めに自分が泳ぐコースの前に来てみた。集中しているスタート前は、ほんの少しの動作や焦りでも心拍数に影響するような気がして、普段よりも体の変化にセンシティブになる。

オフィシャルトップが近づき、ゆっくりと入水する。集中しているとはいえ、カメラを向けられるとつい笑顔になってしまう(笑)。

オフィシャルトップが近づき、ゆっくりと入水する。

集中しているとはいえ、カメラを向けられるとつい笑顔になってしまう(笑)。

オフィシャルトップの2分前。これから泳いでいく水を見つめ、頭の中をポジティブなイメージで満たす。

オフィシャルトップの2分前。

これから泳いでいく水を見つめ、頭の中をポジティブなイメージで満たす。

ユウダイさん。実はこのとき「次はイエローカード出ないかなぁ」と思ってニヤニヤしていたらしい。(笑)

ユウダイさん。実はこのとき「次はイエローカード出ないかなぁ」と思ってニヤニヤしていたらしい。(笑)

「5、4、3、2、1、オフィシャルトップ!」

孤独な挑戦がスタート。

選手のスタートに、プールサイドのジャッジやサポートも動きを合わせる。

選手のスタートに、プールサイドのジャッジやサポートも動きを合わせる。

50mを折り返した。まもなく100m到達。

50mを折り返した。まもなく100m到達。

100mですでに苦しかったが、まだ少し余力はあったのでターンした。そして少し粘って、116mでついに浮上。

前回の反省をいかし、これでもかと大袈裟にサーフェスプロトコルをする。

前回の反省をいかし、これでもかと大袈裟にサーフェスプロトコルをする。

これはホワイトカード間違いなし!と思う一方で、テストの結果発表待ちをしているかのようにドキドキする…。ジャッジが、首にかかるホワイト、イエロー、レッドのカードの中から選んだのは…。

「ホワイトカード!」

本日2回目の「わ〜い!」。

本日2回目の「わ〜い!」。

リベンジ達成できたこと、100mを越えれたこと、本記録会の出場種目が無事にすべて終わったこと、いろいろな嬉しさが込み上げてきた。

最後にジャッジをしてくださった方々と、ユウダイさんと記念撮影。

最後にジャッジをしてくださった方々と、ユウダイさんと記念撮影。

前回の記録会で私にレッドカードを下し、フリーダイビングの厳しさを教えてくれたジャッジの方が、偶然にも2種目ともジャッジを担当してくれた。競技後に「今回は絶対にホワイトカードを取って欲しかったから、よかったよ〜!」と声をかけてくださって、とても嬉しかった。厳しく思えた前回と打って変わって、女神さまのように優しく思えた(笑)。

STAとDYNBの実際の様子(出典:トゥルーノース)▼

DYNBで使用した株式会社キヌガワのGULL「スーパー ミュー」と一緒に記念撮影。

DYNBで使用した株式会社キヌガワのGULL「スーパー ミュー」と一緒に記念撮影。

競技を終えて…

2回目の記録会を終えてみて、やっぱり、自分の限界に挑戦し、記録を更新し、仲間と喜び合うのはスポーツならではの醍醐味でもあり、楽しさだと思った。これは一流アスリートもビギナーも変わらないことではないだろうか。また、本記録会に出場中、「DYNBで150m泳げたら日本代表になって世界大会に行けるかもよ」という話を小耳に挟んだ。私はかつて競泳をやっていたが、シニアの国際大会の代表になることはできなかった。競泳で叶えることができなかった夢を競技こそは違うが、叶えられるチャンスかもしれない。そこで「日本代表になって、世界大会に出場する」を私の目標にすることにした。

目標を応援してくれる方、募集!

オーシャナの編集部である私、セリーナがオーシャナを背負い「日本代表になって、世界大会に出場する」という目標を一緒に応援してくださる、企業さま・個人さまのスポンサーさまを募集いたします。この目標を目指すことでフリーダイビングの普及にも繋げたいと考えています。スポンサーさまのメリットとしては、フリーダイビング大会での露出やocean+α記事での紹介など。ぜひご支援を賜りますようお願い申し上げます。下記メールアドレスからご連絡ください。「info@oceana.ne.jp

【自己ベスト】STA:5分2秒、DYNB:116m
【経歴】1996年4月1日、オランダ人の父と日本人の母の間に生まれる。2歳で水泳を始め、平泳ぎで全国大会での優勝やジュニアの国際大会への出場も経験し、22歳で競技から離れた。大学卒業後は、半導体の素子を製造する電子部品メーカーに入社し、広報室に配属。同時にスキューバダイビングを始め、海の虜になる。さらにタンク無しで少しでも海に溶け込む感覚を味わいたいと思い、2020年4月にフリーダイビングのCカードを取得。次第に「海やダイビング、そして海洋環境保全に携わることがしたい」という気持ちが芽生え始め、2021年10月にオーシャナへ転職した。2021年現在は編集部の一員として海やダイビングにまつわる情報を伝えている。

「第26回トゥルーノース フリーダイビングプール種目 公式記録会」
主催:トゥルーノース
ウェブサイト
プール競技ルール
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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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