【日本最大規模!第2回PADIフリーダイビングカップ】編集部・セリーナの挑戦レポvol.5
12月17、18日の2日間を通して、東京都江東区にある競泳の世界大会なども行われる東京辰巳国際水泳場にて、「第2回PADIフリーダイビングカップ」が開催された。本大会には大会初出場の選手から世界を舞台に戦う日本代表選手まで総勢48名の選手がエントリー。この参加人数は日本最大規模の大会だ。編集部からは、日本代表入りを狙うセリーナも出場したので、結果にも触れながら大会の様子をお届けしていきたい。
フリーダイビングで記録を残す舞台を大きくわけると、選手順位はつかず自分の記録に挑戦する「記録会」と、記録をポイント制にして競い合う「大会」との、2種類がある。本大会は、後者の「大会」に区分され、男女別上位3位までが表彰がされる。大会では、自分の記録との戦いに加え、他者の記録も順位に影響してくるので、記録会以上に熱い戦いになるのだ。
1日目
開会式
本大会は、参加人数が多いことから、国内のプール競技にしては珍しく2日間に分けて大会が行われた。初日には開会式が行われ、株式会社パディ・アジア・パシフィック・ジャパン代表取締役会長・中野龍男氏や大会実行委員会委員長 トゥルーノースグループ代表・山本哲也氏などが挨拶され、大会の幕が切って落とされた。
プール競技の花形「ダイナミック・アプネア」
最初の種目は「ダイナミック・アプネア」。この種目は、息を止めて、プールを水平方向に何m泳げるか競うもので、1枚の大きなフィンを使って泳ぐ部門「ウィズフィン」、2枚のフィンを使って泳ぐ部門「バイフィン」、フィンを使わずに泳ぐ部門「ウィズアウトフィン」に分けられる。選手たちはこの3つの部門のうち、それぞれ好きな1部門に出場する。
競技スタート前、選手たちは精神状態を落ち着かせることに集中し、できる限り心拍数を落とす。そのとき会場は、独特な緊張感と静寂に包まれる。その中で響き渡るアナウンサーの「5、4、3、2、1」というカウントダウンで、選手たちは短いようで長い、自分との戦いが始まる。
選手が泳ぐ間、セーフティー(水中で選手の安全管理をするサポートダイバー)やジャッジ(競技ルールに基づいて違反がないか確認する審判員)、サポート(選手がベストパフォーマンスを発揮できるよう寄り添ってきたバディ)、そして応援に駆けつけた観客などが固唾を飲んで見守る。
そして、選手が水面に顔を上げ、ジャッジがパフォーマンスに対する判定をする。判定が出るまでの間は、スタート前に次いで緊張する瞬間だ。そして、見事ホワイトカード(パフォーマンスに違反はなく、記録認定!)が出ると、会場が拍手と祝福の声で一気に湧き立つ。緊張から解放された安堵した表情、記録更新の嬉しさ、さまざまな感情が一気に込み上げる。このスタート前とパフォーマンス後の激しすぎるテンションのギャップもフリーダイビングの特徴とも言えるかもしれない。
わたくしセリーナはバイフィンに出場し、記録は122m。自己ベストは昨年9月に更新した134mなので、記録更新とはならず。悔しい結果に終わったが、強化すべきことや課題が多く見つかり、次に向けて学びの多い内容となったのは確かだ。
■ウィズフィン:1枚の大きなフィンを使って泳ぐ
男性:大井慎也選手 205m
女性:尾関靖子選手 200m
■バイフィン:2枚のフィンを使って泳ぐ
男性:阿部恭祐選手 177m
女性:市原由利子選手 178m
■ウィズアウトフィン:フィンを使わずに泳ぐ
男性:吉松大輝選手 78m
女性:西谷栄美選手 91m
選手以外も楽しめるイベント!「マーメイド&フリーダイビング体験会」
初日の競技終了後には、フリーダイビング未経験者へ向けたフリーダイビング体験会やマーメイドスイム体験コース、フリーダイビング器材モニター会などのイベントも行われた。
フリーダイビング体験会では、リラクゼーション呼吸の方法や脱力の仕方など、フリーダイビングの基本となることを学び、その気持ちよさを体感できた様子。
マーメイドは写真映えすることから、世界的に注目が集まってきており、日本にも新しいダイビングのプログラムとして導入されたばかり。参加者は色鮮やかなマーメイドスーツを身につけ、優雅に泳ぎながら楽しんでいたようだ。
2日目
シンプルだけど奥が深い「スタティック・アプネア」
最終日の種目は「スタティック・アプネア」。この種目は、初日の「ダイナミック・アプネア」とは違い、泳力による差が出ず、純粋にどれだけその場で息止めができるかを競う、一見シンプルなもの。
よくフリーダイビング未経験者から、「どうやったらそんなに息が止められるの?」と質問を受けるが、適切な呼吸法やリラックス方法、そして体に起こる反応などを知ることで、想像しているよりもはるかに人間は息を止められる。
「潜水反射」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは、頭部(顔面)が水に浸かると脳に信号が送られて無意識に心拍数が減少する身体のメカニズムのことで、さらに末端部の血液が体幹に集まるようになったり、脳の活動が低下したりもする。まさに人間が水から生まれた生き物であることを裏付けるかのよう。
頭をからっぽにして、脱力して水中で息を止めることは、「今、瞬間の気持ち」「今ある身体状況」といった、過去の経験や先入観といった雑念にとらわれることなく「今」の状況に集中するマインドフルネスにも似ているような気がして、気持ちがいい。
と、魅力を語ってみてはみたものの、当の本人(私)は、競技として記録を狙う者として、目標であった自己ベスト更新に20秒ほど及ばず、5分3秒という記録だった。息を止めている間の体の反応を冷静に見極めるスキルを身につける必要がありそうだ。
男性:矢部紀行 選手 6分41秒
女性:HANAKO選手 6分32秒
表彰式
2日間、全力を尽くした選手たち。最後は、大会の締めくくりとなる表彰式だ。本大会は男女それぞれの各種目1位、および2種目の記録で獲得した総合ポイントの1位から3位までにメダルが授与され、大会の歴史に名前が残る。
メダルを手にしたのは、世界大会への出場経験が豊富な強い選手たち。しかし、フリーダイビングを初めて間もない選手たちも、自己ベストを大きく更新するなど、誰もが楽しめる大会となった。ランキングは以下の通り。
大会を終えて
2日間にわたり開催された本大会。主役は選手だが、その選手たちが安全に最高のパフォーマンスを発揮できるよう、選手の人数と同等もしくはそれ以上にたくさんのスタッフが裏方となり、支えている。この徹底した安全管理があるからこそ、選手たちは安心して競技に臨める。感謝の気持ちでいっぱいだ。
私としては、悔しい結果に終わってしまった。しかし、大会に出場したことで多くの学びがあり、次につながる課題を発見することができたのは大きな収穫。また練習を頑張りますので、引き続き、応援よろしくお願いいたします!応援してくださった皆さま、誠にありがとうございました。
大会主催:ダイビングショップトゥルーノース
写真提供:PADI(パディ・アジア・パシフィック・ジャパン)
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