バリ島トランバンでダイビング!早朝ワイド、日中マクロと”真逆の顔”を見せる「沈船リバティ号」の魅力
こんにちは。水中写真家のしげです。
前回の記事では、セブ島の最南端“リロアン”について書かせていただきました。
▶セブ島の最南端!ダイビング天国・リロアンには夢幻の色がある!?背景にこだわってもっと魅力的な水中写真を
今回はバリ島デンパサール空港から車で約3時間、バリ北西部のトランバンの海にやってきたので、そちらのレポートをしたいと思います!
バリ島の超人気ダイビングポイントであるトランバンは、“マクロの宝庫”と言われ、まだ和名の付かないウミウシやエビカニが豊富に生息し、世界中のマクロダイバーを魅了しています。
しかし!
そんな”マクロ天国”のトランバンの海で僕が1番感動したのは、メインのダイビングポイント「沈船リバティ号」でした。
ここにきて沈船……?って思いますよね。
「沈船リバティ号」のポイントは何がすごいかというと、早朝のダイビングと日中のダイビングでまったく違った光景が見られるんです。
早朝のダイビングでは沈船に群れるカンムリブダイや微かに差し込む光のコントラストをダイナミックにワイドで楽しむことができ、日中は沈船にびっしりと付くソフトコーラルや色鮮やかなホヤの上に住む、ウミタケハゼの仲間やクロスジリュウグウミウシなどマクロで楽しめます!
つまり早朝は光の明暗をワイドに、日中は色鮮やかな景色をマクロに楽しむ!
ここまで真逆の魅力を1つのポイントで兼ね揃えた場所は、他にないのではないかと思います。
沈船リバティ号とは!?
沈船リバティ号は第2次世界大戦で日本軍に追われ座礁したアメリカの貨物船です。
全長130mもの大きな船体が水深12~30mに静かに横たわっています。
過去に海岸に引き上げられていたリバティ号は、1963年のアグン山の噴火で起きた地震により水底に沈んだそうです。
そして今では世界的に有名なレックポイントとして、またマクロダイビングの聖地として、世界中のダイバーに愛されるバリ島屈指のダイビングエリアになりました。
日本とも遠からず所縁のあるダイビングポイントなんですね。
夜明けと共にエントリー!
早朝しか現れないカンムリブダイを狙え!
カンムリブダイが沈船の周りで見られるのは、日が完全に昇るまでの早朝の間だけ。
朝5時、眠い目を擦りながらベットから抜け出します。
まだ夜が明けない真っ暗なうちにウエットスーツに着替え、ダイビングポイントへ向かいます。
まだ真っ暗だというのに沈船ポイントには各国のダイバーが集まっています。
ブリーフィングを聞いていると少しずつ空が明るくなってきて、太陽が出る前にエントリーします。
こんなに朝早くにダイビングをするのは初めてで、どんな景色が広がっているのかワクワク感が止まりません。
エントリーすると、水中はわずかに光が差し込むものの水中ライトがないとバディが見えないくらい暗く、ナイトダイビングのような状態。
ちなみに訪れた2月のトランバンは雨季のシーズン。
前日も大雨が降ったため透明度は5m前後とコンディションはあまり良くなく、雲がかかったようにモヤモヤした海が広がっています。
ガイドとはぐれないように気を付けながら沈船を目指していると……
まだ魚たちも寝ているのか、いつの間にかイスズミの群れに囲まれていました。
写真を撮ろうとストロボを焚くと、驚いてものすごい勢いで散り散りに逃げて行きます。
寝起きドッキリか!!ってくらい驚く魚に、ちょっと笑えました。
沈船に向かっていく途中にカンムリブダイには会えなかったので、とりあえず沈船の周りをぐるっと一周しようとガイドから合図があります。
僕自信は、あまり沈船自体には興味がなかったのですが、全長130mの船とだけあって、さすがにでかいし迫力があります。
沈船の内部に軽く入ることができるような場所もあります。
薄暗い沈船は幻想的で美しい。
ちょっと水がにごっていますが逆にそれがいい。
もちろん乾季のシーズンや雨季でも、雨が降らなければ青い海も楽しめるそうです!
沈船には大きなウミウチワが生えています。
トランバンではどのソフトコーラルも大きく成長しており、トランバンの海の栄養の豊かさが伺えます。
沈船の周りにも、まだ寝ぼけていて近寄りやすい魚が多くいます。
写真のゴマアイゴは、カメラのポートがぶつけれるのでは?と思うほど、近寄ることができました。
そうこうしていると、“カンカン”とタンクを叩く音でガイドが僕のことを呼び……
ついに現れました!
優に1mは超えるであろうカンムリブダイ!!
ガイドが群れの反対側に回り、見事に引き付けてきます。
このポジション取りやライトの向け具合がさすがプロの仕事です。
そして、なによりトランバンのカンムリブダイはでかい!!
ここまで大きいカンムリブダイは今まで見たことありませんでした。
さらに、僕の経験だとカンムリブダイは非常に憶病で、近寄るのが難しいと思っていましたが……
めちゃくちゃ寄れる!
近すぎて正直恐い(笑)
一通り撮影を終えると、威風堂々と泳ぎ去って行きました。
トランバンのカンムリブダイは大きさといい度胸といい、良い意味で期待を裏切ってきます。
この後、別のカンムリブダイにも会うことができ……
一緒に潜っていたゲストの方を入れて、カンムリブダイと2ショットを撮ってしまいました。
人と比べるとやっぱり異常に大きいですよね。
早起きさえすれば、こんな巨大なカンムリブダイと泳ぐことができ、うっすらと差し込む朝日と沈船の幻想的なコントラストが見られるんです。
トランバンに来たら、1日くらいビールをちょっと我慢して、翌朝に早朝ダイビングをしても良いですね!
日中はマクロで楽しむ!
ソフトコーラルやホヤのカラフルな世界。
日中のダイビングは早朝とはまったく違った雰囲気で楽しみます。
トランバンといえば豊富なマクロ生物、リバティ号もマクロで楽しみましょう!
沈船なのにマクロって思いますよね?
リバティ号の本気の魅力は、ここから始まります!
アグン山から降り注ぐ栄養豊富な水により、沈船にはカラフルなソフトコーラルやホヤがビッシリと生えています。
めちゃくちゃカラフルで鮮やかなんです。まるでお菓子のように。
そして、そのホヤをエサとするウミウシも多く集まってきます。
こんな素敵なシチュエーションにウミウシがいるなんて夢のよう。
ずっと憧れてきた環境なだけに何度もシャッターを切っていると……
すぐ横ではアカフチリュウグウウミウシがホヤを食べていました!
こんな素敵な背景と被写体がそこら中にいるなんて、ずっとここで潜ってたい!
もちろんホヤの周りにいるのはウミウシだけじゃありません。
トランバンでは定番の、ホヤの上に乗るウミタケハゼの仲間なんかもいます。
ピョコピョコと動き回りますが、最終的には青いホヤの上に戻ってくるので、じっくり粘れば写真の撮りやすい良い子です。
ソフトコーラルを覗けばクダゴンベも隠れています。
非常に人気で多くのダイバーが見た後だったからか、ソフトコーラルのポリプが閉じていたのだけ少し残念でした。
沈船には、まだまだハダカハオコゼなどのアイドルやさまざまな種類のウミウシ、ソフトコーラルにつく甲殻類などたくさんの魅力的な生物が住んでいます。
めちゃくちゃ満足して沈船から離れ、砂地を泳いでエキジットしようとすると……
最後に追い打ちをかけるように、水深5mのところでクマドリカエルアンコウも発見!
トランバンにはカエルアンコウの仲間も非常に多く生息しています。
日本では珍しいカエルアンコウモドキやヒメヒラタカエルアンコウなども、ほかのポイントでは見ることができました。
早朝とは全然違った、カラフルで鮮やかなホヤやソフトコーラルを背景にしたマクロダイビング。
沈船でマクロもおもしろいですね!
「沈船リバティ号」は、ワイドとマクロ、1本ずつだけじゃ全然満足できないほど、魅力の詰まったポイントでした!
“マクロの宝庫”、トランバンは
沈船以外もすごかった!
「沈船リバティ号」でのダイビングにとても感動した僕ですが、それ以外のポイントでも、マクロ生物の多さに本当に驚かされました。
“トランバンのマクロはすごい”と噂では聞いていましたが、実際に潜ってみると……
トゲツノメエビやフリソデエビなどのアイドル生物から見たこともない奇妙なウミウシまで、次から次へと被写体が現れます。
ゆるキャラみたいな見た目と光合成をする不思議な生態から、ダイバーだけでなく、さまざまな人に大人気のホホベニモウミウシが見られるのもトランバンです!
ほかにも、ちょっと変わった緑色のフィコカリスシムランスも見られました。
いつも見るモジャモジャの毛をまとったシムランスとは違い、鮮やかな緑色をしていて非常に美しい個体です。
みんなが大好きなアイドル生物から、マニアックなダイバーまで楽しめる奥深さがトランバンの海にはあります。
被写体が多すぎて、とにかく忙しい!
今回お世話になったノーブルバリ
お世話になったダイビングショップはダイビングリゾート ノーブルバリ トランバンさんです。
2012年に完成したというリゾートは清潔で非常に快適でした。
ノーブルバリさんではフォト派ダイバーが安全に快適にダイビングを楽しめるようにと、追加料金なしでナイトロックスを利用できます。ダイバーのことを徹底的に考え、設計されたリゾートはダイビングや水中写真に集中できる環境でした。
フォト派のダイバーはトランバンの海に1度潜ると、海の魅力はもちろん快適なリゾートから虜になること間違いなし。
ぜひ行ってみてくださいね。
取材協力:ダイビングリゾート ノーブルバリ トランバン
手配協力:ユーツアー
茂野優太さんのプロフィール
「まだ見たことない世界を見てみたい」をモットーにダイビングに関わることは、なんでもこなす。
学生時代にダイビングにハマり、銀行員に就職するもダイビングの魅力が忘れられず、ダイビングの世界に。
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