「ホッキョクグマの絶滅」はウソ!? ファクトフルネスで見る地球温暖化の意外な真実

皆さんは「ファクトフルネス」ということ言葉を聞いたことありますか?先月発売された書籍『15歳からの地球温暖化』の著者である杉山大志氏(以下 杉山氏)によると、「ファクトフルネス=データをもとに世界を冷静に見る習慣」だという。
日々多くの情報が行き交う現代社会では、得た情報を鵜呑みにするだけでなく、時には一歩引いて違った視点で物事を考えることも大切ということだ。そこで、書籍『15歳からの地球温暖化』の一部データとともに、ファクトフルネスについて考えてみよう。

ファクトフルネスって結局どういうこと?一部データを元に解説

世界中で地球温暖化の危機が叫ばれていて、ニュースはさまざまな悪影響が起きていると報じている。
では、もし次のような話を聞いたら、みなさんはどう思うでしょう。

●ホッキョクグマは絶滅しない
●太平洋の島国は水没しない
●台風や豪雨は激しくなっていない

このような、今まで自分が思っていたことと相反する情報を耳にした時、「この情報は間違っている」と感じる方が多いのでは?。これらはどれも本当のこと。しかし、地球は温暖化しているが、ニュースで報道されているような危機的な状況ではないという側面も持ち合わせているのだ。

たとえばホッキョクグマの頭数(下図)はかつて1万頭まで減少していたが、今では4万頭まで増加している。これは、人間が射殺せずに保護するようになったことが大きな理由で、動物保護の一大成功事例であると言える。

図中の赤丸は、推計した頭数。また上下に付いている線は、推計の誤差範囲を示している。

また、太平洋のサンゴ礁に浮かぶ島国には、海抜が数メートルしかないツバルやキリバスなどがある。これらの国は地球温暖化によって海面が上昇することで「水没の危機」にあると言われている。

しかし、サンゴは動物であり、海面が上昇するとその分、速やかに成長するので水没しない。ある研究の観測データによれば、対象とした27のサンゴ礁の島のうち86%で面積は増大、または安定していて減少したのは全体の14%のみだった。実際にキリバスでは過去70年、首都のあるタラワ島などの面積は増えていた。

このように「ニュースで報じられていること」と「データをもとにした事実」は大きく異なることがある。もちろん地球の環境を考えることは重要。しかし、それだけでなく、同時に「データをもとに世界を冷静に見る習慣(=ファクトフルネス)」をつけることも大切なのだ。

著者 杉山氏がこの本を通して伝えたいこと

大切なことは、計算機によるシミュレーションではなく、実際の観測・統計のデータ結果をよく理解して、それにもとづいて考えること。まさに情報の取捨選択が重要視される時代に必要不可欠なスキルとも言える。この本が地球温暖化について「みんなが言っているから」ではなく、自分の頭で考え、行動するためのきっかけになるはず。

「◯年後には〇〇が地球上からなくなる」など、まだ起きていない未来を推測したニュースをみて、暗い気持ちになってしまう方も少なくないと思う。しかし、中にはそのような未来を食い止めるために行動に移し成功している事例があったり、知らなかった生き物の生命力を発見したりと、日々新しいデータや結果が更新されているのだ。地球温暖化に限らず、日常生活のさまざまなことに対しファクトフルネスを実行してみると、自分の生活の中に潜む意外な真実を見つけることができるかも。

『15歳からの地球温暖化 学校では教えてくれないファクトフルネス』

内容:
書籍『15歳からの地球温暖化』では、一般に公開されているデータをもとに、地球温暖化の影響によって起こるといわれているさまざまな問題の実態を紹介。それがどれくらい危機的な状態なのか、観測や統計をもとにあらためて考えることができる。また、本書は中学生や高校生でも読めるように、データや科学的知見をわかりやすく説明されており、「SDGs」「COP」などニュースでよく目にする言葉の解説もしているほか、「なぜ、地球温暖化の誤った定説や情報が広まってしまったのか」なども紹介されている。

著者:杉山大志
発売:2022年1月21日(金)
定価:1,540円(本体1,400円+税)
判型:A5判
発売元:株式会社 扶桑社
購入:Amazon / 楽天ブックス

著者:杉山大志( すぎやま・たいし)
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。東京大学理学部物理学科卒、同大学院物理工学修士。電力中央研究所、国際応用システム解析研究所などを経て現職。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、産業構造審議会、省エネルギー基準部会、NEDO 技術委員等のメンバーを務める。
産経新聞「正論」欄執筆メンバー。著書に『「脱炭素」は噓だらけ』(産経新聞出版)、『SDGs の不都合な真実』(編著、宝島社)、『地球温暖化問題の論考—コロナ禍後の合理的な対策のあり方』『地球温暖化のファクトフルネス』『脱炭素のファクトフルネス』など。

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