さかなクンも「元気な海」と絶賛した、生態系豊かな奄美・大島海峡を学ぶシンポジウムを詳しくレポート!
白化したサンゴが生き延びるほど健康度が高い、大島海峡のサンゴ礁
3番目の登壇は、琉球大学にてサンゴの研究を行い、日本自然保護協会にて日本の海の保護活動を担当している安部真理子(以下、安部)氏による、「世界の海の今と大島海峡」のお話。
安部氏は、グレードバリアリーフで発見されているサンゴの種類が350種に対し、日本は琉球列島だけで400種の種類が発見されており、北に流氷、南にサンゴ礁をもつ多様性に富んだ日本の海の豊かさにも触れた。そして、サンゴの生態系や白化のメカニズムについても説明。その上で、「健康な状態を維持しているサンゴは白化しても元に戻る確率が高い。健康なサンゴを守るためには、陸からの赤土や化学物質の流出を防ぐこと、特定の生き物だけを取りすぎないなど生物多様性を維持することが大切」と述べた。
そして、「大島海峡のサンゴ礁は健康度が高く、瀬戸内町・西古見で白化が発見されたサンゴ礁が生き延びていることが確認されている。また、ツツコエダナガレハナサンゴ、カナボウヤギスナギンチャクなど多くの新種・貴重種がまだまだ発見されている可能性に満ちた海である」と大島海峡の海の素晴らしさを紹介。
そして最後に、深海の女王と言われる著名なアメリカ人海洋学者シルヴィア・アールの「すべての人がすべてのことをできるわけではない。だが、すべての人がより良い方向にする何かをできる。(No everyone can do everything, but everyone can do something to make difference. )」という言葉を紹介し、「まずは、海や海の生き物に関心を持ち、海に行ってみよう。そして、自分に何ができるか考えてみましょう」と集まった瀬戸内町民へ呼びかけた。
「海を守る会」今の取り組みと今後行っていきたいこととは
登壇と同時に、「みんな一回立って背伸びをしましょう」と言ったのは、奄美せとうち観光協会理事瀬戸内町海を守る会会長でマリンショップ「ダンデライオン奄美」代表の祝隆之(以下、祝)氏。集中力が切れてきた子どもたちは、パッと立ち上がり思い切り背伸びをした。瀬戸内町出身である祝氏は、自身が会長を務める「海を守る会の取り組み」について話した。
まず、1980年に漁師ダイバーであった迫田藤雄氏によってスタートしたという「海を守る会」の現在の取り組みについて紹介。主に、サンゴの上にアンカーを落とさないようブイの設置、リーフチェック活動、水中清掃活動の3つの取り組みを行っているという。紹介時には水中清掃をしている様子、イルカやサンゴ、ウミガメなど大島海峡で見ることができるさまざまな海の映像をスクリーンに投影。参加者全員その映像に釘付けになっていた。
また、瀬戸内町の子どもたちに海の価値を知って欲しいという想いから「海を守る会」が新たに行っていきたいことを発表。安全で楽しいシュノーケル体験をしてもらい、大島海峡の素晴らしいサンゴや魚に出会えるポイントでの観察会の開催、豊かな海を守るためのプラスチックごみ回収などのビーチクリーニングを通して、ごみがどのようにして環境を破壊するのか、「自分たちに何ができるのか?」などをテーマに各学校や集落ごとにワークショップの実施を上げた。これは、「楽しい」から環境問題を考えてもらえたらいいな、という祝氏の想いが込められている。
さかなクン、瀬戸内町で出会った魚のクイズを出題!
最後は、子どもたちが会いたくてたまらなかったさかなクン。スクリーンにぶつかるというハプニングがありながら勢いよく登場!実は、このシンポジウムの2日前にNHKの番組『ギョギョッとサカナ★スター』の撮影で瀬戸内町に来ていたということで、その時に出会った魚や、過去に園山氏と潜った時に見たふぐのお話など、自身で描いた絵をスクリーンに投影しながら説明。「瀬戸内町の海が大好きで、瀬戸内町に来るのはギョ回目(5回目)です」と大島海峡の魅力を語った。
その後、さかなクンによる瀬戸内町で出会った魚のクイズがスタート!まずは、ヒレナガカンパチ、タカサゴヒメジ、アマミホシゾラフグの絵を描く。1分経たないうちに魚1匹描いてしまうさかなクンのパフォーマンスに会場も大盛り上がり。描いている間も、その魚の名前の由来や特徴をわかりやすく説明。子どもたちもその様子に興味津々の様子。そして3匹描き終えたところで「この中でお片付けするのが得意なお魚は?」とクイズが出題された。
さかなクンの格好をした男の子が当てられ、アマミホシゾラフグと回答し見事正解!絵がプレゼントされた。と思いきや、実はどの魚を当てても正解だったというオチがさかなクンらしい(笑)。ちなみに、それぞれの正解は、カンパチは奄美大島の方言で「そうじ(=掃除)」、タカサゴヒメジも奄美大島の方言で「カタース(片付ける)」、ミホシゾラフグは「ふぐ(すぐ)片付ける」というギョやじギャグでした。
登壇者5名の「夢」とは?
最後は、子どもに向けたシンポジウムということもあり、司会進行のWWFジャパン小田倫子氏より登壇者5名に向け「みなさんの夢はなんですか?」という質問が投げかけられた。
園山氏
「アマミホシゾラフの研究にずっと携わってきているので、解明したいという気持ちはありますが、それだけでなく、自分がやっている研究に影響を受けて地元の方が解明に向けて動いてもらえると嬉しいです」。
横山氏
「今までいろんな研究でいろんな地域に行き、新しいことや新しい人に出会って刺激を受けてきた。でも、そのためには、みんなが仲良くしないとできない。だから、みんなと友達になって仲良くなるのが夢」。
安部氏
「現在90歳ぐらいの方に、“若い頃はサンゴをバリバリ踏んでもそれでも次の年には無事元の戻っていた”という話を聞いたことがあり、自分がサンゴ礁に行き始めたときはそれほど健康なサンゴ礁はもうなかったので、いつか出会いたい」。
祝氏
「先輩たちから預かっているサンゴを次世代の子どもたちにつなげていくこと」。
さかなクン
「瀬戸内町のみんなが地元の海を大切にしているから本当に素敵な自然があると思う。そして海を守るのも大切だけど、壊さないことも大事。夢は、奄美の海がいつまでも綺麗であることです」。
とそれぞれの夢を語った。
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