ダイビングインストラクターの価値を証明したい①〜コロナ禍こそ、未来をデザインするダイバーが活躍する街〜

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credited by Pexels Irene Lasus

海はつながっている。

「地球3分の2が海。ダイビングはその3分の2の世界で繰り広げる最大規模のレジャーなんです」と、インストラクター時代に何度話してきたことか。
それくらいダイビングは、世界とのつながりを感じられる海での遊びであった、ほんのつい最近までは。

そして、今、世界中が「新型コロナウィルスパンデミック」という大きな問題を抱えたことで、海は繋がっているという事実だけでなく、自分たちの生活がどれだけ世界中との繋がりから成り立つ依存社会かを痛感した。

僕たちの住む日本も、観光立国をかかげ、インバウンドの推進を強化し観光産業を盛り上げてきていただけに大きな経済打撃を受けているのは一目瞭然。
その結果、地方創生の切り札として期待される観光産業も、コロナ感染への恐れから、地元住民と観光客との間で難しい時間を過ごしている。

とはいえ、コロナ不安はいずれ必ず終息していくだろう。
そして、コロナ前の日常には戻らないとしても、また経済活動の通常化や地方創生などの課題解決が進む状況は戻ってくるはずだ。
観光需要も高まる時は必ずくると信じている。

しかし、大きな問題の一つは、いかにその時、優良な事業者(ここではキャリアがある経験豊富な事業者を指している)がこの困難を乗り越えられているのかということだ。

特にダイビング産業の大きな財産である人材。

つまりダイビングインストラクターだ。
海を見続け、その街に住み続けてきたダイバーが持つ多くの知識と経験は、決して無駄にしてはならないだけではなく、何より人の経験に変わりは効かない。

そんな事態が起こらないためにも、僕ら(オーシャナ)に出来ることはないだろうかと考えていた。
緊急事態宣言が出たばかりの時、これまで一緒に苦楽を共にしてきた仲間から「カメラマンや現地のイントラの力になりたい!」と持ち込まれた「オーシャナライブ」企画には心から共感したのを今でもはっきりと憶えている。
そして、その企画は手前味噌ではあるが大きな盛り上がりを見せた。
「想いとストーリーから始まる企画の力」を改めて実感した瞬間。

オーシャナライブに関する記事:https://oceana.ne.jp/live_01

その時期と同じ頃、オーシャナが沖縄での地方創生やSDGs達成に向けて連携を取っている、JTB沖縄の片瀬さんと僕らはミーティングを進めていた。
片瀬さんとは、環境保全と経済活動を高次で融合させ、持続可能な地域づくりの基盤を構築していく事が、SDGsを原動力とした地方創生実現への近道である、とよく話している。

『この窮地を好転させるレバレッジポイントはないか?』
そんな自らの問いに僕らが出した答えは「潜水士資格をもちレジャーのインストラクターとして活躍してきた地元事業者による海底清掃」だった。

しかし、ただの海底清掃ではない。
求められているのは、「経済のV字回復につながる」につながる海底清掃だ。

僕らは次の3つを大きなポイントとして定めた。


・地場産業の見直し、地域産業のリブランディング

・マリンレジャーをはじめとする観光は「安心・安全・環境」こそが価値につながる

・行政(自治体)・民間(地元事業者)の連携の強化。持続可能な観光地であるために、目指すべき目標設定の共感

これらを達成させる為には一番大切な考えとなったのは『支援』と『開発』の両輪で動いていくこと。
今の状況が苦しいだけに、どうしても『支援』の文脈が強くなってしまいがちだが、前述しているように必ずコロナの終息はやってくるのだ。

しかし、その時までなんとか事業を延命していたとしても、その後の仕掛けを行っておかなければその時に資金的な投資は難しい状態であるのは明らか。
だからこそ『支援』と『開発』の両輪は必須条件だった。

自治体目線でいくと、ビーチリゾートを売り出している地域では観光が主幹産業になっていることが多い。
そして、その観光産業のコンテンツの目玉をダイビングが担っていることも少なくない。

ところが、そのような地域でも多くの自治体ではダイビングを目的にしてくる観光者数やダイビング事業者数、お客様の消費単価などのデータを持っていない。
つまり、どれだけそのエリアでダイビングがキラーコンテンツになっているか?というエビデンスがないとうことになる。

一方、ダイビング事業者の多くが自治体側の目指す街運営(街の振興計画)を認識していないことも多い。
紛れもなく、僕自身もそうであった。
あれだけ通った和歌山県の白浜町の長期振興計画でさえ気にしたこともなかったのだ。

僕はこの連携こそが、地域の発展とダイビングインストラクターの価値を高める最大の要素だと前から思っていた。
それは、日本の取り組む課題、地方創生にもつながると信じているからだ(これは次回にもう少し詳しく)そして、この想いと考えは見事にフィットして、ついに動き出したのである。

最初に動き出したのは沖縄県宜野湾市。

地元事業者からの働きかけが市を動かした。
発想からスタートまで早かったのも素晴らしいが、これを機に地元ダイビング協会が立ち上がったり、今後も市との連携は継続して行われていくという、今までなかった動きになっていることが大きな成果だ。

関連記事:【ポストコロナに向けて】沖縄県宜野湾市でプロダイバーたちによる海中清掃など「美ら海クリーン活動支援事業」が開始!

また、SDGsモデル都市に認定されている沖縄県恩納村でも同様の取り組みが行われ、海の資源を観光コンテンツとして持続可能にしていく為にも現場のインストラクターの存在が重要である機運になってきた。さらに恩納村では、国連環境計画(UNEP)の推奨するGreen Finsプログラムの導入も予定。
これにより一層、ダイビングがインバンド客にもキラーコンテンツとなることへの期待感が広がるばかり。

関連記事:日本初!沖縄県恩納村がグリーン・フィンズ(Green Fins)導入〜協力ダイバー(アセサー)募集中〜

他の地域でも同様の動きが進み始めている。

日本は海に囲まれた国である。
僕は日本の海の豊かさは「食」だけではなく、「アクティビティ」としても世界に誇れると信じている。
海の豊かさ、美しさ、自然の偉大さや大切さなどを、ダイビングという活動(体験)を通じて、経験価値を提供できるダイビングインストラクター(ガイド)の価値、ポテンシャルは非常に大きい。
世界中がコロナ不安に包まれている中、自治体とダイビングインストラクターがコロナ終息後のダイビング産業の発展をデザインしている。

「今はダイビングに行けなくても、必ずまた行ける時まで待っている。その時にはさらに世界に誇れるダイビングエリアになっている」と。

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PROFILE
1981年生まれ、埼玉県出身。
学生時代にライフセーバーを経験し、2003年にダイビングライセンス“BSAC”インストラクターを取得し、2012年インストラクタートレーナーになる。

ダイビング歴としては、1,000人以上の講習実績と5,000本以上のダイビング経験を持つ。

2010年に独立、東京・大阪・沖縄にダイビングショップを経営する傍ら、2015年からオーシャナの運営に参加。2016年から奄美大島(鹿児島県大島郡)にある障害者向けのマリンアクティビティ施設の運営に携わり、2017年には国連環境計画日本協会(日本UNEP協会)の事務局長を務めた。

2019年よりSDGsモデル都市(内閣府認定)である沖縄県恩納村のSDGs推進運営に携わり、国連環境計画UNEPがグローバルに推奨する環境に配慮したダイビングプログラム、「グリーンフィンズ」を同村に日本初導入。

2020年、これまでの経験を活かし、海と環境から「生きるチカラ」を学ぶ「BLUE School」プロジェクトを本格始動。
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