微妙なディズニーシー

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日曜日は、恒例の江の島バーベキューの予定だったが、
雨の予報であえなく中止。

入稿も終わっていないので「仕事でもするか……」と落胆していると、
天使のメールが。

「ディズニーランド行きませんか?」

とある女性が招待チケットを持っているとのことで、
喜ばしいことに僕を誘ってくれた。

先日の江の島といい、何とグットタイミング!
あまり親しいとはいえない間柄だが20代女性のお誘い。
断る理由があるだろうか? いやない。

何か始まるかもしれないし、始まらないかもしれないのだ!

ダイバーとしては「ランドよりシーがいい!」という
僕のワガママを聞いてくれた彼女。何か始まるかもしれない。

でも、忘れていた。
ネズミ王国は初めてのデートで行くものではないことを。



盛り上がる絶叫系のアトラクションは「タワーオブテラー」くらいで
あとはすべて微妙。
つまり、リアクションが非常にとりずらいのだ。

接吻済みのカップルや仲のいい女友達同士のような成熟した関係なら、
その微妙さを笑えばいいし、ネズミ王国の雰囲気をまったり楽しめばいい。

しかし、こちとらお互いよくわらない者同士。
「デートだから手つなごー」と手を出したら、アハハと軽く拒否られた者同士。
(注:ここで完全に自分を見失いました)

「海底2万マイル」でタコに襲われ、「大変です、大変です」とアナウンスされても、
「シンドバット」で人形が踊っている中を船で流れていっても、
リアクションが難しいことこのうえない。いや、恋人同士なら楽しめるけどね。

さらに、困ったことに、
友人から「赤フンで潜ったりしているんだよ」と聞かされていた彼女は
ダイバーでもなくよくわからないけど、
とりあえず僕を“おもしろい人”という記号でとらえているらしい。

なので、がんばりましたとも。はしゃぎましたとも。
「うわっ海底人!」、「あ、あそこにチャンドゥがぁ!」

先生、はしゃぎ方の正解を教えてください。
愛想笑いの正解は彼女の顔に書いてあるので大丈夫です。

なんだ、この微妙な空気は。おまけに大雨。
やばい、何も生まれないかも。
それにしても誘っておいて、
一緒に空気を作り上げる協力をしてくれないのはなぜだ。
すでに三行半ってことか?

完全にテンパッた僕は、一発逆転を狙う。
何とか笑っていただかなければいけない。
そして「インディージョーンズ」へ。

以前に乗ったことがあったので、
写真を勝手に撮られて売りつけられるシステムと
写真を撮る場所は把握済み。

自分たちの番になると、運の悪いことに一番前。
すかさず僕は「怖いので一番後ろにしてください」とリクエスト。
怪訝そうな彼女。そりゃそうだ。

暗闇の中を激しく揺れながら走る車。
僕は必死に安全バーにしがみつき、
そして徐々に服を脱いでいく

よいよ写真撮影ポイント。

すっかり裸になった僕がポーズを決めた瞬間、
ピカッと光り撮影が終わったことがわかる。
※http://diving‐commu.jp/ceditorblog/item_1323.html
(合成じゃないよ)

僕は慌てて服を着て、何食わぬ顔をして車から降りる。
彼女もインディージョーンズでちょっとテンションが上がっている様子。
あとは、写真のサプライズできっと笑顔になること間違いなし。

モニター画面を見ると、自分的には完璧な写真が写っている。
ふむふむ。よは満足じゃ。
さぞ彼女も喜んでいるだろうと顔をのぞきこむと、
見たこともない微妙な表情。怒っているのか笑っているか。
竹中直人かっ!と突っ込みたかったがグッと飲み込む。

皆さんは、修復不可能という言葉を知っているだろうか?
それは、修復することが不可能ということだ。

足早にインディージョーンズを去ろうとする彼女を引き止める。
何を言うのかとこちらを見る彼女。

「写真……買ってもいい?」

今度ははっきりと“怒”の表情を読み取ることができた。
しかし、これだけがんばった成果を残しておかないわけにはいかない。

この1枚でクスッと笑って3秒くらい幸せになる友人がいる大事さを
なぜ理解してくれないのだろう。
イチローだって「記憶より記録に残さなきゃダメだ」って言ってたよ。

写真の現像が上がると、現像係の人が販売係の人に耳打ち。
そして、販売係の人が「この写真で……よろしかったですか?」

「よろしかったですとも!」

販売員は続けて
「あの……他のお客様も写っているので、今後はご容赦ください」

勝手に撮って売りつけるシステムのくせに何を言う!
むしろ、買ったこちらに感謝してほしいくらいだ。

しかし、そのあと販売員さんは、こっそり
「でも、こういうの大好きです(笑)」とひと言。
どうしよう、こっちの子がいい。

その後は当然グダグダな感じで、
早々とネズミ王国を退散したのでした。

あとから友人に聞いたところによると、根本的な原因として、
彼女はディズニーランドに行きたかったらしいのだ。
なんと25周年だったらしい。い、言ってくれよ!

監督。敗因はよくわかりませんが、
最初に手をつなげなかったことで完全に調子が狂った模様です。
これまでのデータ、いやデートでは、
当たり前のようにまず手をつなぐことから始めていたのに、
見送られたことで動揺が走りました。

てか、手をつながないデートなんてあったのか!
ま、いろんなツボが違ったということで……。

それにしても、やっぱりネズミ王国は接吻してから行くところかなと。

おしまい。

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writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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