とある女々しい男
今の君はなんて素敵で愛おしいのだろう。
なぜ、今出会えなかったのか。
でも、今君の瞳が素敵なのは、
僕との無駄な駆け引きや慢心、怠惰の末に別れ、
今になって気づき、正直に真っ直ぐに見つめているから。
モテ期に調子に乗ることは、素敵になるための大事な時間だったけど、
当時の僕を不安にさせ、傷つけた。
「この男性(ひと)でいいのかしら?」という疑問は当然過ぎるほど当然だけど、
その懐疑的な視線は僕の心をえぐった。
当たり前が当たり前でないことに気づくには、
一度、当たり前を手放す必要がある。
そして、気づいた君はとても素敵な女性になったけれど、
今、気がついても、もう遅い。
君と同じような時を経て、すでに素敵になっている女性(ひと)に出会い、
そして、彼女は僕の傍らにいる。
でも。
今、傍らにいる人は素敵過ぎるほど素敵だけど、
素敵じゃない時を共に過ごし素敵になった君は、
重ねた時間の分だけ深く深く素敵。
そして、重ねた時間だけでなく、君を思った熱量は、
過去のものではあるけれど人生で最高。
それはすでに記憶ではあるけれど、
人は現実だけでなく、記憶だけでも生きていける。
現実が大事なのは獣でもわかる。
でも、せっかく人であるならば少しは記憶に生きたい。
谷崎潤一郎の「春琴抄」は、
叶わぬ恋をした使用人が、顔に熱湯をかけられて醜くなったお嬢さんの
美しかったころの面影を忘れないために目を潰すという話。
お互い見えなくなったことにより心が通じる2人だが、
それは、美しかった頃、初めて出会ったときの眩い記憶があってこそ。
もっと下世話に、どこだかが行なったアンケートを引っ張り出せば、
最も離婚率の低いカップルは、いずれかが一目惚れというケース。
君は僕に興味がなかったけれど、僕は君にふた目惚れ。
もちろん、一目見たときにかわいいと思ったけれど、
話したときにもっともっと好きになった。
手を変え品を変え、請うて付き合った女性(ひと)。
その最初の瑞瑞しい気持ちの手触りは、今でも、
そしていつまでも忘れることはない。
でも。
今、傍らにいる素敵なひとは疑いのない真っ直ぐな瞳で僕を見つめている。
この瞳を裏切ることに何の意味があるのだろうか。
でも。
素敵になった人の、後悔を含んだ、懇願にも似た真っ直ぐな瞳はどこまでも愛おしい。
今、この瞬間、世界で僕の割合が一番大きいのは間違いなくこのひと。
でも。
そんな一瞬の感情など……でもでも、のスパイラル。
頭で考えるのも心に従うのも、そして、
素敵になったひとを抱きしめにいくのも、素敵なひとに寄り添う覚悟も、
コイントスで出た目に従うほどの違い。
でもでも、コイントスで出た目を見られずに、
手と手を重ねたまま身じろぎもせず。いや、できず。
ひどく酔っ払ってます。たぶん、目が覚めたら赤面します。消すかもです。
華麗にスルーしてください……。
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