ガイドは見た!激流ダイビング。その時、カツラは!?
笑いとは緊張と緩和。
不謹慎だけど笑ってしまう、いや、不謹慎だからこそ人は笑ってしまいます。
そんな海のお笑い話をとあるガイドさんにお聞きしました。
不謹慎ですが、笑ってお許しください……。
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その日、やってきたゲストのAさんに何だか違和感を覚えました。
おかしいと思いながらもセッティングのため手元に視線を落とした瞬間、
「はっ!」と気が付き、顔を上げて思わずAさんを凝視。いや、正確には頭のほう。
「の、のってる!」
そう、Aさんは誰がどう見てもカツラなのでした。
マスクを装着するのもはずすときも素早く、
ストラップでカツラをずらすようなヘマはしません。まさに、ゴッドハンドでした。
Aさんを含む10名以上のダイバーでエントリー。
全員ベテランダイバーだったこともあり、
少し流れのあるポイントで潜ることになりました。
勘のいい人は、この時点で何かが起こりそうなかおりがプンプンしてきていることでしょう。
楽しいファンダイブも終盤に入り、安全停止の時間。
皆でボート後部のステップから吊り下げてあるロープにつかまっていると、
流れがどんどん強くなっていき、遂には鯉のぼり状態になるほどでした。
皆、それはそれで楽しめるベテランぞろいだったので、
安心していたのですが、「はっ!」として、思わずAさんを見つめてしまいました。
いや、正確には頭のほう。
他のゲストダイバーも皆ベテランぞろいで流れなどへっちゃら。
余裕があれば考えることは一緒です。
はからずともみんなの視線は一点に集中していました。
思いはひとつ「カツラは大丈夫なのか?」という心配。
いや、スポーンとカツラが流されるという奇跡への
淡い期待がなかったといえば嘘になるでしょう。
しかし、その時すでに小さな奇跡は起きていました。
まさに、全員の気持ちと行動がシンクロしたのです。
しばらくして、周りを見回すとなんと、
一人を除く全員がカツラに注目していたことを、一人を除く全員が同時に気づいたのです。
カツラの人工頭髪は、強い潮流に洗われるソフトコーラルの触手のように
プルプル震えながらもしっかりと定位置をキープし続け、
最初のままの違和感をもキープしていたのです。
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これは、単なる笑い話でなく、禿しい……ゴホン、激しい流れの中でも、
カツラでダイビングができるという“明るい”話題かもしれません。
実際問題、カツラを付けたままのダイビングは可能なのでしょうか?
「かつら スキューバダイビング」のキーワード検索で一番上位の
かつら・ウィッグの専門店「ACT Japan」の狩野喜彦さんによると、
その答えは「可能です」
※編注)かつらとウイッグの違いについて。「明確な違いはない」、
「部分的なもの、オシャレとして付けるものをウィッグと呼ぶ」、
「カツラのネガティブなイメージを取り除くための言葉としてウィッグ」などが一般的のよう。
「どのような製品でもスイミングキャップのようなものを被れば大丈夫ということになろうかと思いますが、キャップなしでダイビングに使えるウィッグとなりますと、すべてのメーカー品が使える事にならないと思います。可能なウィッグは自毛にしばって取れないようにするか、強力なテープを使用するという2通りの選択になるのではないかと思われます」
どちらがオススメでしょうか?
「どちらが良いのかは、お使いになる個人の見解となりますが、
弊社製品は、テープを使用します。
ただし、テープ装着箇所に髪の毛がない事が条件になります。
あとは、個人に合わせた製品の作り方や海水で濡れても髪の毛が絡まない髪の毛の選定法など細かい説明がありますが、装着方法をお問い合わせ頂ければ、弊社製品ならば十分に可能という回答となります」
同じように他社にも問い合わせたところ、
「編み込みなら可能」との回答。
いずれにせよ、頭に載せずに、編みこんだり、強力テープで貼り付ければ、
かつらやウィッグでも十分にダイビングは可能ということのようです。
正しい装着方法と「急に増える」とかにさえ気をつければ、
かつら・ウィッグ愛用者でも十分にダイビングを楽しめて、
少なくともこのようなネタになる心配はないようです。