ミノカサゴが爆発的に増えている海、その原因と駆除の方法とは?

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撮影:岡田裕介

撮影:岡田裕介

1980年代、ミノカサゴが人の手によってカリブ海へ

1980年代に誰かがカリブ海のどこかに持ち込んだミノカサゴが、わずか20年で、カリブ海、メキシコ湾沿岸、さらには北アメリカ沿岸を北上して、ノースカロライナ州周辺でも爆発的に増えているようであります。
「史上最悪の外来生物の侵略」と言う生物学者すらおられるようであります。
その侵略の範囲たるや、日本から沖縄、フィリピンを含むぐらいの途方もない広さの水域です。

やどかり仙人コラム

このような外来種が急激に繁殖するのを、インベージョンというのだそうであります。

アメリカではアジア原産の鯉の仲間であるレンギョやソウギョが、やはりミシシッピ川全域で猛繁殖。
ビルマニシキ蛇などという巨大な蛇もこれまた異常繁殖で、ただただ殺せというコンテストを鳴り物入りでやっております。

なぜミノカサゴはカリブ海で異常繁殖したのか

さてミノカサゴ(ライオンフィッシュ)でありますが、あまりのその繁殖スピードは、とても生息環境条件だけでは説明がつかないとして、いまや異常繁殖の新たな中心地、アメリカ東沿岸部の大学の先生方が解剖して 繁殖能力のなぞを解こうとしておるようです。

しかし、もともとミノカサゴの繁殖能力がそれほど強いのであれば、そもそもの生息圏の太平洋西部やインド洋といった水域でも爆発的に増えることもあるはずですが、なぜカリブやメキシコ湾などでこれほどの異常繁殖をしているかの説明はつきそうもありません。

一つの説に、これらのインベーダーを捕食するプレデターを獲りすぎた(SP映画のタイトルの常連さん)、つまりサンゴ礁の生態系の番人のサメやハタなどを獲りすぎたのが原因の一つとも言われております。

そう言われて慌てて、これらの水域では大型魚を保護し、サメなどにミノカサゴを餌付けして、言葉を変えればトレーニングして、ミノカサゴハンターになってもらおうなんていうキャンペーンが繰り広げられておりました。

ミノカサゴを捕食する魚の数は無関係との説も

このインベーダーvsプレデターの関係、つまりサメやハタなどがいればミノカサゴは本当にコントロールできるのか、というのは外野席にいるヤドカリ爺の素朴な疑問でありますが、

ノースカロライナ大学の学者さんが、カリブ海のいろいろな水域の71のリーフで、この関係を3年以上もかけて調査した結果、その水域に棲む捕食魚の個体数とミノカサゴの個体数には、明白な関係がなかったのであります。

つまりその水域のプレデターはミノカサゴにあまり影響を与えていないということであります。
もちろんこれだけでただちにプレデターの負けとはいえませんが、すくなくとも、そのインベーダーの侵略を食い止める状況ではないようです。

現時点で効果が上がっている方法とは

いっぽう2013年の調査では、ダイバーに人気のあるベリーズのような保護された水域では、比較的ミノカサゴの数が少なく、これは大型の魚がミノカサゴを捕食するというよりは、水域の管理者がこまめにミノカサゴを獲っているせいらしいとレポートしています。

結局のところ、現時点では直接的手段(学者さん的表現ですが)、つまり一匹一匹つかまえて駆除するのがよいというのが結論であります。
ミノカサゴに食用価値があれば、世界中が食糧難の時代、話は簡単、こんな問題はあっという間に片付くだろうし、爆発的な繁殖などはなからおきなかったかもしれません。

いや食べれば、白身でおいしいとか。
その猛烈な繁殖力をいかして養殖したら、食糧危機目前の地球です。
少しは役に立つかも。

誰かがカリブのどこかにミノカサゴを持ってきた、まさにこれは人的環境破壊なので、その後始末を人間がするのは当然としても、海の自然が急速に衰えている時代に、最大のインベーダー人間の身勝手がいとも簡単に生態系を壊す、そのよい例であります。

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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