ナイーブすぎる、でもハイスペックなマンボウの雑学あれこれ
日本人で、「マンボウ」と聞いてそのイメージが湧かない、という人はほとんどいないでしょう。
キャッチーな名前と、もはや人をなめているとしか思えないほど愉快なフォルムもあってか、ダイバー、ノンダイバーに限らず、人気も知名度も抜群の魚なのではないかと思います。
近頃たまにネット上で話題に上がりますが、曰く「マンボウはとってもナイーブな魚である」らしいんです。
実はマンボウってストレスをかなり感じやすくて、皮膚がとっても弱い魚なんですよ。
そのため、水族館などでのマンボウの飼育はとても難しいと言われています。
例えば、皮膚があまりに弱いため、水槽の壁やガラスにぶつかってしまわないように水槽内に保護シートが張られていたり、消化不良を起こしやすいため、水族館によっては、時にはエサの中にビオフェルミン(!)を混ぜることもあったり。
飼育員の方々の努力のもと、マンボウは飼育されているのです。
日本には数多くの水族館がありますが、マンボウがどこにでもいるわけではないのは、そういった理由があるからなんです。
他の魚にはあまりないVIP待遇で飼育されているわけですね。
でも、このVIP待遇、決してやりすぎではないんです。
飼育があまりに難し過ぎて、沖縄の美ら海水族館では2002年のオープン前に10匹のマンボウが寄生虫が原因で死んでしまったというショッキングな事実もあります…。
(現在は、美ら海水族館でマンボウは元気に飼育されております!)
ちなみに、マンボウの飼育の国内最長記録は、千葉県の鴨川シーワールドで、1981年12月から1990年3月まで、約8年2ヶ月も生きた「クーキー」君が保持しています。
そんなマンボウ、一度の産卵で約3億個の卵を生むことが確認されています。
とんでもない数ですが、その中から成魚になるのは、わずか1、2匹と言われています。
なるほど世界の海がマンボウだらけになってしまわないわけです。
成魚になる前の稚魚の内に捕食される、等の原因で数がグッと減ってしまうマンボウですが、マンボウの稚魚も黙って食べられている訳ではありません。
こちらの写真をご覧ください。
グロテスクな金平糖ではございません。
マンボウの稚魚でございます。
いかついトゲが体中から生えています。
成魚のチャーミングな外見からは想像がつきにくい、いかついフォルムだと思いませんか?
彼らはこうして自分が弱い稚魚の内は体中からトゲを生やすことで身を守っているわけです。
これなら、捕食者たちからも十分身を守れそう!
と、いう気もしますが、実際多くの稚魚が捕食されてしまうのは、このマンボウの稚魚自体が体長5mm程度であるため、大きい捕食者にはトゲもあまり関係ないのです。
人間が金平糖のデコボコをあまり気にしないのと同じようなものでしょうか…。
飼われたらビオフェルミンを与えられたり、野生でもトゲを生やしてみても捕食されたり、どこか不憫な気もするマンボウですが、マンボウも黙っているばかりではありません。
実は、以前、マンボウが人間の男の子を気絶させた、という事件が発生しているのです。
事件の経緯はこうです。
2005年、イギリスはウェールズにて。
4歳の男の子とお母さんが海でボートに乗って遊んでいると、水面近くを泳ぐマンボウが見えたそうです。
ウェールズではなかなか見られることが少ないというマンボウに、男の子も興味津々。
息子がもっとよくマンボウを見れるようにと、お母さんがボートを近づけたちょうどその時!
なんとマンボウが水面から飛び出し大きくジャンプしたというのです。
あまりの突然の出来事に驚く暇もなく、運悪くマンボウは男の子の頭上に落下、見事(?)直撃したそうです。
この事件では男の子は気絶だけで済んだそうですが、件のマンボウは体長90cm、重さ30kg。
決して小さいとは言えませんが、マンボウは大きいもので体長3m、重さ1tにまで及ぶものもいます。
マンボウがそこまで大きいものでなくて、男の子が気絶だけで済んで、本当によかったと思うべきではないでしょうか…。
ちなみに、何故マンボウが水面近くにいて、しかも水面からジャンプしたのかと言うと、これらのマンボウの習性については諸説ありますが、マンボウには水面で水平になることで海鳥に寄生虫を食べてもらったり、また、水面から飛び海に落ちるときの衝撃で寄生虫を落とすため、だそうです。
寄生虫対策で水面にいたわけですね。
ユニークなフォルムで、その生態もどこか抜けている感が否めないマンボウですが、あまりマンボウをなめていると、あなたも、あわや気絶させられるかもしれませんよ…。
そう、マンボウにね…。