バディシステムは終わった!? 超スクーバ都市伝説

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文字単価の昇給を快諾してくれた男前で男気溢れる寺編集長による今回の原稿の指定テーマは、バディシステムについて、である。

困った。

このテーマは、以前にも軽く書いている。
再度書くとなると、必然的に重くて歯の衣を脱いだヌード原稿になる。
きっとまたいろんな人に叱られるんだろうーなぁぁぁ。

が、カーストにおける上の民で、原稿料の恩人でもある寺編集長の指令は絶対。
だから、ここからの話、全てが、超スクーバ都市伝説としてお読みください。
お願いです、1分たりとも、その事をお忘れなきようお願い致します。

と、前置きして本題。
まずは、毎度ながら、私が展開させていただく全てのお話の前提をお知らせしておきます。

私は、ダイビングにおける最も基本的なスキル、器材、および器材構成は、テクニカルだのレクリエーションだのとは関係なく、ひとつの原則に則っているべきと、考える。

それは「あるダイビングを行なう際は、そこに起こりうるトラブルやアクシデントに対しての確実な対応をまず用意するべし。その上で、なるべく効率的、かつ、快適な活動が可能であるよう精進すべし」という原則。

そして、ここには、お馴染みの以下の但し書きが添えられる。

  • その1:器材は壊れるモノと思うべし。
  • その2:人はミスを犯すものと思うべし。
  • その3:突然の想定外の自然現象及び、複数のアクシデント、トラブルが同時に起こり、進行する状況までは「確実な対応」の対象には含めない(※これに関しては、いつかどこかで詳しく説明するような気がする)。
  • その4:結果的に、効率的、快適な活動が不可能となった場合も、生還という最後の一線にはとことんこだわる。

以上。

ということで、バディシステムだが、まずバディシステムありきでその事について考えるというスタイルは一旦どこかに置いときましょう。

自分撮りするバディ二人(撮影:越智隆治)

単独潜水するどこかの誰かさんで
バディシステムを考えてみる

バディシステムが真に正しいシステムで今のレクリエーショナルダイビングにおける不可欠の必須アイテムなら、その必然を裏付ける揺るぎないバックボーンがあるはず。

よって、バディシステムなんて全く知らなくとも、結局そこに行き着いて結末してしまうはずだ。

逆に、もし、無理なく異なる結末にも行き着くようなら、バディシステムは、結果的に現時点のレクリエーショナルダイビングにおける唯一無二の正しい回答とは言えなくなる。

例えばこれは、男は立ってシッコする、という既成概念から一旦離れ、西洋式の腰掛け便器において「周囲を汚すことなくクールにオシッコするにはどうするべきか」という課題を考えた時、「男子も腰掛けてオシッコすれば!?」という新たな男子のオシッコのお作法が生まれた経緯を彷彿させる出来事となるかもしれない。

起立系シッコと、腰掛けシッコは両立の可能性があるが、しかし、周囲を汚さないという点に関しては、後発の腰掛けシッコが有利、と、私は思う。

私、年の分だけ、オシッコに関してはベテラン。
よって、そのあたりの判断能力は一定のレベルを超えているはずだ。

つまり、バディシステム以外の発想なしでオシッコに励むと、周囲に飛沫を散らして、母上とか、奥様とか、彼女とかに「またぁ! もぉぉ、嫌だァ~!」と叱られる状況からの脱却の難易度を、自ら上げることになりかねない。

そうならないためも、まずはバディシステムに固執しないところから話をスタートさせてみよう。

ということで、これから、試しにどっかの誰かにバディなしの単独潜水を行ってもらうことにする。

使用器材には、一般的なダイビングで起こりうる可能性のあるトラブルが起こるかも、という裏の筋書きを用意したが、これは今回単独で潜るどっかの誰かには秘密だ。

ここで注釈を加えると、最近の器材は極めて壊れにくいが、器材である以上、絶対のトラブルゼロは、ない。

例え1万回に1回のトラブル率であったとしても、これから行なうダイビングでその1回が訪れない保証はない。
その後9999回のダイビングがトラブルフリーであっても、それは直面した1回のトラブルの解決には何の貢献もしない。

と、そんな注釈をしている間に、すでに誰かさんの単独潜水はスタートしていた。

この誰かさん、かなりのベテランでスキルレベルも高い。
どこのツアーに参加してもガイドさんにとって安心できるゲストで、ツアー後の周囲からの評価も高い優良ダイバーだ。

ここからは、その誰かさん目線で話を進める。

ダイビングをスタートして最初の7~8分はとっても順調。
目指した根にも迷うことなく到着。まずは残圧を確認。無難な数字。

しかし、次に水深と時間もチェックしておこうとダイブコンピューターを見ると、あれ?数字が暴走していて何が何だか分からない(実際に経験有り)。

多分ここは水深25m位だと思うが、正確な水深も時間も分からないのは不安。
なので、今回のダイビングは緊急中止。とりあえず真っ直ぐ帰ることにした。

で、岸に戻るためにコンパスをチェックしたところ、ヤバ!針が落っこちていて方向が分からない(実際に経験あり)。

水深10mあたりまでは比較的急なスロープだったが、あとは非常にゆるい傾斜の地形で透視度も5mほどしかないから、地形から帰り道を推測するのは難しい。

今日は曇り。
太陽は見えず、太陽を目安とした方角推測もできない。

が、ここでいたずらに時間を浪費してもしかたないので、確証はないが、とりあえず岸だと思う方向に泳ぎ始めた。
水深がチェックできないので、ちゃんと岸の方向に進んでいるかは、ちょっと不安。

ということで、岸を求めてきょろきょろしていると、突然口に空気ではなく海水が!驚いて口元を探ると、セカンドステージがない!
オーバーホールしたばかりのセカンドのマウスピースが外れていた(実際に経験あり)。

とりあえず右出しのオクトパスをリカバリーして何とか呼吸を確保。

一段落して周囲を見たら、近くにダイバーがいる。
慌ててオクトパスリカバリーをしている自分を見つけたどこかのインストラクターが心配して様子を見に来てくれたようだ。

ラッキー!

とりあえず岸の方角を尋ねる。
自分の予想と同じで一安心。

岸に向かって再度泳ぎ始めようとしたした、正にその時だった。

インストラクターが連れていたゲストの一人が泳ぎ始めようとしてバランスを崩し、僕の顔を思いっきりキック!

そして誰もいなくなった。
残されたのは、マスクとレギュレーターを見事に吹っ飛ばされた、僕(実際に経験あり)のみ。

とりあえず必死にレギュレーターを探して呼吸だけは確保したが、バランスを崩して無意識に動いたのだろう、位置がずれたようで、周囲を手探りしてもマスクが見つからない(実際に経験あり。うねりの中のエキジットで、前のダイバーが全開キックのまま飛ばされてきて、私の顔面をフィンで往復ビンタ。マスクとレギュが綺麗に吹っ飛んだ。マスクはまんま行方不明になりました)。

もうこれは浮上しかない、と覚悟を決めた時、段々大きなってくる複数のボートの爆走音に気がついた(みなさん経験ありますよね)。

うかつな浮上はヤバイかも、と思ったが、なんてこったい!その時いきなりエアが吸えなくなった。
レギュレーターの中圧ホースが破裂したようだ(実際に経験あり)。

慌ててマウスピースのないセカンドステージをリカバリーしてプラスチックのフレームにかぶりついてみたが、破裂した中圧ホースからエアが一気に吹き出しているからか、やはりまともな呼吸は出来ない(実際に経験あり)。

そうこうしている内に残圧が…。
破裂したホースから吹き出すエアが急激に少なくなってきた…。

こーなりゃイチかバチかで浮上するしかないが、ボートとの接触ナシで今日の1日を終われるかは、神様次第だ。

僕は世界中の全ての神様に信仰を誓って緊急スイミングアセントした。

しかし、マスクなしで視界が不明瞭な上に、透視度も良くなく、曇り空で日差しもないから水深が20m以上の周囲は薄暗く、浮上スピードコントロールなんて出きっこないのはもちろん、自分がちゃんと浮上しているのかどうかさえ、定かではない、いったい俺が何をしたってい…例え話はここで終わり。

このダイバーが先行きは軽く心配だが、全ての神に信仰を誓ったのだから、きっとどこかの神様が何とかしてくれているでしょう。

それより注目すべきは、このダイビングで起こった様々なドラマだ。

バディシステムとはバックアップ

登場ダイバーのレベルは低くない。
トラブルがなければ、ナビゲーションも、残圧のチェックや水深・時間のチェックも抜かりはなく、問題児的な要素ナシ。

トラブルが起きた際も、すぐにダイビングを中止して岸に戻る決断を下したし、マウスピースが外れてもパニックにならないで呼吸源をオクトパスに切り替えたり、マスクがなくても水面のボートを認識し、浮上に対して慎重に考える等、スキル面、精神面でも文句のない優秀なダイバーだ。

しかし、結果的には、神様にすがる状況に追い込まれてしまっている。
神様や幸運に頼るのはダイビングにとって好ましい状況ではないのは言うまでもない。

ここは是が非でも、優秀なダイバーですら神様頼みに陥った原因を突き止め、対策に目を向ける必要があるが、しかし、そんな大げさな言い方をするまでもなく、原因は明確。

器材のトラブルに対する対策不足に尽きる。

水深や時間の確認、位置や方向の確認、視界や呼吸の確保はダイビング活動を行う上で欠くべからざる重要な要素。
直接的・間接的に、水中での生存・活動のベースとなっている。

よって、それらを司る器材のバックアップを持たず、トラブルが起きたら神様が出勤準備をすることになる状態はあまりに危うい。
ダイビングにロシアンルーレットのDNAが紛れ込んでいる状態だ。

そこでひとつのアイディアが生まれる。

同じ装備を持つ2人をひと組にして、互が互のバックアップとなるようなチームを基本にして活動すればいいじゃん!

重要な器材が1人に1つでは壊れたらそれで終わりだが、二人がチームで活動すれば、チーム内に壊れてない器材が存在し続けることになる。

二人でそれを共有して使えば、チームとしての水中活動の維持は可能だ(もちろんこうした場合の水中活動は、なるべくスムーズかつ素早くダイビングを終えて水面・地上に戻るためのものだ)。

そうか、それがバディシステムだ!

一件落着、めでたし、メデタシ、目出度し!!

ん?でも、これって本当にそれで一件落着?

と、そー思ったあなたは、賢い。

そう、バックアップ器材があっても、それがチーム単位で使いこなせないと、例えそれがダイビングを中止してエキジットするためだけの活動だとしても、結局、チームとしてのまともな活動は出来ない。でしょ!?

では、それを可能とするための必要な要素は?

バディシステムを機能させるのに必要なこと

最初に必要なのは、それぞれのダイバーが、「バディシステムとは、チーム単位でのバックアップのためのシステムである」という点を正しく理解していることだ。

そのためには前提として、器材は壊れる、人はミスを犯す、ダイビングは危険、という情報が正しく伝えられていることが必要だ。
現状の講習で、そんなこんなは正しく伝えられている?

二人で潜ると楽しいとか、チェックが二重に行えるから安心、という程度の説明では、かすかな正解が含まれているとしても、バディシステムの説明として完全に不完全だ。

次に必要なのは、バックアップシステムを活用した活動の実践的なトレーニングだ。

例えば、マスクを無くしたバディをエスコートしての浮上や移動、コンパスや水深計やダイバーズウオッチにトラブルがあった際は速やかにトラブルのないダイバーがリーダーとしてバディをリードするという意識と実践。

もちろん、エア切れが起きた時は、エアに余裕のある側がエア切れダイバーにエアを供給しながらの浮上や移動をスムーズに行えなくてはならない(スムーズでないと、カッコいい・悪いではなく、エア切れダイバー&ドナーの双方があっさり危険な状態に陥る可能性があるからこの部分の完成度の追求は物凄く大切だ)。

少なくとも、バディシステムをベースとした講習では、これらのトレーニングが行われていなくてはならない。さらに…

=ここからが非常に重要なポイントなのだが=

講習修了後のファンダイビングでも、本来、本格的なダイビングがスタートする前に、バディ単位でバディシステムが正しく機能することの確認が必要なハズだ。

象徴的なのは、エア切れの手順の確認だろう。

本格的なダイビングのスタート前に、浅い水深に潜って、実際にエア切れのサインを出し、スムーズなエアのシェアや、エアをシェアした状態での水中移動や水面までの浮上が確実に出来ることを確認しておくことは、バディシステムが有効に機能することの確認としてマストなはず。

特に指導団体が違ったり、習ったインストラクターが違って、オクトパスの使い方やエアシェア手順が同じでない場合は、水中でのシミュレーションによる手順の確認、すり合わせが不可欠だろう。
本番のダイビングはこの後にしか始められないハズだ。

特に、現場で始めて顔を合わせたダイバーとバディを組むなんて時にこれが省略されていたとしたら、それはバディシステムの本質を無視した、あるいは理解していないダイビングだ。と「私」は解釈する。

むしろ、バディシステムが危険を招く?

そして、本質を無視したバディシステムは、ある状況下では単独潜水以上の危険を招く可能性を持っている。

例えば、実際にバディがエア切れを起こして、スムーズに対応できなければ、エア切れを起こした本人はもちろん、近くにいる罪なきバディも危険な状態に追い込まれかねない。

助けを求めてしがみつかれたり、レギュレーターを奪われそうになったら「あ、エア切れね、エアあげるから慌てないでね、あ、違うそっちじゃなくて、こっちからどうぞ」なんて手順を説明している暇はない。
時としてそれは、生きるか死ぬかの問題となりえる。

つまり、システムとしての確実な機能が確認されていないバディシステムは、ダイビングのリスク軽減に貢献しないし、時として、リスクをより増大させる要因ともなりうるのだ。

さらに加えれば、器材の故障や、リーダーの交代、サポートの要請等、バディ間の必要なコミュニケーションを明確かつ勘違いすることなく行えることも必須。

そうしたトレーニングは、実際の講習の中で行われているのだろうか?
またファンダイブの中で、ダイビングのスタート前に、バディ間でそうしたサインの確認等はされているのだろうか?

もっと言えば、バディシステムでは、バディでエアをシェアする可能性がある。
よって、バディは互いのエアの消費率を知っておくべきだ。

それを元に、仮にエアをシェアして2人で1本のタンクから呼吸するようになった時、最も長時間の共有が必要となった状態でどれくらいの残圧が必要であるかを予測、その分のガスは使わないで確保しておくという、ダイビングスタート前のガスマネーメントも必要なはずだ。

補足すると、エアをシェアする場合は、シェアの相手によってチーム全体としてのガスの消費量が異なる。

よって、単に自分のための予備を残す、というガスマネージメントではなく、相手の空気消費率を考えたガスマネージメントが必要なのだ。

それも、単純な垂直浮上が可能な環境と、水平移動を考える必要のある環境とではシェアの時間、運動量=ガス消費率が変化するし、特にシェアがスムーズでない場合は(自身の経験が浅かったり、経験の浅いダイバーがバディの場合)、動きの効率が悪くなって、より多くのガスが必要になる。

そうした付加的な要素を考えると、ガスマネージメントの考え方はかなり複雑かつ保守的にならざるを得ないだろう。

そうした様々な必須内容の確認や考察が行われていないとすれば、それは名ばかりのシステムとなる可能性がある。

それをもってしてバディシステムの有効性を語るのは嘘だ。と「私」は思う。

指導する側は、その点を明確に告知し、バディシステムを支持するのであれば、本来のバディシステムのあり方の周知と正しいお作法の普及に努めなくてはならないはずだ。

念を押しておきます。今回の話は全て超スクーバ都市伝説です。と前置きして…

大手指導団体がバディシステム重視のプログラムを発表したが…

大手の指導団体が、バディシステムを重視するために、オープンウォーターの講習にバディだけで潜るダイビングを加える、という噂を耳にした。

それが本当にバディシステムを理解した上で構築されたプログラムなら、それは素晴らしいことだ。

そのためには、事前に、今まで説明してきたような、例えばバディのマスクが無くなった時、バディの水深計やコンパスが壊れた時、バディのエアが切れた時等、バディにトラブルが起きた際は器材を共有し、サポートし合ってチームとしての活動を維持するという状況を想定した実践的なトレーニングが行われ、高い完成度が追求されているはずだ。

また、実際のバディだけのダイビングを想定したトレーニングでも、突然バディの器材が故障する等、バディのサポートなしでは活動不能の状態が計画的に演出されるはず。

トレーニングのゴールは、その状況を確実に解決し、無難にダイビングを終了できることのはずだ。

もちろんそんなことは有り得ないと思うが、もし、バディで潜水計画が立てられる、バディでナビゲーションが出来て、バディだけでダイビングのエントリーからエキジットまでを完結できるということだけがトレーニングのポイントとなっているなら、それを良しとした時点で、それは、カリキュラムの制作者やそれに疑問を感じない指導者の方々が、本来のバディシステムを理解していないということの証にしか過ぎなくなる、と「私は」感じる。

あ、これ、スクーバ都市伝説ですからね。

潜水計画やナビゲーション、エントリーやエキジット、その他水中活動に必要なスキルの多くは、個々のレベルアップで完結出来ることだ。

というか、オープンウォーターダイバーであれば、それらのほとんど全て(例外は、フィンを履く時とか器材の着脱の手助けぐらい?)は個々のダイバーが、個人単位で出来なくてはならないことのはず。

もし、それらを確認するためにバディダイビングという項目が設けられているとしたら、そこで注目されているのは、バディシステムではなく、単に、講習生がインストラクターのサポートなしのダイビングにトライするという部分だけだ。と「私は」思う。

バディシステムの完成度を確認するなら注目すべきは、先に触れたように、バディシステムなしでは難しい状況を演出し、それをバディシステムによって切り抜けられるか、という部分だろう。
トレーニングも当然それに順じたものになるはずだ。と、思うのは私だけ?

あ、これスクーバ都市伝説ですから、信じなくても同意できなくても、全然OKですよ。

ま、優れた方々の集団である大手指導団体は、そんなこと当然分かっていらっしゃるだろうから、これからの講習では、そうした内容がクールに盛り込まれた展開となっているに違いない。
これは先行きが楽しみだ。

ただし、私自身は、どれほど講習を充実させ、バディシステムを活用した活動のレベルアップを果たすことが出来たとしても、現在の日本のレクリエーショナルダイビングでは、すでにバディシステムがカバーできなくなっている状態がある気がしてならない。

バディシステムによるダイビングでは、ダイバーは常にバディシステムを意識し、そのシステムに沿った行動が必須となる。

本格的なダイビング前の諸々の確認は元より、ダイビング中も常にバディの存在を意識し、意志の疎通・スムーズなサポートが可能な距離のキープ、視界に常にバディを捉え、互いに良きバディとして活動するという意識をキープし続けなくてはならない。

ここでちょっと考えてください。
前提として、あなたはバディシステムを完璧に機能させられるレベルの高いダイバーです。

の、上で、例えばカメラを持って撮影に萌えているあなた、マクロな生物探しに真剣なあなた、回遊魚の群れに見とれてため息をつきたいあなた、そんなあなたが、「バディの事は片時も忘れない…」、なんて、出来たての恋人に思わず口走っちゃうようなうわべだけのお約束、出来ますか?

申し訳ない、私は、嘘をつくなら、見破られないよう万全を期すタイプなので、簡単に見破れるに違いないそんなお約束は出来ない。

というより、今のダイバーで、バディシステムを完璧に機能させられるレベルであり、かつ、バディシステムを尊重して、常にバディを意識し続けたダイビングを完結させられるというお約束が出来る方々が、いったい何人いるんだろ?

と疑問を感じた上で、せっかくだから、さらにバディシステムにとどめをさそうという悪意をクローズアップしてバディシステムを考えてみよう。

真に正しいモノは、例え悪意を全開にしても、そうたやすくは屈しないハズだ。

バディシステムは、例えバディの一方でも、このお約束が守れないとなったら崩壊の可能性有り。
また、バディのレベルに差がある時は常に、レベルの低い側のダイバーの限界がチームの限界になる。

ということは、レベルの高い側のダイバーにとって、バディシステムは単独で潜る場合より、よりストレスやリスクを高くする要因となる状況も有りうる。

言うまでもなく、それが、バックアップがない状況よりハイリスクなダイビングとなるのかは、場合によって異なるから、それをもってしてバディシステムが単独潜水以上にリスキーである、ということを言いたい訳ではない。

いずれにしろ、そうしたネガティブゾーンの後ろに見え隠れするのは、ロシアンルーレット一族の手招き…。
一族の薄笑いを浮かべた口元が囁く「男が立ってオシッコする時代は、終わったゼ」。

繰り返します、もちろんこれはスクーバ都市伝説です。

バディシステムより単独潜水の方が安全?

ということで、一旦ここでバディシステムへの固執をリセットしてみよう。

バディシステムの存在は忘れ、最初からもう一度考え直してみたい。
単独潜水の誰かさんの危機を、救う手は、他にないのか?

そこで私は閃く。
バックアップがなくて危機に陥ったのなら、水中活動、生存の必需品のバックアップを携帯すればいいじゃん!

例えばダイブコンピューターが2台、コンパスが2台あれば、前半のトラブルは全てそれで解決可能だ。

マスクも予備を持っていれば、例え2往復の往復ビンタで視界をなくしたとしても視界の再確保が可能になる。
視界が戻れば吹っ飛んだマスクも高い確率で回収できそうだ。

さらに、実際にバックアップ器材の使用が必要となった場合も、バディに依存してチームで動く必要がある解決策と、自己完結が可能な対策とでは、明らかに自己完結型の方が難易度が低いハズ。

例えば、ダイブコンピューターやコンパスなら、予め複数を身につけていておけば、改めて取り出したり、セットし直したりする手間すらなく、確認するモノ、場所が変わるだけで、他に何の不便もなく水中活動を続けることが出来る。

マスクだって小さ目のモノをBCのポケットやスーツの物入れに忍ばせておけば、取り出してセット、マスククリア、で、何事も無かったフリが出来る。

マスクなしのままでバディに手を引かれて右往左往しながら移動や浮上をするよりも、自分の持っていたマスクをセットし直した方が当たり前だが、全然イージー。
何より、バディに自分を預けなくてはならないという不安要素がない。

バディ任せの状態は、バディのレベルによってセーフティレベルが大きく変化する。
自己完結型のトラブル対策であれば、何かに付けて自己責任。

自身のダイビングのリスクを低くしたければ、自分自身のスキルアップに励めばいいのだ。
自身に不安が残る間は、インストラクターがリーダーのツアーに参加して経験を積めばいいし、トラブル対策スキルのアップを目的としたトレーニングをリクエストするのもいいかもね。

なるほど、これはどう考えても、ちゃんとした単独潜水>バディ潜水ダ!

ん?ちょっと待て、それって本当に本当か?

ということで、次回があったら、次回は単独潜水、ソロダイビングについてお話したいと思います。

最後にもう一度言っておきますが、今回のお話は、全てが超スクーバー都市伝説。
信じる、信じないは、あなた次第です!

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writer
PROFILE
テクニカルダイビング指導団体TDIとサイドマウントの指導団体RAZOR のインストラクター・インストラクタートレーナー。
フルケイブ、レックペネトレーション、トライミックスダイブはいずれもキャリア800ダイブ以上。
-100m以上の3桁ディープダイブも100ダイブ以上、リブリーザーダイブでは1000時間以上のキャリアを持つ等、テクニカルダイビングの各ジャンルでの豊富な活動経験の持ち主。また、公的機関やメーカー、放送業界等からの依頼による特殊環境化での潜水作業にも従事。話題のTV ドラマ『DCU』にもリブリーザー監修として撮影に参加している。

■著書
おタハラ部長のお上手ダイバー養成新書
続・おタハラ部長のお上手ダイバー養成新書
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