イルカ調査から学ぶドルフィンスイムのコツとツボ「船上編」

御蔵島のイルカ・マエカケ(撮影:小木万布)

6月に入ると、御蔵島のイルカ個体識別調査も本格的に始まります。
調査員は、イルカ研究を志す大学生や大学院生です。

これから10月頃まで、学校の講義や演習の合間を縫って、12名が入れ替わり立ち替わり島に滞在します。
今年は新人調査員が6名加わりました。

彼らは、理学系、水産学系、農学系の学生ですが、イルカ調査の経験なんてありません。
イルカと泳いだことのある人もほとんどおらず、イルカウォッチングに関しても完全に素人。

ですので、6月末の2週間は「研修期間」と称してイルカウォッチング…じゃなかった、イルカ調査のイロハを叩き込みます。

と言っても、私が海に入ることはほとんどありません。船を出し、調査員達をビシバシ泳がせてデータを録る。
最近では、完全に鵜飼の鵜匠の気分です。

調査目的といえどもウォッチングに参加されるお客様と同様、イルカの生活範囲にお邪魔するわけですから、より効率よくできるだけイルカの迷惑にならないようにデータを取得する必要があります。

さらに、調査は「個体識別」を目的としているので、より多くのイルカをばっちり撮影せねばなりません(個体識別調査に付いては過去のヘッドラインを参照ください)。

調査員に求められるのは泳力だけでなく、イルカをよく観察して、まるで空気のようにイルカに近づき(水中だけど)、きちんと撮影するスキルです。
今日も、朝から新人調査員3名を連れて海に出て、泳ぐ方向や潜るタイミングなどの練習をしていました。

その時「ちょっと待てよ?調査に必要なスキルはウォッチングのお客さんにも役立つのでは?」と思ったわけです。

現に、御蔵のウォッチングガイドには、調査員出身者も少なくありません。
いくつか使えそうなワザ?というか、コツをご紹介したいと思います。

船上でのコツ
-とにかくイルカをよく観察する-

ウォッチング船に「イルカを探そう!」と意識しながら乗っている方はどのくらいいらっしゃいますか?

船長がイルカを見つけてくれるので、お客様は探す必要はありませんが、より長い時間イルカを見るためには、とても大切な意識です。
慣れた船長より早く見つけることは難しいとしても、見つけた船長が「いたよー」と言ったり、船のエンジン音が急に変わったら船長の顔を見てみましょう。
その視線の先に、きっとイルカがいるはずです。

イルカを見つけたら入水までの間、出来るだけ観察します。

入水前はフィンやマスクを着けたり、カメラを準備したり色々することがあります。
サッと入水準備を済ませて観察時間を作るのは、なかなかの玄人技です。

しかし入水前に「何頭くらいいるか」「どの方向に泳いでいるか」「どのくらいの速度で泳いでいるか」「群れは縦長?横長にいるか?」などを見極めることで、水中でイルカに会える可能性は格段に上がります。

速度や方向が分かれば、入水後泳いでゆく方向が明確になりますし、頭数が多い時や群れが横長の時には、他のお客様とは違う方向でも見られるかもしれません。

イルカがなかなか人に寄ってくれない状況下や、他の乗客がたくさんいて、泡を避けてイルカを見たい状況などでは、役に立つはずです。

水中でのコツは、次回に続きます!

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PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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