減圧症治療の在り方と酸素使用を巡る、一般ダイバーへの影響 ~「第51回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会」雑感【前編】~
「第51回日本高気気圧環境・潜水医学会学術総会」を傍聴してきました。
内容は多岐に渡りましたが、レジャーダイビング界が影響を受けそうだと感じるトピックスのみ、私なりに抜粋・解釈してご紹介します。
2017年、その動きに注目してみてください。
前編は、主に減圧症の治療に関して、再圧治療と酸素を巡る動きについて。
より現実的かつ有効な再圧治療環境へ
減圧症などに有効な再圧治療について。
まず、BTO(高気圧酸素治療)の装置には、第1種と第2種があります。
ざっくり言えば、前者は1人用のカプセルみたいな装置で、後者は複数人が入れる部屋みたいな装置です。
これまで、再圧治療(RC)は、第2種でやらないとダメですよ、というガイドラインがありました。
高気圧酸素治療のガイドライン(有限責任中間法人日本臨床高気圧酸素・潜水医学会 平成17年7月1日制定)に、以下のように明記されています。
RC に使用する装置は第2種装置とし、専門医による操作により行うものとするほかは、30.1.より 30.5.の各号の規定を遵守するものとする。
しかし、第2種装置の採算性、数、距離など、さまざまな問題点と現実を鑑みて、第1種での治療が見直されつつあるようです。
確かに、例えば、近くに第2種装置のない僻地でのダイビングを考えれば、有効であることが前提なら、まずは近くの第1種で治療をするというのは自然の流れでしょう。
再圧治療に空気でなく酸素を使用することの是非や、第1種装置の運用ガイドラインや教育などの課題もありますが、パネルディスカッション「減圧障害に対する第1種装置での治療の位置づけ」で、最後に座長が「結論は出たのではないか。1種で治療してもよいという指針に早急に変えていただききたい」と問いかけ、会場が拍手で応じるところを見ると、少なくとも第1種装置での治療は、コンセンサス形成ができているといってよいのではないでしょうか。
実際、圧倒的にダイバーの数が多い沖縄では、すでに第1種装置が使われ、その運用方法などが紹介されていました。
我々ダイバーにとっても、より迅速な処置を受けられることになり、とてもよい流れだと思います。
酸素使用を巡る見解
先日、酸素使用についての動きが活発化しているという記事を書きました。
酸素吸入が法律的にOKという解釈となり、ファーストエイドとしてより重要な存在になってくるところまでは医師の中でも、ダイバーの中でも共通認識でしょう。
しかし、あくまで施設のない場所での緊急のファーストエイドとして、あるいは、再圧治療へのつなぎと考えるだけでなく、「酸素吸入だけでよいのでは?」といった、個人的にはラディカルに聞こえる見解もあったりします。
その効果、運用も含めて、インストラクターはもちろん、医師の中でも見解は分かれる話なので、エビデンスも含めて今後の動きに注目したいと思います。