減圧症にならない潜り方 前編
先日行われた小田原セミナー「減圧症にならない潜り方」(講師:「親
愛会山見病院」山見信夫)の講演&抄録に編集部の解釈を加味しま
した。
■ダイブコンピュータは〝頼る〟ものではなく〝使う〟もの
まず、ダイブコンピュータの数字に従ってさえいれば減圧症にならない
と思っているダイバーは少なくないがそれは間違い。
ダイブコンピュータは時間と水深から理論上の潜水可能時間を瞬時に
割り出してくれるうえでは非常に有用だが、体調や個人差は加味して
くれない。また、リスクあるダイブパターンでも数字上では問題ないケ
ースもある。
つまり、ダイブコンピュータの数字をただ頼りきるのではなく、減圧症の
要因を理解して、数字以外の因子にも配慮した潜り方が必要となる。
逆に言えば、そうした配慮ができればダイビングコンピュータは減圧症
リスクの軽減に非常に有用である。
ということで、減圧症の因子と推奨される潜り方について。
減圧症の因子は、時間や深度などの「基本因子」と「生理的・環境因
子」と大別できるが、まずは基本因子について。
■基本因子から考える潜り方3原則
1.ダイビングは深い水深から浅い水深へ。
⇒1本の中で浅い水深から深く潜水するリバースダイビングはリスクを高める。
⇒「1本目より2本目の方を浅くする」という反復潜水はいろんな議論があるのでいずれ。
2.減圧停止が必要な潜水は行わない。
3.浮上速度と安全停止が最も重要。
⇒血液や中枢神経(特に脊髄)のような速い組織(窒素が溶け込みや
すい組織)は、ダイビングをすれば基本的には飽和するので、浮上速
度が少し速いだけで気泡が発生してしまう。
⇒山見先生が実際に診る減圧症のほとんどが脊髄障害を伴っている
ので、「飽和している脊髄の窒素をいかに気泡を作らずに排出させる
か」が重要で、それが浮上速度を超過しないことと、安全停止を守るこ
とである。
■最も大事な浮上速度と安全停止のガイドライン
【浮上速度】
★毎分10m程度が推奨
⇒毎分10m程度の浮上速度は18m時より気泡形成が少ない。
※編集部メモ
・浮上速度は遅ければいいってもんでもない。
・浮上速度は5㍍を30秒かけて浮上すると考えるとわかりやすい。
【安全停止】
★水深5〜6mに3〜5分以上が推奨。
⇒ただし、10分以上行なっても気泡は減少しない。
★25mに20分以上潜った場合、水深15mで2.5分のディープストップ
が有効。
⇒ただし、水深20mより浅い場合はしないほうがいい。
※編集部メモ
・安全停止の有効性は確認されているので行なうのがベスト
・ディープストップの考え方は意見が分かれている
後編(生理的・環境因子)に続く。