鬼退治の真実はいかに!?
その一族は代々受け継がれる遺伝子異常で、
身長は2mを超え、全身は赤く、女性の中には希に青いものもあり、
目はギョロッと飛び出すようで、発達した犬歯はまるで牙のようだった。
そして、何より、頭骨の一部が盛り上がるように変型し、
心無い人たちはそれをツノだといって虐めぬいた。
やがて、その異形によって忌み嫌われた一族は、
邪しき者として”鬼”と呼ばれ、離れ小島に隔離されることになる。
その離れ小島、通称”鬼ヶ島”に隔離された、
本来、気が優しく勤勉である鬼たちは、魚をとり、田を耕し、
決して豊かではないものの、穏やかな暮らしを手に入れることになる。
鬼ヶ島から巨大な炭田が見つかったのがすべての始まりだった。
体も大きく力も強い鬼たちは、良質な石炭を、人の3倍も生産し続け、
他の国の商人と貿易をするようになり、それを原資としてその他の産業も発展する。
やがて、GDPは世界有数になった。
そんな鬼たちの財産に目をつけたのが、
彼らを追放した人たちの中心人物である桃太郎。
「俺は桃から生まれた」と真顔でいう、ちょっと精神があれな感じの青年で、
周りの人たちもキレたら困るので、誰も何も言わなかった。
桃太郎は誰も家来になってくれないので、
犬と猿に首輪をつけ、キジの羽をもいで無理やり引き連れ、
「これ、俺の家来だし! 鬼退治に行くし!」と高らかに宣言。
両親に匙を投げられ、不憫に思って引き取ったものの、
モンスター化する孫をもてあましていたおじさんとおばあさんは、
「気をつけていっておいで……」とだけ力なく言い、
お弁当がわりにキビダンゴを渡して送り出した。
意気揚々と旅に出た桃太郎。しかし、食料はすぐに底をついたので、
犬、猿、キジの順に食べた。
ついに、鬼ヶ島に乗り込んだ桃太郎は、優しく無抵抗な鬼たちを次々に切りつける。
阿鼻叫喚をきわめる混乱の最中、まんまと財宝を盗み出すことに成功した桃太郎。
めでたしめでたし。
人は勧善懲悪の物語が大好き。
正義と悪は2つに1つで、悪を懲らしめる正義のヒーロー物語。
しかし、現実は2つに1つとはいかないどころか、
正義と悪があべこべなこともよくある話。
もちろん、「桃太郎」の鬼退治はおとぎ話で、
水戸黄門や戦隊ヒーローと同じように、最高の娯楽として楽しめばいいだろう。
では、無粋にも、なぜこんなおとぎ話をしたかと言えば
現代にそのものズバリの鬼退治が存在しているから。
しかも、海の中に、ダイバーの目の前に。それは、
オニヒトデ駆除
“綺麗なサンゴを食い荒らす、悪いオニヒトデを懲らしめる正義のダイバー”、
という現代版の勧善懲悪物語。我々ダイバーはどう考えるべきなのか。
対処療法的な行為で墓穴を掘ってきた人と自然の歴史から考えれば、
「鬼退治は、実は財宝の強奪であるかもしれない」と
立ち止まって、疑ってみる姿勢は当然必要だろう。
太陽系ほにゃららさんの言葉を借りるなら、
「科学的、経済的合理性のない善意がいちばんやっかいだ」
少なくとも、鬼退治をしようと思っている人は、
オニヒトデ駆除による悪影響を科学的に証明しようとする人の意見もあるので、
それを聞いてからでも遅くはないと思う(ということで、以下リンク)。
■オニヒトデから見る駆除の問題と絶滅のメカニズム
http://togetter.com/li/108512
※もちろん、真剣にオニヒトデ駆除に取り組んでいる方々も大勢います。
■Q.オニヒトデ駆除をすることはいいことなのでしょうか?
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jcrs/qanda.html#anchor13