「今、潜るのは不謹慎?」 津波とダイビング

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東北地方太平洋沖地震。まずは、心より震災のお見舞を申し上げます。

自然災害に対して僕らができることは多くないかも知れませんが、
これまで、僕自身を含めどこか人ごとであった地震に対し当事者意識を持った今こそ、
地震を学び、備えることが、できることのひとつだと思います。

一般的な対応作については情報があふれていますので
(個人的にオススメなサイト→■JAMSNETの緊急情報・対応ツール 
地震に遭遇したときの対応マニュアル)、
海の側で活動することの多いダイバーの視点から、
数回に渡って、地震や津波について考えると同時に、
いろんな人の声を紹介していこうと思います。
※まずは津波のメカニズムくらいは知っておきたいところ
(記事一番下にオススメ・サイト)

さて、今回のテーマは、「今、潜るのは不謹慎なのか?」。

伊豆や房総・千葉だけでなく、紀伊半島や沖縄まで、ダイビングサービスが休業したり、
ツアーを自粛しているという情報が続々入ってきています。
また、「予定していたダイビングをキャンセル」、
「しばらくダイビングを自粛」というダイバーのコメントもチラホラ。

津波注意報が出ているときに躊躇するのは理解できますが、
注意報が解除された今でさえ「今、ダイビングをするのは不謹慎な気が……」
という声が聞かれます。

喪に服すという文化。さらに、多くの命を奪った海で遊ぶことに
後ろめたさを感じてしまう気持ちもわかりますが、
何か好転するのであれば喜んで自粛しますが、
そうでないならば、ただ気持ちが暗くなるばかりか、
風評被害でショップやサービスが苦しむだけ。
それこそ、不幸のスパイラルではないでしょうか。

ただ、余震の続く現状、不安を感じるのは当然ですし、
一度のダイビングを我慢して、その分を義援金に回すというのは、ありだと思います。

要するに、”選択“して欲しいということです。

津波注意報が解除されたにもかかわらず津波に怯え、
何となく不謹慎な気持ちからダイビングをひかえるのではなく、
きちんと選択してほしいと思うのです。

ちなみに、個人的には、潜る予定があったら潜りに行きます。
地震の後の水中がおもしろいのはダイバーの間では定説。
それを声高に言うかどうかは別として、いつも以上に楽しむと思います。

ちなみに、お店はこういうときだからこそ営業すべき。
注意報が解除された今、日常回帰して経済活動をし、
可能であれば余剰を助けに回せばいいと思います。

一方、海外ダイビングを中止するダイバーも出ているようです。

しかし、余震が続く日本でダイビングをやめる判断はひとつの選択ですが、
海外へのダイビングツアーを中止するのは、
ただの気分の問題なのかもしれません。
気分でやめるのも自由ですが、それがもし不謹慎だという気持ちなのであれば、
潜りにいって、明るい話題を持ち帰るほうが、有意義なことかもしれません。

さらに、「ダイビング中に津波に遭遇したら一貫の終わり」だと
不安に思っているダイバーもいるようですが、それは誤解です。

スマトラ沖地震・ダイバーの事例を読んでもわかるように、
ダイビング中に津波に遭遇したにもかかわらず生存しているダイバーは多くいます。
この資料を読んで「津波の怖さを思い知った」という感想を持つ人は少なくないですが、
僕は”津波中に潜っていても生存”という事実の方に注目しています。

水深や地形、ダイビングスタイル(ビーチ・ボート)など、
様々なケースを分けて考える必要がありますが、
少なくとも「ダイビング中に津波が起きたら一貫の終わり」という不安は間違いです。
※今後、”津波中のダイビング”というテーマは専門家にも意見を聞いて検証したいと思います。

3月いっぱいのイベントを中止なんて話も聞きますが、
いつもどおりに働き、いつもどおりに元気に潜る。
まず僕らにできることは、これかもしれません。

かくいう僕も今週のダイビングイベントを中止にしましたが、
今考えればただの気分の問題だったと思います。

「こういう時だから潜らない」がしっくりくるような気がするが、
「こういう時に潜っていいのかな」という逡巡を抱えつつも、
「こういう時だからこそ潜ろう」が一番良い選択
だったなと反省しています。

【津波予備知識】

「ナショナル・ジオグラフィック」が3分ほどの動画に
わかりやすくまとめているのでこちらを見ていただくのが早いでしょう。
■津波のメカニズム→
動画
■津波のメカニズム→図解

おさえておきたいのは、通
常の波と津波の波とは根本的なメカニズムが異なるということ。
■津波の波と台風の波の違い→
こちら

エントリー時、通常の波、しかもヒザ下の波でも、
足をすくわれた経験のあるダイバーなら、
波の横の動きのパワーを、身を持って知っているでしょう。
ケタ外れにパワーのある津波の場合、
たとえ30センチでも危険といわれるゆえんです。
■詳しくは→
こちら

※津波や安否に関する情報、疑問・質問など、お待ちしています。
u-mix@diving-commu.jp

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
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〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
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