とある震災被害のダイバーが再び海に潜るとき
大震災で身内を亡くしたダイバーのAさん。
彼は震災後、海が憎くなり、
「とてもじゃないが潜る気などせず、ダイビングをやめてしまおうと思った」という。
そんなAさんが、ある日、水族館に誘われる。
あまり気乗りしなかったものの行ってみると、水中世界に心踊り、
「心がふと軽くなりました」と、癒しを感じている自分に気がつく。
そして、背を向けていた海に振り返ったAさんの背中を、
祖母の言葉が、ポンと押した。
「津波のせいで海が嫌いになったら、それは心まで被災したことになる」
この言葉にハッとしたAさんは、
「海の素晴らしさを誰よりも知っているのはダイバーじゃないか」と再び潜る決意をする。
今月、宮古島に潜るAさん。
「自分でもどんな心境になるのか、楽しみなような怖いような……」と言うが、
海の中で笑顔を取り戻すことを祈るしかない。