ダイビングの教え方

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我れ潜る。故に我あり。

前回、PADIの教材についてパパもんは苦言を呈したのだが、
各方面からいろいろなご意見をいただき、
改めていろいろ考え直す機会をいただくことができた。感謝している。

そういうなかで、それ自身で完結したものとして教材を問題視するよりも、
海という生き物を相手にした現場での、
状況に応じたインストラクションの質にこだわった方がいいというご意見が多かったように思う。
まさにその通りではある。ダイビング講習が「教育」であるかぎり、
実は教材よりも先生の占める重要性の割合の方がはるかに高い。

待てよ、似たような問題状況がどこかにあったな。

あ、そうか、いわゆる「歴史教科書問題」だ
従来の歴史教科書を「自虐史観」に彩られていると批判して、
「日本人としての自信と誇りを育む」とかのために作られた
「新しい」歴史教科書が教育現場からの反発にさらされているにもかかわらず、
各地の教育委員会で採用され議論を呼んでいる。
この夏も八重山地区での採用をめぐって一悶着があったことをご記憶の方もあろう。
しかしどのような教材を使おうと、教えるのは先生である。
極端な話、教材を徹底的な「反面教師」、
悪い見本に仕立てあげて授業を行うことも先生しだいなのだ。

その意味で、この夏に宮古島で、CMAS系列のダイビングショップにお世話になり、
何度かOWの講習や体験ダイビングを見学させてもらう機会を持てたことは
「ダイビングの教え方」に関する自分のやり方を見直すきっかけになったという意味で
パパもんにとって極めて有意義だった。

前にも強調しておいたが、PADIの教材は極めて良くできており、
教えるべき項目がモジュール化されているので、誰が教えても、
つまりどんな新米のイントラが担当してもそれなりの講習ができるように構成されている。

しかしたとえばOWの「潜降」でPADIが教えるファイブ・ポイント潜降、
こんな教え方をするから講習段階ですらオーバーウエィトを助長することになってしまい、
いつまでたっても潜降すらできないダイバーを生み出す結果になっているのではないか。
見学を許可してくれたCMASのイントラさんからすら
「ファイブ・ポイント潜降って何ですか」と尋ねられたので、まずその要点をまとめておこう。

潜降するときは次の5つのポイントでバディと確認をとりあう。
1.潜降合図:バディ同士で潜降の準備ができたことをハンドシグナルで確認し合う。
2.位置確認:浮上した時に自分の位置を確認できるように、水面や陸上の目印を決める。
3.顔を水面につけたままでスノーケルからレギュレーターに交換。
4.時間確認:潜降開始の時間を確認。
5.BCDの空気を抜き、息を吐いて、フィート・ファーストの姿勢で潜降する。沈み始めたらすぐに耳抜きをする 。

ここで示されているのはあくまで「手順」であって、断じて「スキル」ではない。
そして断言しておきたいと思うが、
いわゆる「適正浮力」で上記の手順をふんでも、まず潜降はできないだろう。
プール講習などで、つかまれる手すりや潜降ロープがあれば話は別だが。
潜降するためには、たとえば次のような「スキル」が必要だとパパもんは思う。

まず水面でBCのエアを完全に抜き、
その後ヘソより上を水面に露出させるくらいのつもりで大きくフィンキックし、そのタイミングで息を吐ききる。
その後しばらくはフィンを動かさないでつま先をのばすような姿勢をとる。
そうすると反動で一気に2〜3mの深度まで
「水に体が突き刺さる」ようになるから耳抜きに集中する。
あるいは潜降前からもう耳抜きをはじめる。

パパもんが見ているかぎり、潜降に苦労する方の多くが、
1) まずBCからエアを抜き切れていない、
2) 息を吐ききる、最低でも吐き気味で潜降を開始するということができていない、
そしてほとんどの場合に当てはまることだが、
3) 立ち姿勢でフィンを動かし続けている。

だから潜降できずに、しかたなくウエイトを多くして「沈没」し、
フィンで水底の砂や泥を巻き上げて煙幕を作り出すという光景が繰り返されるのだろう。

しかし、もっと考えてみると、ダイビングが「教育」であるとした、
ここでの議論の前提は成り立ちうるのだろうか。
次回以降では少しその問題を考えてみたい。

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