リブリーザーがレンタル器材になる日

リクリエーションダイビングでのリブリーザーコースが始まるニュースをお伝えしました。ナイトロックスでさえ、世界の趨勢からすれば、大きく遅れている日本の現状では、ダイビング・ドット・コミュのビューワーにからは遠い話だと思いつつ綴った日記でありますが、思いの外多くの方が関心をお持ちのようであります。

ヤドカリ爺は何せ、BCDどころか、残圧計すらろくにない時代に育ったダイバーですから、現在の多様なリブリーザーについての、専門的知識はほとんどいってよいほど持っておりません。

インターネットでリブリーザーを捜してみると、セミクローズド、クローズド、マニュアル操作、エレクトロニクス操作、多種多様それぞれに、特長、性能のリブリーザーが並んでおります。価格も数千ドルから1万ドルを越えるものまでございます。

この多様さは、大きな将来性、可能性にもつながります。と同時にリクリエーションダイビングに要求される大きな条件、”システムのシンプルさ”へのネックになるわけであります。

リクリエーションダイビングでのコースが始まるとはいえ、リブリーザーの機種の多様さゆえに、機種ごとのトレーニングが必要になります。一方、私たちの開放式スクーバは、細部はともかく、見事にデザイン、操作法が統一されております。言い換えれば私たちの開放式スクーバのシンプルさに匹敵する、快適性、軽便性が実現し、規格が統一されたときに、リブリーザーの時代が来るということでしょう。

どなたかが、”女性の背負えるリブリーザーもすでにありますよ”というコメントをいただいております。女性が背負えるサイズになったというのは、長足の進化でありますが、”女性も”だけでなく、”だれでもいつでも使える”ような、モデルの開発がリブリーザー時代の到来の条件なのだと、思っております。

今から何年か後。10年後か、いや3年後。1年後。かもしれませんが、以下は時代遅れのヤドカリ爺の夢であります。

海辺のダイビングサービスに入っていくと、片手で持てるようなリブリーザーがずらり並んでいる。メーカーは違っても基本的デザインは同じ、どこのメーカーのものをレンタルしても基本操作は同じ。炭酸ガスの吸収剤はいつでも交換したばかり。使用深度に応じたガスとタンクを選んで、アナライザーで使用するガスをチェックをする。忘れてはならないのはガスのコントロールをするエレクトロニクス系のチェック。緊急用には小型レギュレーターつきのタンクを使う。リブリーザーがコンパクトになれば、BCDもコンパクト。

とまー、こんな風になれば、ダイバーにとってリブリーザーは歓迎すべきテクノロジーでありますが、器材、そしてダイビング手順、つまりハード面とソフト面のスタンダードができてはじめて、リブリーザー時代が来ることになります。あくまでもリクリエーションとしてのダイビングの世界の話です。

それでもリブリーザーのデザインや操作手順が標準化されても、ダイビングサービスはこれだけのことを準備とチェックをしないと貸し出せないわけですな。またダイバー自身も同じ手順で確認することになります。ダイバーにもダイビングサービスにとっても、開放式スクーバのように「タンク借りまーす」、「ハイどうぞ」ってワケにはいきません。当然使用後には、同じ手順でチェックをして、さらに次回の使用のために丁寧な手入れが必要です。

つねづねヤドカリ爺は、どこのダイビングリゾートに行っても、十分な性能、十分な手入がされた、レンタル器材が用意されていて、ダイバーが体ひとつ持っていけば、ダイビングができる。これではじめてダイビングが本当のリクリエーションあるいはスポーツになると信じております。

いやいやマイ器材を否定するものではありません。誰がいつ、どこでレンタルしても、安心して使える信頼度が器材がリクリエーションダイビングは要求されるのであります。

リブリーザーがレンタル器材になる時代が、目前なのか、歩き出したばかりでその道のりが遠いのか近いのか、ヤドカリ爺は見とどけたいと思うのであります。

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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