“大丈夫”の意味は“快適” 〜至言シリーズ〜
“大丈夫”イコール”快適”じゃないとダメ
■《潜酔亭》亭主・慶松亮二
潜水歴50年を超える生きる伝説のダイバー慶松さん
(なんて言うと、「わたしゃ化石か」と怒られそう・笑)。
長年、潜水作業の仕事に携わってきた慶松さんは、
今回の南三陸町でのボランティア・ダイビング活動を行なう上で、
頭脳とも言うべき存在。ひと言、ひと言が至言の連続。
中でも印象に残ったのが寒冷地での防寒に関して言った冒頭の言葉。
ダイバーはよく“大丈夫”という言葉を使う。
防寒に関して、「その装備で大丈夫?」「その装備で寒くないの?」との問いに、
レジャーダイバーからイントラやガイドまで、「大丈夫、大丈夫」。
ストレスに関して、「辛くない?」「潜れる?」と聞かれ、「大丈夫、大丈夫」。
その”大丈夫”に込められた意味の大半は、「我慢できる」「まあ、何とかなる」だろう。
中には「冷たい海に我慢して潜った」ことを勲章のように語る人までいる。
しかし、慶松さんは「”大丈夫”の意味は”快適”でなければならない。
寒いのを我慢するのは事故の一歩手前」だという。
今回の潜水作業に関しても、「10度以下の水温なら30分潜っちゃダメ。
なぜなら、何をやっても冷えてしまうから。
『もっとやってあげたい』『もっとできるのに』と不満に思う人もいるけど、
余力を残すのが当たり前のことなんです」と徹底指導。
これはレジャーダイビングにも言えることで、
尊敬する『おタハラ部長のお上手ダイバー』の田原さんも、
その連載の中で「南国で潜る場合もフードをかぶる(持っていく)」と言っている。
さらに、それをパクった……ゴホン、継承した
『スキルアップ寺子屋』の中でも言い続けていることなのだ。
“快適に潜り、余力を残す”のがダイビングの大原則なのである。
だから、保温だけでなく、減圧症の問題でも同じ。
僕が一流だと思うダイバーのほとんどが、1日4本も5本も潜ることには否定的な立場で、
「無策に4本も5本も潜っちゃったと自慢している場合ではない」と言う。
ちなみに、僕自身は1日に4本も5本も潜ることに関して消極的な賛成の立場だが、
個人的に遊びで潜る場合、4本潜ることはまずない。
潜水作業というと、無茶をして潜っている人というイメージがなくもないが、
実は、第一線で潜ってきたダイバーほど徹底した安全管理を考えていることがわかり、
誰よりもダイビングを知る人の、ダイビングの本質に迫る、けだし至言なのである。