金ぴかより眩しい
今日は父・スズオの還暦祝い。当然、赤いちゃんちゃんこ。
嬉しそうにちゃんちゃんこを着ている姿を見ると、金ぴかで喜ぶ自分のル-ツを見るようだ。しかし、なぜ今日という日に金ぴか衣装を持ってこなかったのかと、心の底から悔やむ。くっ。
しかし、若いと思っていた父スズオが還暦とは。確かに赤い父スズオをマジマジ見ると、電車で見る背広族に比べればよっぽど若いが、それでもふけた。
深谷のリチャードギアとしてモテモテだったと言う父スズオに、母みどりと会う前の女子とのツ-ショットが何枚も貼られたアルバムを見せてもらったことがある。
しかし、見事なくらい全員がひどいブスだったので、モテたのではなく今流行りの大食だったか、もしくは一般の人とは違う趣向を持つ偏食なのではないかと子供心に思ったものだ。
となると深谷のジャイアント白田なわけで、最大96㌔まで膨れた母みどりという明白な根拠もあるのだが、このまま深谷のリチャードギアにしておいてあげよう。
ちなみに天地真理似として、ハマのマリちゃんだった母みどりは、歳の取り方まで本人に似てしまった。その悲劇を見ている僕は、潜在的リスクの高い“色白ぽっちゃり”に対する警戒心は強い。
しかし、老けたリチャードギアは傍らの膨らんだマリちゃんに「本当にいい男」と言われて嬉しそうだ。やっぱりジャイアント白田に近いと思うのだが、本物の味、というとおおげさだが、自分の一番好きな味は見つけているし、今後も揺るがないのだろう。
常に盛り付けの華やかさにばかり目を奪われ、いざ食べてみても塩味か味噌味かの違いくらいしかわからない僕には、膨らんだマリちゃんの味はまだわからない。
残りモノの惣菜を食べ、オッパイのことばかり考えている僕のような存在を生き甲斐に働き続け、小さなお肉屋さんを年商に億がつくまで大きくした父スズオ。
小さな昭和的立身伝に生き、今、赤いちゃんちゃんこを着て膨らんだマリちゃんを傍らに置き何を思うのか。「同じマリちゃんなら、夏木のマリちゃんになってほしいなぁ」などと考える僕には到底わからない。
ただ、幸福そうなことだけはわかるので、僕も今日は幸福だ。