ダイビングのエア消費を徹底解説【前編】エアを上手に消費する方法
「自分のエア消費が早いせいでダイビングが早く終わってしまう…」、「エキジットまでエアが持つか毎回ドキドキする…」といったエア消費問題に悩んでいる人も少なくないはず。エア消費が早く、思いっきりダイビングを楽しめないという方のために、今回は改めて、ダイビングのエア消費について前後編に分けて掘り下げていこうと思う。前編ではエア消費が早いとはそもそもどういうことなのか、後編ではエア消費が早い人の特徴とエア消費を節約するコツについて紹介していく。
1、エア消費が早いことによる3つのデメリット
ダイビングをするうえで、エア消費を抑えたいと思う人は多いだろう。そこでまずは一度、エア消費が早いことにより挙げられる3つのデメリットを紹介しておく。
物理的なデメリット
これはシンプルなもの。エア消費が早いと、早くダイビングを終了しなくてはならない。せっかくならできる限り長く水中にいたいものだ。
精神的なデメリット
「自分のエアが早く無くなるせいで、メンバー全員が速くエキジットしなくてはならない」、「エキジットまでエアが持つか毎回ドキドキする…」というように、エアのことで頭がいっぱいになり、ダイビングを思い切り楽しむことができない。また、焦ると余計にエア消費は早くなり、負のスパイラルへと陥ってしまう。
身体的なデメリット
深くゆっくり呼吸し、体内にしっかり酸素を取り込むことが、安全なダイビングに繋がる。なぜなら、たとえ同じ回数の呼吸でも、深くゆっくりとしたヨガで行うような呼吸の方が、浅く速い呼吸よりも効率良く酸素を体内に取り込めるからだ。浅く速い呼吸は、エアがどんどん減る一方で、体に酸素を効率よく吸収したり二酸化炭素を排出することが十分にできず、頭痛や疲れの原因となったり、場合によっては減圧症の危険性につながることもあるのだ。
この他にも実際にトラブルが発生することもあり得る。たとえば、自分のエア消費量を把握しておらず、残圧計の確認を怠っていると、気づいたときには残圧がほとんど残っていなくて慌てて浮上なんて事態にもなりかねない。
2、“エア消費が早い”とは、いったいどういうこと?
エア消費のデメリットはわかったものの、そもそも自分のエア消費が早いのか平均的なのかわからない。そこで次に、「エア消費量」という、自分が1回のダイビングの中で、1分あたりに平均どのくらいペースでエアを消費しているのかを示す値(単位はL/分)を紹介しよう。この値を世の中の平均と比べることで、自分のエア消費スピードを客観的に知ることができる。少し頭を使う内容ではあるかもしれないが、ぜひ知っておいてほしい大事なポイントだ。
エア消費量を出すためには、①消費したエア量、②シリンダー(タンク)容量(L)、③平均水深の絶対圧、④潜水時間(分)が必要となる。ここで早速、「うわ、計算苦手だ…。」と思った方もご安心を。ocean+αにはエア消費量が瞬時にわかる「丸わかり計算」という便利なものがある。
念のため、エア消費量を出す計算方法とそれぞれの意味について下記に掲載しておこう。
①消費したエア量
ダイビング開始時のシリンダーに入っていたエア量から、ダイビング終了時のエア量を引けば計算することができる。ダイビング開始時のシリンダーのエア量は満タンになっていれば一般的には200気圧。エリアによっては180気圧や150気圧のところもある。ダイビング開始時が200気圧で、ダイビング終了時に60気圧であれば、200 – 60で140気圧になる。
※「丸わかり計算」では開始時と終了時のシリンダーに入っていたエア量を入力する
②シリンダー容量(L)
日本であれば容量が10Lのシリンダーを使用しているところが多い。他には8Lや12L、14Lなどもある。
③平均水深の絶対圧
絶対圧とは、スキューバダイビングのCカードを取得するときにも勉強したであろう、私たちの体にかかる圧力のこと。水面では1気圧、水深10mでは2気圧、水深20mでは3気圧となる。平均水深が15mだったら、2.5気圧となる。
※「丸わかり計算」では絶対圧ではなく、平均深度を入力する
④潜水時間(分)
エントリーしてからエキジットするまでの時間。
計算ができた方は以下の平均と比べてみよう。
女性:10~12L以下/分
もちろん個人差があるので、参考程度に。初心者ダイバーは、まだダイビングに慣れていないことからエア消費量は多めな傾向にある。平均と比べるだけでなく、バディやインストラクターと比べてみてもいいだろう。また、上記の数字よりも大きいからといって、無理に呼吸を我慢しようとはせず、次回の記事で紹介するコツをぜひ実践していただきたい。
ここで、「あれっ?自分がよく使うシリンダーは10Lシリンダーだから、10Lの空気が入っているんじゃないの?」と疑問に思う人もいるのではないだろうか。通常シリンダーの中のエアは200気圧に圧縮されているので、10Lシリンダーの場合、10L×200気圧=2,000Lが入っているということになるのだ。たとえばエア消費量が、15L/分の人は、2,000L÷15(L/分)=約133分呼吸できる計算になる。しかし、これは水深0m、すなわち1気圧以下での話だ。水中では水圧によって空気が圧縮されるので、水深10mでは1,000L相当に、水深20mでは666.6L相当というように同じシリンダー1本分でもエアの体積(L)は小さくなる。
少し頭を使う内容だったが、安全にダイビングをするうえで大切な内容だ。頭の片隅に入れておくことをおすすめしたい。
今回は、エア消費が早いことによるデメリットと、エア消費量についてお話ししてきた。次回は、皆さまが特に気になるであろう、エア消費が早い人の特徴とエア消費を節約について紹介していく。
高い信頼を集める世界最大のダイビング教育機関であり、全世界で2800万人を超えるダイバーを認定。2016年に誕生50周年を迎えた。PADIはブランドミッションとして「Seek Adventure. Save the Ocean.」を掲げ、ダイビングの普及だけでなく世界の海洋保護活動にも力を入れる。