ダイビングのエア消費を徹底解説【後編】消費が早いダイバーの特徴8つと節約のコツ5つ

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ダイビングの悩みの上位にランクインするエア消費問題。本企画では、そんなダイビングのエア持ちについて前後編に分けて徹底的に掘り下げていく。前編ではエア消費が早いことによるデメリットとエア消費量をについて紹介した。後編ではエア消費が早い人の特徴と節約するコツについて紹介していく。

1、エア消費が早いダイバーの8つの特徴

何が原因でエア消費が早いのだろう。エア消費が早いダイバーの特徴で比較的多いのが次の8つだ。

①中性浮力が取れていない

エア消費が早い原因で最も多いのがこの中性浮力が取れていないことである。中性浮力が取れていれば、フィンキックの力を前に進む推進力だけに使えるが、取れていないと“水深を維持するための下向きのフィンキック”まで必要となる。また、体が水平にならず流線型をも保てないため、体が立った姿勢で水の抵抗が大きくなり、前に進むために余計にフィンキックが必要となる。たとえると向かい風に立ち向かって、常にジョギングをしているような状態だ。これでは疲れて、エア消費量が速くなるのも納得だ。

②浅く速い呼吸をしている

ダイビングでは深くゆっくりとした呼吸が大切と言われている。浅く速い呼吸だと、効率よく酸素が取り込めず、苦しく感じてまた早いタイミングで吸ってしまうという悪循環に。結果、呼吸の回数が多くなり、エア消費が早くなってしまう。

③運動量が多い

陸上と同じように水中でも運動量が多いとその分、体内に酸素を取り込もうとし、エアの消費量が増える。常に泳ぎまわっていたり、自分の観たい魚や景色に向かって全力で泳いだりすると、息が上がり呼吸が速くなりがちになるので程々に。

④リラックスできていない

ダイビングに慣れていない初心者に当てはまりがちだが、普段とは違った環境と仲間、心配事などがあったりすると、緊張から呼吸が速くなってしまう。

⑤体格がいい

肺活量は日頃の運動で増えていくだけでなく、体格とも関係しており、体格が大きい人は肺活量も大きい傾向がある。また、筋肉量が多いと酸素摂取量が多く、エア消費が早まる。一般に男性のほうが女性よりエア消費が多いのはこのためだと言われている。これはどうしようもないことかもしれない…。

⑥インストラクターよりも深場にいる

深場に行けばいくほど、エア消費は早くなってしまう。水深0mで10Lシリンダー(タンク)にはエアが2,000L入っている。しかし水中では水圧によって空気が圧縮されるので、水深10mでは水深0mの状態に換算すると1,000L相当に、水深20mでは同様に666.6L相当というように水深を下げれば下げるほど同じシリンダー1本分でもエアの体積(L)は小さくなる。深場にいる人は浅場にいる人よりも、一回の呼吸で体積が小さい圧縮されたエアを吸うことになるので、同じ時間あたりのエア消費量は多くなる。

⑦ウェットスーツの保温性が足りない

水中の寒さは、陸の20倍の早さで体温を奪う。寒いと身体の震えが起こり、運動量が増えたり固くこわばったりすることで、呼吸量が増えてしまうことがある。

⑧自分に合った器材を使っていない

たとえば、フィンは自分の脚力に合わない固いものを使っていると、疲労する可能性がある。他にはレギュレーターの口にくわえる部分であるセカンドステージ。エアの供給量を調整できるものもあり、吸い口が軽すぎると呼吸が速くなり、エアの消費量が増えてしまう。逆に供給量が少なく、抵抗を感じる場合は息切れの原因にもなるので、ちょうどいい塩梅を探してみよう。

2、エア消費を節約する5つのコツ

上記8つの特徴に当てはまったダイバーは、次に紹介するコツを実践してみてほしい。少しずつでも実践すれば効果は現れるはずだ。

①中性浮力をマスターせよ!

中性浮力をマスターすることはエア消費を節約するうえで、最も重要なスキルだと言える。中性浮力を取るためには、適正なウエイト量を身につけることとバランスよくウエイトをつけることが大切だ。ウエイト量に関しては身につけるスーツや器材、シリンダーの種類、水の種類(淡水か塩水か)で変える必要がある。

また、初心者に多いのは、潜降がスムーズにできないからといってウエイト量を増やし、水中でオーバーウエイト気味になっていることだ。適正ウエイトなのに潜降ができないという人は、息を吐けていない可能性があるので、リラックスして息をしっかり吐くことを意識してみよう。

ウエイトをバランスよく付けることも忘れずに。腰に巻いたウエイトベルトの左右どちらかにウエイトが偏っていると、体も傾いてしまい、中性浮力が取りづらくなるだけで無く、姿勢を維持しようと無駄に力を使ってしまう。ウエイトは左右対称に、水中で綺麗な水平姿勢が取れるように調整する必要がある。また、ドライスーツや体格の大きい人がたくさんのウエイトが必要な場合、腰にすべてが集まっていると、腰が下がって立ち姿勢になりやすくなってしまう。そんなときはウエイトポケットが付いたBCや上半身に着けるウエイトベストなどに分散させると良いだろう。

ログブックも有効活用を。ログブックには、観れた魚だけでなく、ウエイト量、スーツの種類と厚さ、ドライスーツならインナーの種類、シリンダーの種類、水の種類を記録しておけば、次回以降のダイビングでウエイト量を決めるときの参考にすることができる。

適正ウエイトのチェック方法

ダイビング前にウエイト、スーツ、器材を全て装備し、BCから空気を抜いた状態で背が立たない水深のあたりで直立姿勢をとる。このとき目線の辺りに水面がくればその状態で適正ウエイト量が一旦取れたことになる。

そしてチェックしたときのシリンダーのエア充填が満タンならば、ダイビング中にシリンダー内のエアが消費されてシリンダーが軽くなることを見越してプラス1~2kgほど加えておけばバッチリ。しかし、毎回のダイビング前に適正ウエイトをチェックする環境はそうそうないかもしれない。そんな場合は1ダイブ目をチェックダイブも兼ねたダイビングにして、そこで軽いなと思ったら次のダイビングでウエイトを増やし、重いなと思ったら減らす。

インストラクターに事前に一声かけておけば、水中でウエイトを貸してくれたり、受け取ってくれたりするので、相談しておくと良いだろう。

②深くゆっくりとした呼吸を意識

ダイビングの呼吸は深くゆっくりとしたヨガで行うような呼吸が大切だ。息を“吸うことよりも、吐くことを意識”して、ゆっくりしっかり吐ききる。そうすることで、吸うときには、自然とエアが深くまで入ってくる。このような呼吸をすれば、リラックス効果もあるので、緊張がほぐれ、エア消費は自然と遅くなっていく。

③ゆっくりとリラックスして泳ぐ

中性浮力と並んで重要な要素。移動するときは大きく足を開き、ゆっくりフィンキックをすることを心がけよう。また、移動時に手を動かしてもさほど効果がなく、逆に疲れて呼吸が乱れるので、できるだけ足のみを使うことをおすすめする(フィンキックが出来ない場合は例外)。

④防寒対策をする

夏だからといって、薄いスーツを着ていくと、深場にいくと水温が下がり寒い思いをすることも。スーツを持参するときは、事前に現地のガイドに水温情報を聞いておき、スーツで上手に体温調整をしよう。必要な場合にはダイビングショップでのフードベストのレンタルなども活用しよう。

⑤経験を積む

ダイビングの回数が増えることで、自然と呼吸方法や海の環境、器材の扱いにも慣れ、自然とよりリラックスな呼吸ダイビングができるようになる。また、バディやインストラクターに自分が泳いでいる姿を撮影してもらい、綺麗な水平姿勢が取れているか客観的に知ることもいいだろう。フォームを改善し、より運動量を減らしたい人にはおすすめな方法だ。

これらのコツを実践しても、やはりエアもちが心配という人は、12Lや14Lのシリンダーを使用したり、サイドマウントと呼ばれるシリンダーを脇に2本装備したりするダイビング方法もある。いずれもダイビングインストラクターに相談して、エアに対する不安を無くしてから快適にダイビングを楽しもう。

ここで紹介した特徴やコツはあくまでも一例。中性浮力をまずはマスターし、呼吸も深くゆっくりと深呼吸するような意識ですれば、自然と気持ちも落ち着きリラックスして、今まで以上にダイビングが楽しめるはずだ。

 

監修:PADI
高い信頼を集める世界最大のダイビング教育機関であり、全世界で2800万人を超えるダイバーを認定。2016年に誕生50周年を迎えた。PADIはブランドミッションとして「Seek Adventure. Save the Ocean.」を掲げ、ダイビングの普及だけでなく世界の海洋保護活動にも力を入れる。PADI加盟のダイビングショップでは、エア消費に大きく関わる中性浮力をマスターするコースを開催中▼
ピーク・パフォーマンス・ボイヤンシー・スペシャルティ・コース参照:PADIエアー消費節約のコツ9


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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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