「BSAC JAPAN」35周年記念企画 ~From the past to the future~(第3回)

【vol.03】eラーニングを新たに導入! BSAC JAPAN「トレーニングの変遷」

この記事は約9分で読めます。

今年で35周年を迎える「BSAC JAPAN」。この記念すべき年に「BSAC JAPAN」ではデジタルCカードに続いて、Cカード講習でのeラーニング導入をスタート。今回は「トレーニングの変遷」というテーマで、BSACナショナルダイビングオフィサー・星嵜浩一氏と、eラーニングの講師担当のBSAC Japan 本部 ナショナルインストラクター・七尾慶一氏のお二人にお話を伺った。

Part1 BSAC JAPAN 設立当初から現在までのトレーニングの変遷
~BSACナショナルダイビングオフィサー 星嵜浩一氏インタビュー~

最初にお話を伺ったのは、BSACで日本初のナショナルダイビングオフィサーに任命されたという星嵜浩一氏。星嵜氏は35年前のBSAC JAPAN設立当初から在籍し、現在に至るまでインストラクターのトレーニングなども含め、多くのダイバーの育成に関わってきた方だ。

過去から現在に至るトレーニング変遷や、今と昔のダイビングを取り巻く状況の違いなどさまざまなお話を聞かせていただいた。

英国本部のトレーナーからシステムや教育方針を学んだ

オーシャナ編集部(以下、――)星嵜さんはBSAC JAPAN設立当初から教材開発やインストラクター育成のトレーニングを担当されてきたのですよね? 最初はどのような経緯でBSAC JAPANに関わるようになられたのでしょうか?
 

星嵜浩一氏(以下、星嵜氏)

もともとはスポーツクラブのエグザスで支配人をやらせていただいていました。支配人業務の傍らダイビングにのめり込むようになり、そこからダイビング部門へと異動に。1987年12月に第1回の「BSACクラブインストラクタートレーニングコース」が行われ、そこでインストラクター認定を受け、それ以降コース開発などに少しずつ携わるようになりました。

――記念すべき最初のインストラクタートレーニングコースは、どのような感じだったんでしょうか? 
 

星嵜氏

沖縄の本部で開催され、クラブインストラクタートレーニングコース(現オープンウォーターインストラクタートレーニングコース:OWITC)には私も含めて12名が参加。これにプラスして、30~40名の方がクロスオーバーのインストラクターコースを受講していました。トレーニングの日数などは今と変わりありません。
BSAC本部のある英国から4名ほどスタッフが来ていました。第1回だったので、インストラクターに配布するテキストなども、前日に完成したという話を聞いています。

BSAC JAPANの初期のITCの様子

BSAC JAPANの初期のITCの様子

――やはり第1回ということで、準備も大変だったんでしょうね。そもそも英国のものを日本に取り入れるということは、いろいろな苦労がありそうですね。
星嵜さんはインストラクターになられた後、コース開発などに携わられてきたそうですが、どのように日本への導入を進めていらっしゃったのでしょうか?
 

星嵜氏

まずは私たちが英国本部のトレーナーからBSACのシステム、規準、教育方針を学びました。英語を日本語にするうえで、解釈の違いなどで苦労がありました。
また英国と日本では海況やダイビング事情が違うので、それを日本仕様に落とし込むのが一苦労でした。

英国のダイバーは、誰も潜ったことがない沈船を潜るなど、冒険的なダイビングを好みます。自分たちで計画を立ててバディダイビングで潜るのが基本です。そのへんが日本のダイバーとはまったく違いますね。
しかし今は、英国のダイバーも南仏などのリゾート地でCカードを取得する方が増えてきたので、少し傾向は変わってきているように思います。

なおBSACを日本に取り入れ始めた当初は、今よりも英国の団体であることを意識していましたね。ITCの開校式や最後の結果発表の日は、受講生は皆、ブリティッシュスタイルでブレザーにネクタイで参加したものです。もちろん真夏の沖縄でも(笑)。スーツではなくて、ブレザーというところが英国式だと思います。

当時のITCの講義には、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)が使われていた

当時のITCの講義には、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)が使われていた

BSAC JAPANのインストラクターコースのトレーニングはとても厳しく、当時は「BSACのインストラクター」だというだけで、相当の強者(つわもの)だと思われたらしい。写真は船への引き上げトレーニング風景

BSAC JAPANのインストラクターコースのトレーニングはとても厳しく、当時は「BSACのインストラクター」だというだけで、相当の強者(つわもの)だと思われたらしい。写真は船への引き上げトレーニング風景

“日本初”のナショナルダイビングオフィサーに任命されて

――このような設立時からのご苦労もあって、BSAC JAPANのトレーニングシステムを確立されて、星嵜さんは英国本部からナショナルダイビングオフィサー(以下 NDO)に任命されたと伺っています。これはどんな役職なのでしょうか?
 

星嵜氏

NDOの仕事は、インストラクターのトレーニングを行ったり、新しいコース開発をすることがあります。コース開発にあたり絶対必要なのはコース基準を作ることです。そしてコース基準を作れば、それに伴う評価基準を作らなければいけません。
作ったコースがきちんと開催されているかを監視し、時代に合わせて基準を変更したりすることも行っています。

――日本国内では星嵜さんお一人だけと聞きました。すごいことですね!
 

星嵜氏

いや、ほかに人がいなかったっていうのもあると思うんですよ(笑)。

――そんなことはないと思いますが…。星嵜さんがNDOとして心がけていること、また大切だと考えていることは?
 

星嵜氏

最低限ですが、インストラクターは決められた基準を守ることですね。あとは、受講生の満足度はどこにあるかを考えることが重要だと思います。
受講生にもいろいろな年齢、おかれている生活環境の違いなどがあるので、すべての方に満足していただくことは非常に難しいことだと思います。

しかし、一定のところは評価できるのではないでしょうか。継続してダイビングを楽しんでいただけているか、ステップアップをしているかなどの総合的な評価ですね。また一人のインストラクターが、一人のお客様に対してどれだけ長く関われたかというのは、一つの評価だと思うんですね。
それはお客様の満足度があるからこそ、そのインストラクターやダイビングショップから離れずにずっと継続していただけている証だと思います。そこが一番重要なのではないでしょうか。

――お客様が楽しんで、ダイビングを継続していけるかは大切なことですよね。現場のインストラクターに、ダイビングを教えるうえで大切だと思って伝えていることはありますか?
 

星嵜氏

ダイビングを教えることは、自転車の乗り方を子どもに教えることと同じだと思います。自転車に乗ることを教えるだけなのか、自転車に乗ることによるリスクも教えるのか。また自転車を乗ることの環境を教えるのかっていうのは、それぞれのステップに応じて教える内容を変えていかないといけない。

そして最終的に、オリンピック競技にもなっているBMXやマウンテンバイクのような域までいくことも不可能ではありません。日常で自転車に乗るだけだったら、そこまで考えないと思うのですが、あの域に達するまで続けてもらえるようになれたら、素晴らしいことだと思うんですよね。ダイビングも同様だと思います。

現在沖縄在住の星嵜氏にはオンラインでお話を伺った

現在沖縄在住の星嵜氏にはオンラインでお話を伺った

時代とともに変遷するこれからのBSAC JAPANのトレーニングとは

――長い歴史の中で、ダイビング業界にもさまざまな変遷がありました。そんな中でBSAC JAPANは、新しいものを取り入れることにも積極的ですよね。1990年代にすでにコンピュータを業務に取り入れていたそうですね。
 

星嵜氏

当時はまだワープロが主流に使われていた時代ですよね。でも、私が90年代にトレーニングチームにいたころですが、当時まだ珍しかったAppleの「PowerBook170」というノートパソコンですでに仕事をしていました。オフィスでも海でも目立っていましたよ。しかも限定500台というカラフルなベネトンモデルです。

その頃ナショナルインストラクターは私を含めて5名だったんですが、データのやりとりをこのパソコンで行っていました。マニュアルなども全部その中に入れていましたね。文書校正など一人でやるのは大変だったので、皆で分担して作業していました。

90年代ではまだ珍しいノートパソコンを使って仕事をしていた

90年代ではまだ珍しいノートパソコンを使って仕事をしていた

――今ではパソコンはもちろん、スマートフォンやタブレットなどが仕事にも不可欠になりましたよね。そんな時代の流れの中で、BSAC JAPANでも講習にeラーニングを導入するそうですが。
 

星嵜氏

eラーニングは他団体でもすでに導入されていますよね。eラーニングの導入はいいことだと思いますが、本来であればインストラクターは4時間くらい受講生と対面して学科講習を行います。しかしeラーニングでは、実際に会って教えるわけではありません。どうしても受講生とインストラクターが接する時間は短くなるので、そこをどうリカバリーするかということが重要です。

eラーニングの学科講習でインストラクターが携わる時間が減った分、限定水域やプール講習、海洋実習のときにどれだけ細かく、成功体験を繰り返して覚えてもらえるようなプログラムになっているかポイントだと思います。これができていないと、お客様の満足度の低い講習になってしまいます。

――やはり、インストラクターから直接ダイビングの楽しさやおもしろさを伝えていただくと、受講生も安心しますよね。ありがとうございました。

パソコンが登場して間もない頃から、最新のテクノロジーを導入していたBSAC JAPAN。eラーニングの導入については以前から検討していたが「対面で講習すること」を大切に考えて、熟慮を重ねたうえ満を持してのスタートとなった。
次のページでは、6月20日から受講の申し込みが始まるeラーニングについて、さらに詳しく話を伺っていく。

>>>次ページ:Part2 ついに開始!BSAC JAPAN eラーニング導入~BSAC Japan 本部 ナショナルインストラクター 七尾慶一氏インタビュー~

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PROFILE
大学時代に慶良間諸島でキャンプを行い、沖縄の海に魅せられる。卒業後、(株)水中造形センター入社。『マリンダイビング』、『海と島の旅』、『マリンフォト』編集部所属。モルディブ、タヒチ、セイシェル、ニューカレドニア、メキシコ、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、オーストラリアなどの海と島を取材。独立後はフリーランスの編集者・ライターとして、幅広いジャンルで活動を続けている。
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