「BSAC JAPAN」35周年記念企画 ~From the past to the future~(第1回)

【vol.01】代表・細川俊一氏に聞く「BSAC JAPANの今までとこれから」

この記事は約10分で読めます。

BSACとは、1953年に英国・ロンドンで「The British Sub Aqua Club」として発足したダイビング教育機関だ。そしてその日本支部である「BSAC JAPAN」が設立されて、今年で35周年を迎える。本企画では「BSAC JAPAN」が未来に向けてどんなビジョンを持ち、どのように活動していこうと考えているのかを、3回にわたって連載していく。
第1回では「BSAC JAPAN」の代表・細川俊一氏に、「BSAC JAPANの今までとこれから」というテーマで話を伺ってみた。

ブリーフィング

伝統を受け継ぎながらも、日本の現状に即した活動を心掛けている

オーシャナ編集部(以下、――)まずは、「BSAC」とはどんな指導団体なのか? 他のダイビング指導団体との違いなども含めて、お話しいただけますか。

細川俊一氏(以下、細川氏)

BSAC英国本部は1953年にロンドンで発足して、来年でちょうど70周年を迎えます。他の指導団体との大きな違いはクラブ組織であることです。
クラブ組織とは各地方でダイビング愛好家や有志がダイビングクラブを自主的に作り、独自に活動を行うスタイルのことです。ほかの多くの指導団体は会社組織ですが、BSACは英国各地にあるダイビングクラブが集まって運営しているところが大きな違いです。

英国各地で頑張って活動しているクラブメンバーの中から、会長、会計、評議員などを選出してテーマを決めて活動をします。ほかのダイビング指導団体に比べて、各メンバーの自主性が重んじられているということが特徴です。

――「BSAC JAPAN」でも、そのような特徴は同じなのでしょうか?

細川氏

日本ではクラブ組織での活動ではなく、ほかのダイビング指導団体と同様に各地のダイビングショップにインストラクターが在籍して、講習やツアーなどを開催しています。

本部からの情報をもとに、日本でトレンドになるものを自分たちで選んでいます。たとえばナイトロックスが出てきたとき、英国での反応は今一つでした。しかし日本では注目するダイバーが多かったので、積極的に取り入れていきました。
このように日本と英国では、ダイバーの趣味嗜好もずいぶん違います。英国では、セルフダイビングが基本です。自分たちでタンクを担いで潜りにいくのが普通ですから。またレック(沈船)などのアドベンチャラスなダイビングを好む人も多いようですね。

――同じダイバーでも、国やエリアが違うと、ダイビングの楽しみ方も違うんですね。ちなみに英国のBSACのダイバーたちは、どんな海に潜りに行っているのですか?

細川氏

リゾートダイビングだとレッドシーなどに行くようですが、基本的には自分たちで潜りに行くポイントを探して、英国内で潜っています。ダイビングクラブのメンバーで週に一度パブに集まり、どこに潜りにいくか計画を立てて活動しています。ボートやダイビング器材なども自分たちやクラブで所有していて、お金をかけずにダイビングを楽しむことができるというメリットがあります。ただどうしてもクラブという閉ざされた環境で活動をしていますので、横への広がりは少ないようです。

BSAC細川社長

――英国発祥の「BSAC」を日本に35年前の1987年に導入するいきさつや、当時の時代背景などを教えていただけますか?

細川氏

「BSAC JAPAN」の導入のいきさつは、もともとはその数年前にスポーツクラブのエグザスで、ダイビング事業を始めていました。かなり講習生も多くなってきたので、自社でCカード発行してはどうかという話になって世界中探したところ、英国に貴高い団体があるぞとなって導入をすることに決まったのです。
当時はバブルの真っただ中ですからイケイケの時代ですよね。2年後には映画「彼女が水着にきがえたら」が公開され、そこから一気にスキューバダイビングは人気レジャーへと変貌を遂げました。

――細川さんは「BSAC」の終身名誉会員になられたと聞いています。こちらはどのような経緯でなられたのでしょうか?

細川氏

私は1993年から「BSAC JAPAN」に関わっています。当時は少しバブルに陰りが見えてきた時代で、立て直しを図らなくてはならない時期でした。そして2000年前後にBSAC英国本部が深刻な財政難に陥ってしまうという事態に。そこで私が当時在籍していたマイカルマリンに掛け合い、かなりの額の財政支援を英国本部に行ったのです。今では考えられない額です。一会社員としては頑張ったと思いますよ(笑)。
その貢献が認められて、2006年にBSACの終身名誉会員に認定してもらいました。英国の50年誌にも、そのことを書いていただいています。

チャールズ皇太子も愛着を持つ、英国王室との深い関わり

――英国で生まれた「BSAC」は、英国王室とも深い関わりがあるとのことですが、こちらについてのエピソードをお聞かせいただけますでしょうか?

細川氏

「BSAC JAPAN」の20周年や30周年の式典には、「BSAC」総裁の両殿下からお祝いのビデオメッセージやレターをいただきました。
また2008年にチャールズ皇太子の来日時には、英国大使館で開催された園遊会に招待されました。時の大臣や著名人の中で「BSACの細川です」と自己紹介したら、「Oh!I know. I know、日本ではどこでダイビングをするのか?」などと矢継ぎ早に質問されました。周りの方々が「誰だ、こいつは」とびっくりしていたのを覚えています(笑)。皇太子が「BSAC」に対する愛着をお持ちでいらっしゃることを、強く感じましたね。チャールズ皇太子は非英語圏の私達にもわかりやすいよう、ゆっくりした英語で話しかけてくださり、とても温かい方でした。

現総裁のウィリアム王子とは、ロンドンでの総裁継承式とケンジントン宮殿に招待された時にお目にかかりました。175cmの私が見上げるほど背が高く、すらっと細身のスーツを着こなされ本当にカッコいい方でした。総裁になられてからまだ日が浅いのですが、今後父君のようにもっと「BSAC」に愛着を持っていただけると確信しております。

チャールズ皇太子

チャールズ皇太子


  
ウィリアム王子

ウィリアム王子

BSACの歴史~HISTORY OF BSAC~

来年70周年を迎える英国の「BSAC」と今年35周年の「BSAC JAPAN」の歴史を紹介。

1953年 英国・ロンドンで、オスカー・グージェンと同僚のピーター・スモール、そして多くの同志によって、「水中での探検、科学、スポーツなどの活動と、それらの安全性を促進する」ことを目的にBSAC創立。初代会長にエディンバラ公が就任。

1959年 世界水中連盟「CMAS」の創設に中心となって貢献。スキューバ器材の生みの親であるフランスの海洋探検家ジャック・クストー氏を名誉会長に迎えるなどの活動により、世界的なスポーツダイビングのネットワークを構築。

1987年 英国以外におけるダイビング教育事業の開発を担う「BSAC INTERNATIONAL」が発足。「BSAC JAPAN」設立。

1993年 BSAC(UK)が設立40周年を迎え、名誉総裁であるチャールズ皇太子を招き盛大な記念式典が催される。その際、チャールズ皇太子よりロイヤルマークを賜る。

2003年 BSAC(UK)設立50周年。

2007年 BSAC JAPAN設立20周年。
名誉総裁である英国のチャールズ皇太子より激励のビデオメッセージを頂く。

2013年 BSAC JAPANのコースが国際規格ISO 24801,24802を取得。
BSAC(UK)設立60周年。

2014年 ウィリアム王子が新たなBSACの総裁に就任。

35周年を迎えてさらに進化していく「BSAC JAPAN」が目指すものとは

――設立当初から「BSAC」では、一貫して「SAFETY FIRST=安全はすべてにわたって優先する」というポリシーを掲げています。こちらの具体的な内容について、またこのポリシーが講習内容などにどのように反映されているかをお聞かせください。

細川氏

ダイビングというのは神秘に満ちた海中世界を実際に見て、身体全体で感じることができるレジャーです。しかし同時に人間はその水中の世界では生活できません。
つまり人間がその水中世界に安全に潜るためには、特別な訓練と知識、そしてルールを学ぶ必要があるのです。それらの条件をクリアした上、安全に潜ることで、ダイビングを楽しむことができるのです。インストラクターもお客様自身も、たとえば海況が少し悪かったり、体調が少し悪かったりした場合は、常に「SAFETY FIRST」を考えてリスクを回避する判断をしてほしいと願っております。

「BSAC JAPAN」では安全ダイビングのために、メンバーに向けて安全講習会を随時開催している。

「BSAC JAPAN」では安全ダイビングのために、メンバーに向けて安全講習会を随時開催している。

――35周年を迎えられて、これからの「BSAC JAPAN」の展望や方向性についてお聞かせください。

細川氏

よく長年の伝統と申しますが、伝統を守るということは「常に革新を続けること」なのです。つまり常に今の時代に合わせて新しいことをやっていくことが、振り返れば伝統になっているということなのです。これはいつも英国本部から学ばされることです。
たとえば英国本部では、慣れ親しんだBSACのロゴマークなどもスパッと変えてしまいます。ロゴが変わったのは5年前のことですが、ずっとBSACのシンボルだったネプチューンのロゴも、ひげのおじさんは今の若者には受けないなどという理由で急に変わりました(笑)。

また「BSAC JAPAN」では、今年からデジタルCカードを発行していきます。たとえば交通系カードやポイントカード、チケットにしても、今はみんなデジタルですよね。特に若い方は。そんな時代背景ということもあり、デジタルCカードを発行することにしました。
「BSAC」のアプリを開けば、デジタルCカードが表示されます。これならCカードを紛失することもなく、旅行先で急にダイビングする時にも対応が可能です。

――Cカード取得の学科講習では、eラーニングを導入されるそうですね。

細川氏

これから非接触型の学科講習eラーニングを開始します。もちろんスキューバダイビングのようにインストラクターに命を預ける部分がある講習では、対面で講習を受けてインストラクターとの信頼関係を築くことは重要です。しかしコロナ禍を機に、オンラインでのミーティングやセミナーが普及しました。やはり「BSAC JAPAN」も、時代に合わせたeラーニングを始めることが必要だと感じています。
このように今後も「SAFETY FIRST」をモットーに、さまざまな取り組みをしながら、さらに進化していきたいと思っております。

――ありがとうございました。

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1953年に英国ロンドンで設立され、今では世界中に支部を持つダイビング指導団体。2014年には英国王室ウィリアム王子が総裁に就任。
「SAFETY FIRST(安全はすべてにわたって優先する)」を基本理念に、各プログラムの開発等も行っている。

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  1. 【vol.01】代表・細川俊一氏に聞く「BSAC JAPANの今までとこれから」
  2. 【vol.02】デジタルカード登場! BSAC JAPAN「 Cカードの変遷」
writer
PROFILE
大学時代に慶良間諸島でキャンプを行い、沖縄の海に魅せられる。卒業後、(株)水中造形センター入社。『マリンダイビング』、『海と島の旅』、『マリンフォト』編集部所属。モルディブ、タヒチ、セイシェル、ニューカレドニア、メキシコ、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、オーストラリアなどの海と島を取材。独立後はフリーランスの編集者・ライターとして、幅広いジャンルで活動を続けている。
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