串本の海に生い茂る妖しきクジャクケヤリの草原へ
こんにちは! 三宅健史(たけちゃん)です。
今回は、和歌山県・串本へ行ってきました! 私は関東圏在住なので普段は伊豆で潜ることが圧倒的に多いのですが、初めて串本で潜ってからその海に魅了され、毎年足を運んでいます。個人的に感じる串本の海の魅力は、沖縄のような伊豆のような海で、まさに両者のいいとこどりをしているズルい海だと思います。伊豆に生息する生物もいれば沖縄の普通種も混在しており、ソフトコーラルがあればハードコーラルもある、潜っていて、「あれ?どこの海だ?」と感じさせる不思議な海です。
そんな串本の海で撮影に挑むのが、クジャクケヤリです!!
え? ケヤリ? 草?
え? なにそれ? 藻?
初耳なんだけど?
いろんな声が聞こえてきそうですね。
実はクジャクケヤリは、今年の3月に命名されたばかりです。今回はクジャクケヤリのことしか書きません、写真もクジャクケヤリしか載せません! という少しマニアックレポートですが、今までじっくり見たことのないダイバーさんも多いと思うので、新しい世界を覗いていただけたら嬉しいです。
今回お世話になるショップは、マリンステージ串本店です。ガイドはオーナーでもある谷口勝政氏(以下、谷口氏)、今回もお世話になります!
クジャクケヤリとは?
クジャクケヤリという海藻は褐藻類の一種です。木の枝のような茎状部の先に、フサフサと柔らかい毛のようなものが生えているのが特徴で、成長して大きくなると高さ30㎝までになるそうです。束になった毛に光を当てると、雄のクジャクが羽を広げたときのように美しいのです。SMC-1というスーパーマクロコンバージョンレンズを付けて毛先を撮影してみると、シャボン玉のようなキラキラした世界がそこにはありました。谷口氏は、クジャクケヤリは構造色(※)であると言っていましたが、道理で光の当て方や角度によって見え方が少し変わるわけかと納得しました。
※構造色:物質自体に色はないが、構造が光学顕微鏡でも判別できないほど微細であることにより、光が干渉、分光することで発色して見える現象。CDやシャボン玉に色がついているように見えるのはこれが理由。
クジャクケヤリの存在は、ダイバーの間では以前から認知されていて珍しいものではありませんでした。ですが今年の3月に神戸大学の研究チームが特徴や遺伝子を詳しく調べたところ、「ケヤリ」という海藻と近い種類ではあるが、分類学的には別種で、ハワイの海にだけ分布する固有種である海藻だと結論付けられました。もうこうなってくると、ハワイと串本は同じリゾートの海ですね!! アロハ~♩♩
クジャクケヤリの見られる季節、場所
クジャクケヤリは、紀伊半島では広い海域で見られ、谷口さんによれば4月から6月が生い茂るシーズンだそうです。全盛期を狙うのであれば、6月がオススメだそうです! 今回は4月22日、23日の2日間での撮影でしたが、クジャクケヤリが生い茂るポイント「塔の沖」ではまだまだ岩肌が見える状態でした。最大水深は20mなので、遊びに行きやすい水深ですね。
このクジャクケヤリポイントは開拓されてから3年ほどでデータが少なく、まだまだ観測が必要そうです。5月にはさらに生い茂ってくれていたらいいですね。とはいえ、4月の時点でも広範囲にクジャクケヤリが生い茂っていたので、それぞれ自分のポイントを見つけてじっくり撮影していました。一緒に潜った友人の是澤氏は、普段、大物を追いかけてダイビングをしているのですが、そんな彼もクジャクケヤリに夢中でした。
豆情報ですが、マリンステージさんではエンリッチド・エアが無料。使用すればこの水深でじっくり長く撮影ができて、身体にもお財布にも優しいのが嬉しいですね。ただこの時期は水温が低いので、長く潜ると寒いという弊害も。この日の水温は19-20度。是澤氏はウエットスーツだったので、この後ちゃんと震えていました(笑)。私はこの時期はまだまだドライスーツですが、陸が暖かいとウエットとドライのどちらにするか迷いどころですよね。
クジャクケヤリの撮影のコツ
前述したように、クジャクケヤリは茎状部の先に柔らかい毛がフサフサと生えているので、流れやうねりがある場所だと毛先が流れてしまい、形が崩れて綺麗に撮れません。ふっさーーーーって毛先が流れて、「うわーーー!! 無理じゃん!」ってなります。
なので、マクロ撮影のコツとしては、岩の隙間にあって毛先が流れていないものを狙うのがいいと思います。
流れのかかっていないところを狙えば、形が綺麗に丸くなっているクジャクケヤリを撮ることができます。当たり前ですが、個体によって綺麗に生えているものもあれば、自然の中でたくましく生きた結果、毛が欠けている個体もあります。自分の好みに合わせてどの個体を撮ってあげるかも写真に個性が出そうですね。
クジャクケヤリの魅力
一番の魅力は、この色合いとグラデーションです。雄のクジャクが大きく翼を広げた時の模様に似ているので、まさに「クジャクケヤリ」ですね。ここまで美しい色合いだと、クジャクケヤリだけをメインで撮影しても素敵だと思いますが、生き物を絡めて撮影してもきっと素晴らしい作品になると思います。谷口氏は、生き物と絡めて撮影するのが好みと話していたので、そういったシチュエーションを多く紹介してくれました。クジャクケヤリのマクロ撮影は、「塔の沖」以外のポイントでも撮影できます。
まずは、外国の方がみると大喜びしそうなアオウミウシとのコラボです。かなり動き回る子でしたが、散歩しながらクジャクケヤリ畑のお花見をしていたんでしょうかね。
同じポイントでは、人気者のピカチュウこと、ウデフリツノザヤウミウシとのコラボも撮影できました。ここは浅場、水深10mほどで流れが入っていたので、クジャクケヤリが丸く綺麗になる瞬間を撮影するのが難しかったです。陸に上がってきてから「あの子撮るの難しくなかった?」 と同じ写真を撮っていた方と話すのも、ちょっとした楽しさがありますよね。
ポイントを変えて、次は「備前」で潜りました。
ここにはジャパニーズピグミーシーホースとクジャクケヤリのコラボを狙いに来ました。ジャパニーズピグミーシーホースは串本ではわりと普通種のようですが、伊豆では珍しいのでぜひ見たいとリクエストしました。探している途中で見つけたのが、アオサハギとのコラボでした。2〜3㎝ほどの大きめのアオサハギは珍しいですね! クジャクケヤリもいい感じの個体が多く、流れもかかっていなかったので綺麗な形で撮れました。
さて、お目当てのジャパニーズピグミーシーホースはと言うと…、谷口氏が見つけてくれました!!
もう本当に現地ガイドさんってすごいなって心から思います。
で、写真なんですが、クジャクケヤリと絡めて撮ることができず、力不足でした。最初はクジャクケヤリの近くにいたのですが、ゆっくりアプローチをするもふわーっと飛んで行ってしまいました。無理なアプローチはしたくないし、撮られたくない気分だったっていうことですね、諦めも肝心です。思い続ければ、いつかその機会はまた訪れますね。
2日目の最終日にリクエストしたのが、ギンポとクジャクケヤリのコラボでした。初日と同じ「沖の塔」というポイントに近いところへ潜り、見せていただきました。さあ撮影するぞ!と思っていたら、ストロボがまさかの不調で光らず、ライトで撮影しました。ストロボとは少しテイストが変わって、柔らかい光で色が出せたりするので結構好きです。
このシチュエーションを見て、逆側から撮影したらギンポがクジャクケヤリを見上げているように見えるのでは?と思ったので撮ってみました。
背景を黒抜きすることで、クジャクケヤリのグラデーションが花火みたいに見えますね。もう少しクジャクケヤリが多く生い茂っているところなら、花火の迫力がもっと出せるかもしれないですね。
谷口氏は、クジャクケヤリの魅力は人によって表現が多岐にわたり、まだまだ新しい表現があるのでは?と可能性を大きく感じているようでした。私も生えものがとても好きなので、いつもどのように切り取って撮影すればいいのか、どのように表現しようかと考えながら撮っていて、これは永遠の課題のように感じます。
ダイビングをされる方には大物派、マクロ派、地形派などさまざまなジャンルの好みがあると思いますが、このようなクジャクケヤリがメインになる記事は珍しいのではないでしょうか?皆様のダイビングに、新しい世界観が加わってくれたら嬉しいなと思います。
そして、今回、串本に取材にいく!! って話してから急遽、日程を合わせて一緒に潜ってくれた方々ありがとうございました! ダイバーさんってフットワーク軽くて素敵。
マリンステージのスタッフさんもいつも気さくに話しかけてくださり、楽しい時間をありがとうございました! スタッフさんの一人は昔一緒に潜り遊んでいた方なので、こういった形で久々に会えるのも嬉しいですね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
ほんじゃまた!!(谷口氏風挨拶)
取材協力:マリンステージ串本店