ダイブコンピュータの使い方/見方/選び方 これから買う人や久しぶりに使う人に向け徹底解説
減圧症予防に欠かせないダイビング器材であるダイブコンピュータ。でもたくさん種類があって何を買えばいいのか、どうやって選べばいいのか悩みますよね。また、久しぶりにダイビングをするとなった時には、見方や使い方がわからなくなってしまったという方も少なくないのではないでしょうか。ダイブコンピュータの機能解説から基本操作、最新モデルや賢い選び方まで解説していきます。
ダイブコンピュータとは?
ダイブコンピュータの必要性
ダイブコンピュータは減圧症を防ぎ安全にダイビングを楽しむための必需品です。水深、潜水時間、減圧不要限界(※)をリアルタイムで計算し、ダイバーが安全に潜水活動を行えるようサポートしてくれるものです。
ダイブコンピュータが普及する前は、ダイブテーブルという、水深と圧力から減圧不要限界や必要な水面休息時間を計算できる表を使用して、安全に潜るための潜水計画を立てていました。オープンウォーターダイバー講習で習ったという方も少なくないでしょう。
この計算を潜る度に行うのは時間もかかりますし、複雑になるとミスが起きる可能性もあります。だから、この計算を自動で行ってくれるダイブコンピュータは、画期的で必携のアイテムといえます。
※減圧不要限界…減圧停止が不要なダイビングを行うことを前提に、その水深に留まっていられる最大の時間。ダイブコンピュータ上ではNDL(NO DECO LIMIT)と表記される。
ダイビング中は水圧の影響で陸上にいる時よりも血液や体内組織に窒素が多く溶け込みます。浮上時は、水圧が下がり、溶け込んだ窒素がガスとして体から出ようとします。ゆっくりと浮上すれば、このガスは安全に体から抜けますが、体内の窒素量が多すぎたり、急激に水圧が変化したりすると、体内の窒素が気泡化します。この気泡によって血管が塞がれることで、関節が痛くなったり、神経症状が出たりするのが減圧症です。
ダイブコンピュータのアルゴリズム
ダイブコンピュータは水深と潜水時間から減圧不要限界をリアルタイムに計算してくれます。減圧症を防ぐために、その水深にあとどれくらいの時間留まっていられるのかを教えてくれるのです。減圧アルゴリズムに基づいて計算されていますが、どのアルゴリズムが採用されているかはメーカーや機種によってさまざまです。一般的に使用されているアルゴリズムはビュールマンZHL-16Cと呼ばれるもので、AQUALUNGやTUSA、B-ism、SCUBAPROなどが採用しています。RGBMというアルゴリズムはSUUNTOやMaresなどに採用されています。
同じ条件、水深、時間で潜っていたとしても、バディとダイブコンピュータの警告音が鳴る時間が違うという経験はありませんか? これはアルゴリズムの違いによるものです。
ダイブコンピュータの進化
ダイブコンピュータの元となっているダイブテーブルは、1930年代ごろから使用されていました。初めて商用のダイブコンピュータ「EDGE」がOrca Industriesから発売されたのは1983年。当時は箱型で今よりも大きいものでした。
1980年代後半から1990年代には、技術の発展によりダイブコンピュータは小型化され、水深計や残圧計の並びに組み込まれ、1990年代には現在主流のウォッチタイプ が登場しました。また、水温の測定やアラーム機能、ログ機能など今では当たり前の機能もこの頃できました。2000年代に入ると、アルゴリズムが進化し、個々のダイバーのニーズに応じたカスタマイズも可能になりました。最近では、充電タイプ、スマートフォンアプリとの連携や、GPS、カラーディスプレイ、タッチスクリーン操作などの高度な機能が搭載されています。このようにダイブコンピュータは、より安全で効率的なダイビングを目指し、技術革新を続けています。
ダイブコンピュータの設定
ダイブコンピュータを使用する前には設定を確認しましょう。機種やダイビングスタイルによってはもっと細かい設定をするケースもありますが、ここでは基本的な設定や確認すべきことを紹介します。
時間と日付の設定
時間と日付の設定は、ログ機能の正確性を保つために重要です。海外に潜りに行く時など、その都度設定し直しましょう。設定プロセスはモデルによって異なりますが、通常はメニューにアクセスし、「設定」または「時刻設定」オプションを選択して行います。
水深単位の選択
国内で購入したものであれば、ほとんどメートルに設定されているはずですが、メートルとフィートから選べることが多いので、単位が合っているか確認、設定しておきましょう。
ダイブモード
ダイブコンピュータには通常のエアを使用する際のモード以外に、ナイトロックスモードやゲージモード、フリーダイビングモードに切り替えられる機種もあります。
エアモード
エアモードは通常の空気を使用したダイビングのモードです。水深、潜水時間、減圧不要限界などの基本情報を提供します。このモードでは、ダイブコンピュータが潜水中の窒素吸収を監視し、安全な潜水プロファイルを保つために必要な情報をリアルタイムで計算して表示します。
ナイトロックスモード
ナイトロックスモードは、酸素濃度が通常の空気よりも高いエンリッチドエア・ナイトロックスガスを使用するダイビングに適しています。このモードでは、設定した酸素の割合に基づいて窒素と酸素の吸収率を計算し、酸素中毒のリスクを避けながら、より長い減圧不要限界を計算します。ダイビング前に使用するシリンダーの酸素濃度をアナライズし、コンピュータに設定します。
ゲージモード
ゲージモードは減圧不要限界や窒素量の計算はせずに、水深や潜水時間の表示のみがされるモードです。そのため、減圧症予防を目的には使えないので、通常はこのモードは使用しないと考えて良いでしょう。二台以上コンピュータを携帯し、片方をゲージ代わりに使用したい場合などが使用するケースに当たります。
フリーダイビングモード
フリーダイビングモードは、スキューバダイビングと異なり、呼吸器具を使用せずに行う潜水活動、すなわちフリーダイビングやスキンダイビング向けに設計されています。このモードでは、水面での回復時間、潜水時間、水深、および潜水回数を詳細に追跡します。フリーダイビングモードは、潜水中のパフォーマンスを最大化し、水面休息を適切に管理することで、ダイバーの安全を確保するように特化しています。また、水深変化に敏感に反応し、即座にデータを更新することで、フリーダイバーにとって重要な情報を提供します。
保守性
ダイブコンピュータの「保守性」とは、減圧症を防ぐために減圧計算に適用される安全マージンのことです。保守性の高いダイブコンピュータは、ダイバーが吸収する窒素量を減らしたり、ゆっくりと窒素を排出させたりするために、より長い減圧停止を提案したり、潜水時間 を短くしたりします。最近発売されているダイブコンピュータにはこの保守性レベルを変更できるものもありますが、安全のためにはレベルを高く設定しておくことをおすすめします。SF(セーフティファクター)と表記され、レベルを0〜2に設定できるものが多いです。各ダイブコンピュータの取扱説明書にレベルの定義があるので、確認した上で設定をしましょう。
アラーム
決めた水深や潜水時間に達したらアラームが鳴るように設定できるダイブコンピュータもあります。深く潜りすぎたり長く潜りすぎたりしないよう、潜水計画に基づいて設定しておくとより安心でしょう。
ダイブコンピュータの見方
わかっているつもりでも意外と時間が空くと忘れてしまうのが器材の使い方。ダイブコンピュータも潜ってみたら見方がよくわからなくて焦ってしまうということもあります。事前に見方をおさらいしておきましょう。
ダイビング前のダイブコンピュータの見方
ダイビング前には、通常の時計と同じように現在時刻や日にち、気温、電池の残量などが表示されています。
プランモード
プランモードでは画面上で水深を切り替えると、その水深で何分留まっていられるかが表示されます。潜水計画を立てるのに使える機能です。事前にダイビングをしている場合は、体内の窒素量に応じて数値が変化するので、反復潜水を行う時にも役立ちます。
反復潜水時に任意の水面休息時間を設定して、プラン機能(水深・ダイブタイムを表示)を使えるダイブコンピュータもあり、ダイビング終了数時間後の反復潜水計画を立てる際に役立ちます。
ダイビング中のダイブコンピュータの見方
ダイブコンピュータは、水に入り、ある程度の水深を検知すると自動でダイブモードに切り替わります。初めて使う方はもちろん、久しぶりに潜る方も、ダイブモードの見方をおさらいしておきましょう。ダイブコンピュータの画面には、ダイビングに必要な多くの情報が表示されます。主要な情報には、現在の水深、潜水時間、減圧不要限界などが含まれます。
現在水深
今、自分のいる水深を把握できます。予定より深く潜りすぎていないか、急浮上してしまっていないかなど確認します。
潜水時間、ダイブタイム
今、自分がどのくらいの時間ダイビングをしているのかを確認できます。「DIVE.T」、「DIVE TIME」などと表示されていることが多いです。ダイブモードに切り替わった瞬間から時間のカウントは始まっています。元々予定していた計画通りの時間に潜れているか確認しましょう。
減圧不要限界
NDL(NO DECO LIMIT/NO DECO TIME)と表示されており、減圧不要限界=現在の水深にあと何分留まっていられるかを示しています。この表示が0になり、そのまま浮上してしまうと減圧症のリスクが高まります。0にならないように深度管理を行いましょう。
浮上速度
一分間に何mのスピードで浮上すべきかを示しています。表示される機種とそうでないものもありますが、この速度を超えると、アラームが鳴る機種がほとんどです。
体内窒素量
体内の窒素量がバーグラフで示されています。レベルが高くなるほど危険度が高まりますので、注意しましょう。
体内酸素量
体内に蓄積された酸素量、もしくは酸素の分圧が示されています。表示がない機種もあります。
ダイビング中に画面が変化したら?
ダイビング中に画面の表示が自動で変わることがあります。主に浮上速度が速い時や、安全停止の時、減圧停止が必要となってしまった時です。それぞれの画面も確認しておきましょう。
浮上速度
急激に浮上すると減圧症のリスクは高まります。そのため、ダイブコンピュータには浮上速度が一定の値を超えるとアラームが鳴ったり、画面の表示が変わったりする機能があります。この場合は、速度を落とせばすぐに画面は元に戻りますので、落ち着いて浮上速度をコントロールしましょう。
安全停止
体内に溶け込んだ窒素が安全に排出されて、減圧症のリスクを減らすことを目的に、特定の浅い深度で数分間停止することを安全停止といい、一般的には5mで3分間停止します。必須なプロセスではありませんが、減圧症のリスクを下げるために推奨されています。長時間や深く潜った時には、ダイブコンピュータが自動で安全停止をすべき水深でアラームが鳴ります。そこから3分間のカウントダウンが始まりますので、深度を維持しましょう。安全停止が終了すると、画面からカウントダウンの表示が消えます。
減圧停止
減圧不要限界を超え、NDLが0になってしまった場合、そのまま浮上するわけにはいきません。安全に窒素が排出されるように減圧停止、つまり指定された深度と水深で停止しながら浮上する必要があります。12mで3分、9mで1分、など細かく停止の指示が出ることもあります。減圧不要限界は超えないように潜るべきですが、万が一超えてしまった時も焦らないように、あらかじめどんな表示になるのか説明書などで確認しておくと良いでしょう。
ダイブコンピュータごとの表示の違い
ダイブコンピュータに表示される項目は、機種によってさまざまです。水温や平均水深など、わかると嬉しい情報が表示されているものもあります。自分のダイブコンピュータの表示を確認してからダイビングに臨むことが大事です。
ダイビング後のダイブコンピュータの見方
ダイビング後には画面の表示が変わります。
サーフェスモード
ダイビングが終了し、水面に上がると自動的にサーフェスモードになります。直前のダイビングの潜水時間、最大深度、水温などのデータや、水面休息時間、窒素量などが表示されます。
ログ機能
ダイブコンピュータのログ機能は、過去の潜水データを記録し、後で参照できるようにする機能です。これには潜水時間、最大深度、水温、潜水プロファイルなど、各ダイブの詳細な情報が含まれます。ログづけの時に使用したり、機種によってはログデータをPCやスマートフォンに転送し、専用のアプリケーションでより詳細な内容を確認したりすることができます。
ダイブコンピュータの選び方
ダイブコンピュータを選ぶときには、以下のような点を確認しておくと良いでしょう。
①視認性
文字の大きさ、表示情報の配置、カラー液晶の有無などが見やすさに大きく影響します。カラー液晶は情報の識別を容易にし、斜めから見ても読み取りやすいものが理想的です。水中では視界が陸上よりも暗くなるため、暗いところでもはっきり見えるか確認しましょう。また、安全停止時など浅くて明るい場所でも見づらくなるため、ある程度の光量のある場所で確認しておくのも良いでしょう。画面の構成が自分にとってわかりやすいかも一つのポイントです。
②操作性
操作ボタンの数が少ないと、たとえば一個だと長押しや短押しで多機能を操作するため、慣れが必要ですがシンプルです。しかし、操作手順が多くなる傾向があります。反対に、ボタンが4個あるモデルでは、各ボタンに明確な役割が割り当てられているため、操作が覚えやすくなります。
③電池タイプ
ダイブコンピュータにはボタン電池タイプと充電タイプがあります。電池交換タイプの場合、メーカーやショップで電池交換をしてもらいます。そこで耐圧検査もしてくれるので安心です。また、充電タイプだと専用の形が多く忘れてしまうと大変ですが、ボタン電池は市販の電池を購入すれば良いという利点もあります。
充電タイプにはソーラーとUSBタイプの二種類があります。ソーラーは光に当てておけば自動的に充電されるのが利点ですが、一度充電が切れてしまうとまた充電されるまで時間がかかるので注意が必要です。その点USBタイプはすぐに充電できますが、充電器を必ず持っていかなくてはならないので荷物が増えるのがデメリットです。
④ファッション性、タウンユース
ダイブコンピュータにはスマートウォッチタイプのものもあり、普段使いをしている方もたくさんいます。バンドを取り替えることができるものもあり、デザイン性も一つの決め手となるでしょう。
⑤アプリやPCとの連携
ダイブコンピュータのログをアプリに連携できるのかも確認すべき点です。ログを後から簡単に確認することができ、正確な情報を残すことができるので、アプリと連携しているものは人気の機種です。
⑥コスパ
ダイブコンピュータは決して安い買い物ではありませんが、値段はピンキリです。安いものでは1万円前後のものから高いものだと20万円近くするものまであります。最低限の機能があればいいのか、スマートウォッチのように多機能なものが良いのか、自分のニーズと予算に合わせて選びましょう。
その他の便利機能や最新テクノロジー
その他にもダイブコンピュータにはあると嬉しい機能を兼ね備えているものもあります。
残圧確認機能
シリンダーにトランスミッターを取り付け、ダイブコンピュータと繋ぐことで、リアルタイムで残圧を確認することができます。これにより、ダイバーはゲージを見ることなく、水中で残りの空気量を正確に把握できるため、より安全で快適なダイビングが可能になります。
カラーディスプレイとカスタマイズ可能な画面
カラーディスプレイは視認性を高めるだけでなく、情報の読み取りやすさも改善します。色分けされた警告やデータは、一目で状況を理解するのに役立ちます。また、カスタマイズ可能な画面はダイバーが重要と考える情報を優先表示できるため、個々のニーズに合わせたダイビングが可能になります。
GPS機能とデジタルコンパス
GPS機能を搭載したダイブコンピュータは、潜水地点の正確な位置情報を提供し、水面でのナビゲーションを助けます。これにより、エントリーとエキジットポイントを簡単に記録できます。デジタルコンパスは、従来のアナログコンパスよりも見やすく、精度が高いので頼りになります。これらの機能は特に、広範囲を探検するダイバーや、正確な位置情報が重要な状況でのダイビングに適しています。
総潜水本数の変更
ダイブコンピュータにはそのコンピュータで潜った本数が記録されていきます。新しいものを購入したり、買い替えしたりした場合、また1からになってしまうのが嫌な方は、総 潜水本数を任意に変更できるものもあるので、それを選ぶのが良いでしょう。
ダイブコンピュータのメンテナンス
電池交換
ダイブコンピュータは、定期的に電池交換するようにしましょう。充電式でないものは、1年に1回〜3年に1回程度の周期が目安です。充電タイプでも、充電がきちんとされなくなったら交換のタイミングです。安全なダイビングのためにも、メーカーの推奨する方法で、適切なタイミングで電池交換を行いましょう。
水洗いと保管方法
使用後は他の器材と同様に真水で洗浄し、塩分や汚れを除去することが大切です。精密機器なので、パソコンなどと同じように衝撃を避けるように注意し、落下などによるダメージを防ぎます。また、濡れた状態で他の器材と一緒に保管しないことも重要です。水分は電池寿命を縮めたり、色移りの原因になることがあります。たとえば、黒いホースから白いダイブコンピュータへの色移りや、暑い車内でのメッシュバッグ内での色移りが起こることがあります。ボタンの不具合や歪みも、不適切な洗浄や保管によって生じることがあります。適切なケアと保管で、ダイブコンピュータの性能と寿命を維持するようにしましょう。
ダイブコンピュータを使いこなして
楽しく安心安全なダイビングを
ダイブコンピュータは減圧症を予防し、安全に潜るために必要な器材。その器材の使い方や見方がわからなくて、ダイビング中の不安要素になってしまっては元も子もありません。正しい知識を身につけ、自分のお気に入りのダイブコンピュータをつければもっと楽しくなるはず。ぜひ「これだ!」というダイブコンピュータを見つけて、大事に使ってください。
スキューバダイビングのギアカンパニーとして多くの人に高品質、革新的開発商品を提供し続けているアクアラング社。社名にもなった「アクアラング」とは、81年以上も前、海洋探検家“ジャック・イヴ・クストー”と技師の“エミール・ガニヨン”が発明した世界初の自給式水中呼吸装置の特許名からとったもの。2人のあくなき探究心とフロンティア精神を受け継ぎ、ダイビングに技術革新をもたらし、ダイビングの楽しさを広めてどのようにライフスタイルに取り入れるかを目的に、現在も技術革新を追求している。