エア切れを起こす13の原因と予防法
長く潜りすぎ、深く潜りすぎ、水中で動きすぎなど、ダイバーが水中でエア切れを起こす際の原因はさまざま。エア切れを起こす13の代表的な原因とその予防法について考えます。
※本記事はDAN JAPANが発行する会報誌「Alert Diver」2018年10月号からの転載です。
水中でのエア切れは、ダイバーにとって気をつけるべきトラブルです。初歩的なミスと思いがちですが、エア切れによる緊急浮上はさまざまなリスクにつながる可能性があります。初心者もベテランダイバーも、エア切れの原因を知り、予防することが大切です。エア切れの13の原因を「知識不足」「手順上の問題」「器材の問題」という3つのカテゴリーに分類しました。それぞれのグループについて詳しく確認してみましょう。
エア切れの原因その1 知識不足
1.深すぎるダイビング
水深が深くなるとともに、エアの消費量は著しく増加します。また、深い水深でのダイビングは体内に窒素がより多く蓄積されるので減圧管理をしなくてはならなくなり、減圧停止を行うにはより一層のエアが必要となります。また、深い深度でエア切れになると、ダイバーは危険な緊急浮上をしなくてはならないというリスクに直面します。浅い水深に留まってダイビングを行えば、エアの消費量を抑えてより長く水中に潜っていることができ、さらに緊急事態が起きても比較的に簡単に浮上することができるので安心です。
2.長時間のダイビング
シリンダー内のエアは、潜っていると必ず消費されていきます。シリンダーの残圧がどのぐらいになったら引き返し、浮上を始めればいいかを事前に計画しておきましょう。ダイビング中は頻繁に残圧を確認し、予定した時間で引き返すようにしましょう。
3.運動量が多いダイビング
強い流れに逆らってのダイビングや浮力コントロールが不十分なダイビング、またはスピアフィッシングなどは運動量が多いので、エアの消費量に影響を与えます。さらに、深い水深での活動はエアの消費を約20倍まで加速させます。このような状況に慣れていない場合は、事前にトレーニングを受けるようにしてください。
4.圧力計の確認不足
エアの残量をつねにチェックするようにしてください。定期的に圧力計を確認することを心がけ、エアの残量についてバディとコミュニケーションを取るようにしましょう。
5.不安感を無視
不安感があると呼吸が乱れ、状況によっては活発に動いているときよりもエアを消費させることもあります。ダイビング中は通常の呼吸を心がけ、不安感を感じた場合はより一層エアの残量に注意するようにしてください。
エア切れの原因その2 手順上の問題
6.フル充填されていないシリンダーを使用
たとえ短時間のダイビングでも、シリンダーがフル充填されていない状態では潜らないでください。また、シリンダーの残圧が少ない状態で、ボートから落下した器材を拾いに行ったり、アンカー作業のために潜ったりすることは絶対にしないでください。
7.シリンダーのバルブが完全に開いていない
シリンダーのバルブは完全に開けるようにしましょう。バルブが完全に開いていないと、レギュレーターで呼吸するたびに圧力計の針が揺れます。ダイビング前にレギュレーターで呼吸し、圧力計の針が揺れないことを必ず確認してください。
8.頻繁な深度変更とBCDでの浮力調整
1本のダイビング中に、浅いところと深いところを行ったり来たりするダイビング(ヨーヨーダイビング:図1)をしたり、浮上/潜降する際にBCDを頻繁に使用すると、エアの残量はすぐに減少してしまいます。また、ヨーヨーダイビングは肺の圧外傷(※1)や減圧症のリスクも高めます。
※1息を止めて浮上することによって肺が過膨張し、肺胞から空気が漏れることで起こる体のトラブル
9.事前のチェック不足
ダイビング前にプレダイブチェックリストを使用しバディチェックを行うなど、事前チェックをしっかり行うことにより、忘れ物やケアレスミスを防ぎましょう。
エア切れの原因その3 器材の問題
10.レギュレーター
ダイバーの呼吸はレギュレーターを使用して行われるので、レギュレーターに砂やゴミが詰まっていたり、凍結やメンテナンス不足などが原因で不具合が生じると、呼吸が乱れ、エアの消費量に大きく影響してきます。
レギュレーターに不具合があると、エアを吸いにくくなる、バックアップ空気源(オクトパス)からのエア漏れ、フリーフロー、マウスピースが外れるなど、さまざまなトラブルに見舞われる可能性があります。さらに、不具合がなくても、バディによってレギュレーターを意図せず蹴られ口から外れるなど、思わぬトラブルも考えられます。
これらのトラブルを避けるためには、ダイビング後の水洗い、定期的なメンテナンス(オーバーホール)で摩擦している可能性があるパーツや使用期間を過ぎているパーツをすべて交換する、オクトパスが水底を引きずらないようにしっかり固定する、などを実施し快適に呼吸ができるように努めましょう。
また、レギュレーターがフリーフローをし始めたら、勢いよくパージボタンを押しましょう。ゴミが挟まっている場合は改善されるかもしれません。そして、フリーフローしているレギュレーターからでも呼吸ができることを覚えておいてください。ただし、エアは長く持たないのでフリーフローしたら浮上を始めましょう。
11.BCD
インフレーターからのエア漏れがある場合や、BCDが破れている場合は、エアが消費されるため残量が少なくなります。エア漏れを防ぐために、ダイビング後はBCDを水洗いして、インフレーターはオーバーホールに出してください。
12圧力計(残圧ゲージ)
トランスミッター(※2)を利用してシリンダーの残圧を表示するタイプのダイビングコンピュータでは、万が一コンピュータが故障したら残圧の表示に影響する可能性があります。ダイビングをしているにも関わらずシリンダーの残圧表示が減少しない場合は、何らかの問題が発生していると考えられるため、ただちにダイビングを打ち切り、速度に気をつけて浮上しましょう。
ダイビング前は圧力計に異常がないかの確認が必要です。圧力計に異常があれば、シリンダーの残圧がすべてなくても、ゼロを表示しないことがあります。このような場合のために、水面に浮上する際には必ず35bar以上のエアを残しておくようにしましょう。
※2残圧データを電波でダイビングコンピュータに送信する装置
13.Oリング(ホース類)
器材に使われているOリングは定期的に交換する必要があります。必要なOリングを持参しておき、劣化が疑われる場合には自分ができる範囲で交換してください。また、レギュレーターの分解は、認定されたメンテナンスのプロのみが実施できる作業なので、自分で行わないようにしてください。
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