実は人間と近い関係?謎多きホヤの実態に迫る

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ユニークな見た目で、独特の存在感を放つホヤ。食用のみならず、水中で鑑賞したり、撮影したりする対象としてダイバーには認知されているのではないだろうか。しかし、改めて考えてみると、ホヤっていったい何者なのだろう。知っていそうで知らないかもしれない、ホヤについてあらためて深堀ってみよう。

ホヤって何者?実はヒトの親戚だった!?

ホヤはホヤ綱に分類される海洋動物の総称だが、系統関係を見ると、実は私たち人間と近い間柄。脊椎動物と同じ脊索動物(せきさくどうぶつ)※に属しており、一生ないし一時期に尾部に脊索をもつ尾索動物(びさくどうぶつ)に分類される。尾索動物は現在、ホヤ綱、タリア綱、オタマボヤ綱の3つに大別されており、タリア類、オタマボヤ類はそれぞれ数十種程度だが、ホヤは世界で約3000種にも及ぶといわれている。

※脊索(せきさく)とは、脊索動物がもつ体を保持するための1本の柱状組織。脊椎動物の場合、発生途中で脊索は脊椎に置き換わる。

何を食べ、どこで生きている?ホヤの生態

多くのホヤはプランクトンや生物の死骸および排出物をろ過して食べて暮らしているという。常に海水に浸っている場所であれば浅海から深海まで、さまざまな場所を生息域にもつ。生活様式は、単体もしくは群体で生活するものに分かれ、単体ホヤは卵と精子が受精することで子孫を残す有性生殖を行い、群体ホヤは有性生殖と無性生殖(ある個体が単独で子孫を残す生殖様式)の両方を行うようだ。

赤ちゃんは動く!? ホヤの体の仕組み

ホヤを見たときに「どこが口なのだろう?」と疑問をもつダイバーも少なくないのでは。‟入水孔”が人間でいう口の部分にあたり、ここから海水と餌を取り込み、体内にあるエラでこして‟出水孔”から排出物を吐き出している。

一般的に入水孔は体の頂点近くに、出水孔は少し下の部分に位置するが、例外も珍しくないそうで、ひときわ大きな方が口と判断するのがいいのかもしれない。体は被嚢(ひのう)と呼ばれる外殻のようなものに覆われており、被嚢に含まれる食物繊維のセルロースの作用によって体の硬さや柔軟性を増すことで、外敵から身を守っているとされる。動物の中で唯一、食物繊維のセルロースをつくれることはホヤの大きな特徴といえるだろう。

また、ホヤは成長過程において形態を変える動物で、幼生時はオタマジャクシのような姿かたちで遊泳しており、成体は海中の岩などに定着して過ごすのが一般的。そのため、幼生は眼点と呼ばれる光の強弱を感じ取る視覚器官、体の姿勢を保持するための感覚器官、背側神経、脊索などの組織をもっている一方、成体は甲状腺と似た器官である内柱やエラ呼吸するための裂け目の鰓裂(さいれつ)、心臓、生殖器官、神経節、消化器官などをもつ。

食用のホヤは2種類

ホヤの酒蒸し

日本で食用になっているホヤは主にマボヤとアカホヤの2種。どちらもホヤ綱マボヤ目マボヤ科に属する。

出会ってみたい可愛くってユニークなホヤたち

ホヤの数だけホヤがいる。百ホヤ百様。見て撮って楽しい可愛くってユニークなホヤたちをいくつかご紹介。

我らのヒーロー「ウルトラマンホヤ」

言わずと知れた通称ウルトラマンホヤ。かのスーパーヒーロー「ウルトラマン」に似ているため命名されたと思いきや、どうやら別の説もあるらしい。“ウルトラマンを創った男”と言われる脚本家・金城哲夫氏は沖縄県出身。当時、アメリカ統治下にあった沖縄の人々が日本と分断され苦しむ状況を多くの人に知ってほしいともがく中、円谷プロで企画リーダーとして携わり「ウルトラマン」が生まれたようだ。金城哲夫氏が故郷・沖縄の海からインスピレーションを得て作品に活かした可能性もなきにしもあらず。ホヤが先かウルトラマンが先か…真相はいかに。

スナック菓子のキャラにそっくり!?「カールおじさんホヤ」

つぶらな瞳と大きな口にみえるのが かわいらしいカールおじさんホヤ。一見して分かると思うが、株式会社明治が販売していたスナック菓子のキャラクター・カールおじさんの姿に似ているため、この呼び名がついたと思われる。海で見かけたら「それにつけてもおやつはカール」のCMソングを口ずさみたくなっちゃうかも。

満面の笑みがトレードマーク「ワライボヤ」

とにかく明るいワライボヤ。大きな口に見える部分が入水口だとすると頭の部分が排出口だろうか。

気持ち悪いなんて言わないよね?「ガイコツパンダホヤ」

白黒色で丸いフォルムがまるでパンダのよう。胴に見える部分はガイコツの骨格を連想させることから、通称ガイコツパンダホヤの名前でダイバーに親しまれている。

覆面ホヤとは私のこと「デストロイヤーホヤ」

なんとも強そうな名前がついているホヤ。名前の由来はおそらく、ザ・デストロイヤーと呼ばれるプロレスラー選手が身に着けたマスクのデザインと酷似しているからだと思われる(気になる方は「デストロイヤー」で検索)。ウルトラマンホヤやワライボヤなど、可愛らしい見た目でダイバーに愛されるホヤは、ホヤ綱の中でもマメボヤ目に多いようだ。これらのホヤは透明であったり、色彩の豊かな被嚢を持つことが知られている。ちなみに、ホヤ綱の目レベルの分類体系は研究者によって2つの派閥に分かれており、1つはマボヤ目とマメボヤ目の2目に分ける2目体系、もう1つはマボヤ目、マメボヤ目、マンジュウボヤ目の3目体系だ。

また、お気付きの方もいるかもしれないが、ダイバーに人気のこれらのホヤはほとんど学名が不詳な状態。どの種にどの学名を当てはめるか科学的根拠に乏しい状態のまま通称で呼ばれているそう。

このように、まだまだ解明されていない謎も多いホヤたち。岩場などで静かに佇む彼らの様子を観察すれば、人知れずなんらかの行動をしているかも。ダイビング時にチェックしてみるのも面白いかもしれない。

記事監修
長谷川 尚弘さん
北海道大学理学院博士課程に在籍。専門分野はホヤ類の系統分類学、新種のホヤ類の発見や群体性ホヤ類の進化がテーマ。寿司屋や海鮮居酒屋に行くと友人たちから「ホヤ料理を食べるでしょ?笑」と必ず勧められ、「食べる!!」と即答してしまう。お酒によく合うため、ホヤを食べるのも好き。「ホヤ情報をX(旧:Twitter)で発信していますので、ぜひご覧ください!研究のためのホヤ採集に協力してくれる個人の方・ダイビングショップさんを大募集中です!」とのこと。

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PROFILE
アウトドアレジャー予約サイトの取材ライター出身。いままでに取材した日本全国のアウトドアカンパニーは130社ほど。ネットワークを活かした記事作りが得意!?かもしれない。一番好きなアクティビティはダイビング!とは言い切れないかもしれない。
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