「未知の深さに挑戦できることへの喜び」フリーダイバーHANAKO銅メダル受賞インタビュー
2021年7月13日(火)〜23日(金)にかけて行われた世界最高峰のフリーダイビング大会「Vertical Blue2021 (バーチカルブルー:以下、VB)」。先日お伝えしたように、世界記録が続出した今大会、我らが日本を代表する2人の人魚も大活躍を見せた。
▶︎世界最高峰のフリーダイビング大会総括 〜世界記録続出、進化した生中継〜
今回はモノフィン(※)で潜る競技CWTで103mを成功し、種目別3位の銅メダルに輝いたHANAKO選手へインタビューを行った。
※モノフィン:一枚の大きなフィンで、通常のフィンが両足それぞれに装着されるのに対し、モノフィンは両足に一枚装着される。力強いドルフィンキックが可能となり、通常のフィンに比べ高い推進力を得られるのが特徴。
ーー今大会での銅メダル獲得、おめでとうございます!大会での自分のダイブを振り返ってどうでしたか?
HANAKO
1ヶ月前から現地入りしてトレーニングを始めていましたが思うような自分のダイブができず、潜っても80mにも届かないような日が続いていました。
大会が始まる直前にやっと90m潜ることができ、初日CWT98mからスタートし、100m、103mと成功し、そこまではまだ先が見えるとても良いダイブが出来ていました。続く4回目の105mからは失敗(アーリーターン)を2回繰り返してしまいました。
集中力が切れてしまっていたのを感じたので、気持ちを切り替えようと、最終ダイブでは自分がもっと楽しめるように、自己ベストになる107mを申告。けれどそれも失敗し100m付近でのアーリーターン。耳抜きの技術的な未熟さを痛感しました。
最終的に103mの記録で3位入賞とりましたが、目標にも自己ベストにも届かなかったのは結果としてとても残念に思っています。
ーー昨年一年間は海外遠征などができない自粛の一年だったと思います。この期間をどのように過ごしてこのVBを目指してきましたか?
HANAKO
遠征には行ませんでしたが、湘南や伊豆の海では練習することができたので、モノフィンワークのコーチとともに地味なトレーニングを続けていました。バハマに入る2ヶ月前からは奄美大島でディープトレーニング環境を作り、多少の心配は残っていましたけど、身体もメンタルも、100m以上の深度への準備ができたと思います。
ーー今回のVB2021、大会全体の感想は?
HANAKO
自分にとっては、今までにないくらい日々たくさんの感情に向き合った大会でした。現地入りしてから練習もうまく進まず、今の自分が世界記録には到底届かないとわかって、モチベーションをどこに置いたら良いか分からなくなってしまいました。自分のダイブのあり方、楽しみ方を模索しながら、なんでここにいるんだろう?とブルーホールに行くことすら憂鬱だったときもありました。
練習中、そんな私を見兼ねたアレンカが来て、「記録や人のことなんか気にせずただこの場所を楽しんだらいい」と言って励ましてくれたことは、すごく気持ちの切り替えになりました。そしてアレンカがいつもめちゃめちゃ気持ち良さそうに世界記録を潜る姿を見て、世界記録はこうやって生まれるんだと、心底憧れました。
大会中の15日はさゆり(木下紗佑里選手)の命日、そして偉大なセーフティダイバーだったスティーブの命日23日には、選手もスタッフもみんなでブルーホールに集い、輪になって一緒に潜り、祈りを捧げました。この大会には、いつも言わずとも同じ想いを共有する家族みたいな仲間がたくさんいて、それぞれの想いを抱いて、みんなでその瞬間を悲しんだり楽しんだり挑戦したりしていた。そんな仲間たちがいてくれて、私は今回本当に支えられ、気持ちを前向きに変えていけました。うまく言えないけれど100mを潜ったさゆりの命日のことは忘れられません。
大会が終わる頃には、自分のダイブを楽しむこともできて、歴史的な記録が生まれる最高な瞬間をたくさん感じ、改めてここにこれたことへの感謝、まだまだ未知の深さに挑戦できることへの喜びでいっぱいになりました。
そしてダイブアイと愉快な中継のおかげで、競技を楽しんで観てくれていた方の応援の声は最大の励みでした。本当にありがとうございました。最高の大会に集うみなさんの熱いエネルギーを含めて、本当に毎回、このVerticalBlueに育てられてるなぁと思います。
ーー今後の目標は?
HANAKO
まずは、いま最大のストッパーになっている、耳抜きの技術的なトレーニングを基礎からやり直したいと思っています。もちろんひとつの目標は世界記録だけど、世界記録はこれからもどこまでも進化し続けていくもの。そこに向かう自分のモチベーションを見失わないように、進化の過程を一つひとつ楽しんで成長していくことを大事にしたいです!
成功も失敗も受け入れながら、成長するHANAKO選手。世界記録に向け、これからもますますの活躍を期待したい。
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