“誰も見たことがない”産卵を追えーーパラオで始まったミカヅキツバメウオ極秘リサーチ(第4回)

結局、産卵は撮れなかった──それでもパラオの海は圧倒的だった

最終日。最後の可能性をかけて、再びミカヅキツバメウオの群れを追う秋野氏と峯水氏。

しかし、現れた群れは産卵行動とは異なるものだった。静かに遠ざかっていく魚たち。ついに決定的瞬間を記録することはできなかった。

それでも海は、最後に予想外の光景を見せてくれる。安全停止中に突如現れたバショウカジキ。鳥山の下で繰り広げられる捕食の連鎖。ツムブリ、ソウダガツオ、グレーリーフシャーク、そしてカマストガリザメ——。

二人の挑戦の記録を最後までご覧いただこう。

4日目(最終日)

1本目

エントリー。クルーズのゲストは朝からブルーコーナーへ向かった。一方、私は予定通り、ミカヅキツバメウオの産卵前集群狙い。この日、秋野さんと二人で撮影に臨むことにした。これまでのデータをもとに、最適な時間帯に合わせてエントリー。潮は緩やかだが、透明度が悪く白濁している。潜降して間もなく、深場にいつもの150匹ほどの群れを確認する。しかし、その群れはこちらの存在に気づいた瞬間、体を翻してさらに深場へと消えていった。どうやら、これも昨日まで遭遇していた単なる群れで、産卵前集群ではなさそうだ。

しばらく周囲を見渡しながら、再び戻ってくることを期待して待ったが、状況に変化はない。やがてタイムリミットとなり、浮上を開始。中層をゆっくり流しながら、安全停止に入る。


産卵前集団を見られたのは初日だけ。あの光景は、もう現れないのか……。潜るたびに、静かな敗北感が増していく。

このまま何も起きない時間が続くかと思っていたその時、目の前に不意にバショウカジキが現れた。全長1.5mほどの小ぶりな個体。一瞬、鰭を広げてこちらに少し興味を示したが、ほどなくそのまま通り過ぎて行った。その余韻をかみしめつつ、もう一度戻って来るかもしれないと期待したが、その後は何もなくエキジット。海は、最後まで予想通りにはいかない。

安全停止で油断していた目の前に、突然現れたバショウカジキ。完全に不意を突かれた一瞬

水面休息時間中、近くに鳥山ができているのを確認。秋野さんがスノーケルで覗いてみる?というので、「行こう!」と即答。ボートでギリギリまで近づいて、音を立てずにそっとエントリー。潮目だ。水面下を覗いて真っ先に目に飛び込んできたのは60cmくらいのツムブリの群れ。

飛び込んだ瞬間目の前に広がるツムブリの群れ。その先にいる何かを求めて右往左往していた

彼らの目的はこの小さなイワシの集団だった。雲のように姿を変えながら過ぎ去っていく

彼らの目的はこの小さなイワシの集団だった。雲のように姿を変えながら過ぎ去っていく

下には小ぶりのグレーリーフシャークが群れをなして泳いでいる。更に先へ進むとソウダガツオが水面下を飛び跳ねているようで、子供のイワシの群れを下から上から追いかけているようだ。その光景に目を奪われていたとき、左脇すれすれをカマストガリザメがツムブリを引き連れながら、音もなく現れた。

鳥山の下にいた小さなグレーリーフシャークの群れ

カマストガリザメがツムブリを引き連れながら、音もなく現れた

カマストガリザメがツムブリを引き連れながら、音もなく現れた

2本目

エントリー。潮は変わらず緩やかだが、透明度は相変わらず芳しくない。それでも潜降していく途中、45m付近の深場に定着している群れを上から確認できた。今度は、不思議とすぐに逃げる様子はない。こちらの存在に少し慣れたのか、あるいは危害を与えないと認識したのか。可能な範囲で、静かに距離を詰めていく。しかし群れはゆっくりと沖へ、そしてさらに深場へと移動を始めた。距離は離れる一方でこれが限界だと感じた。連日の行動から判断しても、目の前の群れは産卵体制に入っていない。そう確信せざるを得なかった。これ以上、今できることはない。

遠ざかっていく群れを記録に収め、今回のミカヅキツバメウオの撮影は、ここで区切りをつけることにした。

ドロップオフの際45m付近の深場に定着している群れ

ドロップオフの際45m付近の深場に定着している群れ

ダイバーに遭遇した瞬間に沖の深場へと逃げていくミカヅキツバメウオの群れ。お腹の大きな個体はおらず、この群れは産卵行動では無いと判断した

ダイバーに遭遇した瞬間に沖の深場へと逃げていくミカヅキツバメウオの群れ。お腹の大きな個体はおらず、この群れは産卵行動では無いと判断した

結果として、決定的な瞬間を捉えることはできなかった。しかし今回の過程で、これまで見えていなかったいくつかの要素が明らかになったのも事実だ。このまま終わるつもりはない。いずれ必ず再挑戦し、その結果を記録として残したい。

4日間の挑戦を終えた二人は、あの日をどう振り返るのか。取材から約1カ月半後のアフタートーク——

第5回:アフタートークは8/21公開!

DayDream Palau 龍馬クルーズ

DayDreamパラオのスタッフたち

龍馬Iの外観(DayDream Palau提供)

龍馬Iのキャビンの一例。バス・トイレ付のデラックスルーム

日本人スタッフ常駐で安心して楽しめるパラオ屈指のダイビングショップ。自社で積極的にダイビングポイント開拓も行うパラオダイビングのパイオニア。もちろん、透明度抜群のブルーコーナーやジャーマンチャネルなど、世界中のダイバーが憧れる定番ポイントにもご案内。「龍馬クルーズ」では、快適なクルーズ船で移動しながらパラオの海を満喫することができる。食事や宿泊も船内完備で、仲間と語らいながら贅沢なダイビングライフを楽しめる。初めてのパラオの方にもリピーターにも、安心・快適・充実の海旅を提供してくれる。

DayDream Palau 公式サイト

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

登録
writer
PROFILE

1970年大阪府枚方市生まれ。西伊豆大瀬崎でダイビングガイドとして活躍した後、1997年にフリーの写真家として独立し、峯水写真事務所を設立。公益社団法人日本写真家協会会員。2001年から2012年まで、ダイビング誌にて海外ロケを中心とした 撮影に従事。プライベートでは浮遊生物を中心とした海洋生物の撮影に長年取り組んできた。数多くの児童向け書籍やTV番組などにも写真及び映像を提供する他、著書に「世界で一番美しいイカとタコの図鑑」エクスナレッジ、「日本クラゲ大図鑑」平凡社, 「ときめくクラゲ図鑑」山と渓谷社「Jewels in the night sea - 神秘のプランクトン」ナショナル ジオグラフィック社 など他多数。2015年にはBlack Water Dive®を商標登録し、さまざまな浮遊生物をフィールドで観察できるイベントBlack Water Dive®を国内外で展開。2016年 第5回 日経ナショナルジオグラフィック写真賞 グランプリ受賞。2017年6月、アメリカニューヨーク市のFoto Care Galleryにて自身初の個展「The Secret World of Plankton」を開催。BBC ,NBC, ABC, National Geographic などにこの作品が紹介された。2019年、日本写真協会賞の新人賞を受賞。TBSテレビ「クレイジージャーニー」「情熱大陸」などテレビにも多数出演。

https://www.ryo-minemizu.com/

  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • youtube
FOLLOW