世界最高峰のフリーダイビング大会総括 〜世界記録続出、進化した生中継〜
2021年7月23日、世界最高峰のフリーダイビング大会「Vertical Blue2021 (バーチカルブルー:以下、VB)」は最終日を迎えた。くしくも東京2020の開会式とまさに同日。日本では地上波で中継される開会式と時を同じくして、13時間の時差がある地球の裏側、カリブ海の小さな島からこの大会の千秋楽YouTube中継も始まった。
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大会は全9競技日、毎晩22時(現地時間では午前9時)から深夜までYouTubeでライブ映像が配信されていた。ファンの間では日に日に観戦も盛り上がり、密かに数々のグループチャットやインスタライブが立ち上がり、ともに応援しながら眠れない日々を過ごした方々も。そして終了後は「VBロス」になった者も少なくはないという。
引続く新型コロナの感染拡大、どことなく不安感と閉塞感が付きまとう夏の始まりに、別世界のような明るい日差しの中、輝く選手たちの姿は私たちに感動と希望を与えてくれた。この素晴らしい大会を振り返ってみたい。
男子総合
1位 Alexey Molchanov Russia
2位 William Trubridge New Zea Land
3位 Walid Boudhiaf Tunisia
女子総合
1位 Alessia Zecchini Italy
2位 Sahika Ercumen Turkey
3位 Sheena McNally Canada
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今年は全日程を終えて、世界記録が12個、国別記録が52個生み出された。トップ選手のみならず参加選手全体のレベル自体も非常に高く、今大会の全日程での平均申告深度は83.82mと前回の大会を大きく上回る別次元の大会となった。
世界記録が続出!女子もついに120mの大台に!
今回の大会は満を辞してブルーホールに集結した選手たちそれぞれが共鳴するように、連日素晴らしいパフォーマンスが繰り広げられた。初日から「WR(世界記録)」の文字がスタートリストに並んだ。そしてトップ・オブ・トップの選手たちにより、連日のように世界記録は更新され続けた。今大会での世界記録ダイバーを紹介する。
Alexey Molchanov
ロシアのAlexey MolchanovはFIM(ロープをタグって潜る)126m, CWTB(2枚フィンで潜る)118m。そしてもっとも深く潜れるモノフィン(※)種目のCWTでは131mを達成し3種目の世界記録を塗り替えた。その上で最終日は記録にこだわらずに、自らのブランドで新発売する小さなフィンで102mを潜るという遊び心あるパフォーマンスを見せる余裕。無邪気な笑顔とともに絶対王者の風格を見せつけた。
※モノフィン:一枚の大きなフィンで、通常のフィンが両足それぞれに装着されるのに対し、モノフィンは両足に一枚装着される。力強いドルフィンキックが可能となり、通常のフィンに比べ高い推進力を得られるのが特徴。
Alenka Artnik
スロベニアのAlenka Artnikは、女子では圧倒的な深度である122mを達成。数年前までは女子で100mを超えるダイバー自体がほとんどいなかった。彼女はそれをはるかに超える領域に静かに足を踏み入れ、まさに次の世界の扉を開いた。しかも潜り姿もエレガントそのもの。人格にも優れた彼女の世界記録は本当に誰もが祝福せずにはいられない。
Alessia Zecchini
イタリアのAlessia Zecchini もAlenkaと並ぶ女子のトップ選手。初日にはCWTで115mで一時世界記録をマークするも、その後はAlenkaに追随することが叶わず、この種目で自身のダイブは失敗。その代わり、大会3日目に、CNF(平泳ぎで潜る)では74mの世界記録を樹立した。これは数年前に亡くなった木下紗佑里選手への追悼の気持ちも込められた彼女にとって特別なダイブだったという。そして大会4日目にはFIMでも世界記録101mを達成。この種目でもついに女子が100m台に突入した。
Alice Modolo
フランスのAlice ModoloはCWTBで95mの世界記録を達成。歯科医の経歴を持つ彼女だが、同時に水中モデルとして世界的なミュージシャンのMVに出演経験もある。競技記録も素晴らしいが、その美しいフィンワークは完璧でため息ものなのでぜひご覧いただきたい。
こうした輝かしい世界記録以外にも、大会の中では全ての選手にドラマがあり、その成功も失敗も、ライブをとおして私たちはともに味わうことができた。
スポーツ中継としても進化!
11回目を迎えたこの大会、当初から選手のレベルも記録も大きく進化しているが、もう一つ、めざましく進化したことがその「見せ方」だ。水中での生中継が可能になっただけでなく、解説含めフリーダイビングに馴染みのない視聴者をも楽しませる工夫が随所に凝らされ、スポーツ中継としても洗練されたものになっている。
マイナースポーツとして仲間内で楽しむだけでなく、スポーツとして次の次元へ、という運営側の心意気が感じられる。
中継を見逃した、という方はぜひアーカイブをご覧いただきたい。
今回VB2021終了と同時に始まった東京2020。賛否両論がある中で開催されたが、しかし選手たちの姿に感動を与えられた人は多いだろう。特にこれまでマイナー競技と言われていた新たな種目も注目を浴び、スポーツの多様性、新たな魅力を発見させてくれることになった。フリーダイビングもいつかはもっと多くの人が知り、魅力を感じてもらえるのではないか、私たちにもそんな夢を抱かせてくれた。
ありがとうVB、また来年。
関連サイト&アカウント
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