【プレゼントあり】『神秘的で美しい海の生きもの図鑑』茂野氏&石野氏に インタビュー
石野昇太氏が語る――海の生きもののありのままを伝えられる図鑑にしたかった
自分の転換期に、素晴らしい機会を与えてくれた茂野君に感謝
オーシャナ編集部(以下、――)
この度は素晴らしい図鑑が出来上がりましたね。茂野さんにこの本を石野さんと共著で出されることになった経緯を伺ったのですが、茂野さんから依頼があったときはどんなお気持ちでしたか?
石野昇太氏(以下、石野氏)
僕がいつも撮影している浮遊系生物や繁殖などの生態行動など、アカデミックな部分を補填してほしいということなんだろうなと思いました。得意分野なので役に立てたらと思い、引き受けさせていただきました。僕は以前、八丈島のレグルスダイビングで働いていた時に図鑑の制作を手伝っていたので、作り方は何となくはわかっていました。でも大変だろうなと思いましたね(笑)。僕がちゃんとできるだろうかという不安もありました……。

3章「謎に満ちた浮遊生物」には、石野氏ならではの素晴らしい浮遊系の写真が満載だ
――お客様のガイドをされて、自身の撮影も行い、そんな中で本を制作するのは大変なことだと思います。
石野氏
なかなか仕事が進まなくて、編集担当の方にも申し訳ないなと思っていました。ただちょうどこの本の話をいただいた頃からの一年くらいは、自分の中でいろんなことが進んでいった時期だったんです。僕はダイビングサービスをやっていますが、自分のダイビングに使うエアの確保のために、充填所の建設をほぼDIYでやっていたんです。あとお客様のためにゲストハウスを準備したり、リクエストがあればナイトダイビングをガイドしたり、まずはダイビング業務が忙しかったです。
さらに沖縄の海から受けた恩恵を子どもたちに還元し、未来へ繋ぎたいという思いから一般社団法人エコロジカルチャイルドを立ち上げまして。それに加えて体にいいものを取り入れていきたい、子どもたちにも食べてもらいたいということから、野菜の栽培も始めました(笑)。海に潜る仕事をしているうちに、どんどん自然とともに生きたいという思いが強まってきたんです。
――自然とともに生きるというのは、とても共感します。そのような考えが浮かんだきっかけは何かあるんでしょうか?
石野氏
いろいろなことが影響して、そんな考えになったんだと思います。ダイビングガイドになって自然と触れ合っていくうちに、自然がどんどん悪くなっていることを目の当たりにするんですね。八丈島にいた頃「10年前はもっときれいだった」という言葉をよく聞きました。僕自身も、10年前と今では同じ伊豆でも見られる生物が変わってきてしまっている。見られなくなってしまった生物も多いですし。そんなことから、今、自分が何かしなくちゃいけないという使命感が出てきたんです。
――ダイビングガイド、水中写真家という側面に加えて、もう一つ違った使命が生まれたという感じですね。
石野氏
はい。ちょっと前までは僕も自分の写真をもっと多くの人に見ていただきたい、唯一無二な写真を撮りたい、珍しいものを見せたいといった思いで撮影してきました。しかし、自分が撮りたい、見せたいということが実る前に。別のステージに行ってしまったんですね(笑)。なので、茂野君に本を作る機会を与えてもらって、心置きなく次のステージに行けるなという気持ちがあります。
写真の選び方や見せ方に新たな発見や気づきがあった
――本の制作中には、どんなことを感じられましたか?
石野氏
編集者から「水族館っぽい、癒しになる本を作りたい」と伺っていました。しかし、リアルに海に潜っている僕たちからすると、水族館っぽくするのはどうなんだろうか? そんな思いもありながら、まずは数百枚の写真をお渡しして、そこからデザイナーの方が選んだものを並べて見せてもらったのですが「え⁉ こっちを選ぶんだ!」と驚きました(笑)。僕は図鑑の作り方を知っていたこともあって、これで大丈夫かな?と思うこともありました。
しかし、どんどんページができあがっていくうちに「女性の読者はこういうものを喜ぶんだ。一般の方にはこういう伝え方がわかりやすいのかもしれない」と、こちらも理解できるようになってきました。昔ながらの図鑑に縛られていた僕の頭が硬かったんですね(笑)。
――写真の見せ方にメリハリがあっていいなと思ったのですが、使う写真へのこだわりなどはありましたか?
石野氏
茂野君は写真家として、これを載せたい、あれを載せたいというのがあったと思うんです。でも僕はどちらかというと、よりわかりやすい写真を使いたいと思っていました。2章が個性的な形の生きものの紹介なんですが、細長い魚だったらその特徴がしっかりわかる写真を選ぶ。生態を紹介するのだったら、例えば産卵なら卵がよりはっきり写っている写真にするというように考えて選びました。また、メインになるかわいい生きものは、すべて茂野君の写真です。僕は図鑑っぽいサブで使用する写真を提供するということで、うまくサポートできたかなと思っています。あとがきの「おわりに」のページに書いたんですが、僕は「私が見た魚の街を一冊の本にまとめたい」と思っていたので、結果的にはその夢をかなえることができてよかったです。
5倍あった原稿を凝縮した「サンゴの神秘」のコラムへの思い入れ
――文章もすべてお二人で書かれたそうですが、特に石野さんがこだわりを持って書いたページはありますか?
石野氏
「サンゴの神秘」というコラムがあるんですが、これはものすごくこだわって書きましたね。サンゴには思い入れがあるので、もともとは掲載されている5倍くらいの長さの原稿だったんです。身を切る思いで、短くまとめました(笑)。

石野氏のこだわりが詰まった「サンゴの神秘」のコラム。ソフトコーラルからハードコーラルまで、さまざまなサンゴの説明がわかりやすく掲載されている
――ひと言にサンゴといっても、こんなに種類があると知らない方が多いですよね。
石野氏
あとこの写真(170ページ右端に掲載されているバンドル)、面白くないですか⁉
――うわー、これはすごいですね。初めて見ました!!

右端に掲載されているピンクの球体は、精子と卵子が詰まったバンドルの貴重な写真
――これはぜひ皆さんに見ていただきたい写真ですね。最後に、この本をどんな方に読んでいただきたいと思うか教えてください。あとオーシャナの読者にメッセージがあればお願いします。
石野氏
僕は子どもたちに未来を繋ぐというコンセプトで社団法人を運営していますので、子どもたちに読んでもらいたいと思っています。沖縄の子どもたちの中には、目の前の自然が豊かだということをわかっていない子も多いんです。近くにこんなきれいな海があって、その水中に神秘的な世界が広がっているみたいなことを知ってもらいたいですね。
また僕たち水中写真家はいろんな海に潜って撮影していますが、その素晴らしい世界がこの1冊にギュッと詰まっているので、楽しんでいただけたら嬉しいですよね。産卵があって稚魚が生まれて成魚になって……というような自然のサイクルをいつも僕は見ているので、一緒に感じてもらえたらいいなと思います。
『神秘的で美しい海の生きもの図鑑』の著者である茂野氏と石野氏のインタビュー、いかがだったろうか。ちなみに発売されて3カ月あまりで、すでに重版されているという。子どもから大人まで、ダイバーもノンダイバーも、すべての人が楽しめるこの図鑑をぜひ手に取って、海の豊かさ、素晴らしさを感じていただきたいと思う。
書籍情報『神秘的で美しい海の生きもの図鑑』
写真・著:茂野優太、石野昇太
監修者:井田 齊
発行所:株式会社ナツメ社
発売日:2025年7月3日
判型・ページ数:A5変型判・208ページ
定価:1,870円(税込)
詳しくはこちら ⇒ https://www.natsume.co.jp/np/isbn/9784816377358/
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【応募方法】
下記のメールアドレスに指定の件名で、メールをお送りください。
応募期限は、10月24日(金)まで。当選者には、メールにてご連絡いたします。
発送は11月上旬予定です。
※1週間以内に送り先等の情報についてご返信がない場合は、無効といたします
■応募先メールアドレス:
info@oceana.ne.jp
■件名:オーシャナプレゼント 「神秘的で美しい海の生きもの図鑑」
■本文に以下を記載:①当選時のご連絡先メールアドレス ②氏名 ③お住まいの都道府県名 ④茂野さん、石野さんへのメッセージ(※あればで結構です)
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