常陸丸潜水調査チーム、靖国神社にて水中写真を遺族会へ贈呈

2025年10月14日 靖国神社常陸丸殉難記念碑の前で集まった潜水調査チーム
左から木下、寺澤、伊左治、清水、誉田
――沈没から120年、海底で確認された歴史的船体の記録を奉納――
日露戦争中の1904年6月15日、玄界灘・沖ノ島付近で撃沈した輸送船「常陸丸」。1,000名を超える将兵や乗組員が犠牲となったこの事件から119年後の2023年、テレビ局の調査チームが水中ドローンにて船体を発見。
2025年7月、8月にはテクニカルダイバーによる潜水調査を実施し、水深80メートルの海底に眠る船体の撮影に成功しました。
7月17日の初潜水では、船体中央部の崩壊箇所や当時使用されていた陶磁器類を確認。8月19日には水中スクーターと高感度ビデオカメラを用い、船体全周および内部配管構造を含む映像記録を取得しました。これにより、沈没から120年を経て常陸丸の現状が初めて水中写真として明確に可視化されました。
この成果をもとに、2025年10月14日、常陸丸殉難記念碑が健立されている靖国神社で、撮影した水中写真パネルを遺族会に贈呈されました。
式典は靖国神社関係者・遺族会・船主の日本郵船担当者立ち会いのもと厳かに行われ、撮影記録は神社に奉納された。その後、参加者全員、靖国神社本殿にて玉串奉奠が行われました。
今回の贈呈には三つの目的があります。
第一に、沈没船の「現状記録」としての学術的価値。
第二に、遺族会への調査報告としての社会的責任。
第三に、戦没者慰霊と歴史継承の一助となる文化的意義です。
調査は、福岡のダイビングサービス「Diving Base JOINT」代表・寺澤淳二氏をリーダーに、「SDI TDI JAPAN」代表・加藤氏、テクニカルダイバー・大濱氏、水中写真家・清水淳氏が実施。
第2回調査では水中探検家・伊左治氏も参加し、支援ダイバー木下氏・誉田氏が潜降・減圧・安全管理を担当しました。
玄界灘特有の強い潮流と深度80メートルという高難度環境下での潜水は、国内でも稀な事例。今回得られた映像と静止画は、船体構造や沈降経過を検証する上で貴重な一次資料となり、今後の歴史研究や水中文化遺産保全に向けた基礎データとしての活用が期待されています。

常陸丸(初代)引用:wikipedia

水深80m水底で船体を確認するSDI TDI JAPAN加藤氏
10月15日。前日までチュークで沈船撮影でした。フライトが10時間も遅延して大変でした。羽田空港のホテルに正装一式を預けて出発だったので、急いで着替えてやや遅刻気味で会場へ駆けつけました。あまり訪れることのなかった靖国神社。鳥居をくぐって正殿に隣接した「参集殿」で式典が行われました。

集まった調査チームメンバーは寺澤氏、伊左治氏、木下氏、誉田氏、清水の5名に加え、遺族会から15名、靖国神社担当者、日本郵船担当者とかなり大勢の集まりとなりました。

調査チーム代表の寺澤から調査の概要説明があり、実際の撮影を担当した清水より常陸丸の現状をプロジェクターを使って説明させていただきました。いくつかの質問のやり取りの後、水中で撮影された写真をA3パネルに仕上げ遺族会代表の竹内さん、靖国神社の矢崎さん、日本郵船の清原さんに写真を手渡しました。
贈呈された写真↓

撮影:清水淳

撮影:伊左治氏

遺族会代表の竹内さん(左)

日本郵船の清原さん(左)

靖国神社の矢崎さん(左)

テレビ局のインタビューを受ける寺澤氏

テレビ局のインタビューを受ける清水
写真の贈呈が終わった後に靖国神社の本殿で玉串奉奠の供養がありました。初めて上がった靖国神社の本殿はとても静かで厳かな場所でした。正座をしての参拝は身も心も清らかになった気がしました。参拝の後、参加者全員で境内にある常陸丸殉難記念碑前で手を合わせて集合写真を撮り解散しました。
常陸丸潜水調査はこれからも調査チーム代表の寺澤氏を中心に行われる予定です。
テクニカルダイビングに興味がある方、調査チームの参加に興味がある方は一度寺澤氏にコンタクトをお取りください。今シーズンの調査予定はもうありませんが天候が落ち着いてくる初夏から再スタートする予定です。
